

建築の現場で「直尺 150mm」を選ぶとき、まず押さえたいのが“その直尺がどの規格の精度をうたっているか”です。JIS 1級の金属製直尺(例:B7516の扱い)では、基準温度を20℃として、500mm以下の長さの許容差が±0.15mmという目安が示されています。短い150mmでも、材料や加工状態、使う環境次第でこの範囲に収まらないことがあり、現場では「道具の誤差+当て方の誤差」を足し算で考える癖が安全です。許容差は“保証できるズレの範囲”であり、“常にその精度で測れる”という意味ではありません。
もう一つ、見落としがちな重要点は「温度20℃を基準とする」という条件です。冬の外部足場や夏の直射日光下では、直尺そのものも測定物も温度が偏りやすく、わずかな伸縮が“測ったつもりの寸法”に乗ります。150mmは短いので影響が小さいと思われがちですが、精度が要るのはたとえば金物の穴位置、サッシ周りの納まり、建具金物の取り付け位置など“ズレを許せない短距離”です。ここで「暖まった直尺で冷えた金物を測って、室内でケガいて、また外で合わせる」といった往復をすると、ズレの説明がつかない状態になりやすいです。
参考:JIS1級の許容差・温度20℃基準・真直度など(規格の見方)
ヤマヨ製品の手引-直尺JIS1級許容差(許容差、真直度、直角度、温度20℃基準)
直尺 150mmは、現場袋に常備されやすい“手元用スケール”として便利ですが、材質と目盛の作りで寿命と読みやすさが変わります。金属製直尺の材料としては、SUS420J2のようなステンレス系が規格例として挙げられており、硬さ(HV400以上)などの条件も示されています。ここで効くのは「曲げ癖が付きにくい」「角が丸まりにくい」「目盛面が荒れにくい」といった、精度以前の“状態維持”です。つまり、150mmという短い道具ほど雑に扱われやすいので、材質の差が誤差として表面化しやすいわけです。
また、目盛の刻み方も重要です。印刷目盛は早い段階で擦れて読みにくくなりやすい一方、エッチングなどの加工目盛は比較的消えにくい傾向があります(商品ごとに方式は異なるため、仕様の確認が確実です)。建築では粉塵・水・石膏・接着剤などに晒され、拭き取り時に研磨のような状態になることもあります。結果として「0点側の目盛が薄い」「5mm付近だけ読みにくい」などの偏った劣化が起き、いつも同じ場所で測る人ほど、同じ場所でミスが固定化します。
直尺はノギスほど複雑ではありませんが、“読み方の癖”で誤差が出る点は同じです。測定工具の基本として、斜めから目盛を見ると値が違って見える「視差」が起きるため、目盛は正面(真上)から読むのが原則です。さらに、測る対象に対して道具を押し付け過ぎると、当て面が滑ったり、直尺が微妙に反ったりして、読んだ数値が安定しません。直尺 150mmは軽く薄い製品も多く、押し付けた力で“自分が直尺を曲げている”ことに気づきにくい点が落とし穴です。
現場で再現性を上げるための手順を、あえて固定するとミスが減ります。
・直尺の0点を「欠けていない側」に統一する(両端を使い回さない)
・目盛は「真上から」読む(斜め読み禁止を自分ルール化)
・当てる力は“ずれない最小”で止め、押し付けない
・測定物の角が潰れている場合は、端からではなく健全な基準面を探して当てる
・同じ寸法は2回測り、数値が一致しないなら「道具ではなく当て方」を疑う
参考:視差や押し付けによる誤差の注意点(測定姿勢・読み取りの基本)
モノタロウ 測定工具の基礎講座(視差、押し付けで誤差、正面から読む)
直尺 150mmは“呼び寸法150mm”でも、道具の全長はそれより長く作られるのが一般的です。JIS1級の寸法例として、呼び寸法150mmに対して全長175mm、幅15mm、厚さ0.5mmといった値が示されています。建築現場でこの数字が効くのは、狭い取り合いで差し込めるか、ポケットや腰袋で曲がらずに運べるか、そして当て面が確保できるかです。全長が長いほど当てやすい反面、納まりの隙間には入りにくく、短いほど取り回しは良いが当て方が不安定になりやすい、というトレードオフが出ます。
使いどころの整理もしておくと、150mm直尺の価値が上がります。
・金物の小寸法(穴間、端距離)確認
・ボード・合板の端部からの控え寸法の確認
・造作の欠き込みの深さ・幅の概算(ただし精度が要るならノギスへ)
・墨の“短距離の見切り”合わせ(長距離はスケールへ)
・コーキングや見切り材の逃げ寸法のその場確認
ここで重要なのは、直尺 150mmは“万能の測定器”ではなく、“短距離を素早く確認する基準具”として強い点です。もし0.5mm単位の議論になる工程なら、直尺で頑張るより、ノギスや専用ゲージに切り替えた方が結果的に早く、説明責任も取りやすいです(後で「その直尺、精度保証は?」と問われた時に詰みやすい)。
検索上位では「おすすめ品」や「ステンレスが良い」といった話が多い一方、建築従事者が差をつけやすいのが“現場での簡易校正(チェック)”です。JISの考え方では、長さの許容差だけでなく、目盛側面の真直度や、目盛端面の直角度(端面の長さ10mmにつき0.035mm以下など)といった項目も示されています。つまり、直尺は「目盛が正しい」だけでは足りず、「当てる面が直角で、真っすぐである」ことが、結果として読み値の正しさに効きます。現場で角を当てて使うほど、端面の欠けや摩耗が“ゼロ点のズレ”になります。
そこで、意外と効く運用テクニックを紹介します(高価な機材がなくてもできる範囲)。
・新品時に「基準にする側の端面」をマーキングして固定(左右を使い分ける)
・真っすぐな基準材(工場加工の金物など)に当て、光が漏れるなら反りや欠けを疑う
・同じ寸法を“表裏を替えて”測り、差が出るなら当て面か直尺自体の異常を疑う
・端面をコンクリ床に落とした直後は、測定用から外し、墨出し用に格下げする
・測定対象が柔らかい(木材、断熱材)場合は、押し当てで沈むので“軽く当てて読む”ルールにする
直尺 150mmは安価な消耗品として扱われがちですが、こうした“格下げ運用”をすると、品質事故の芽を早めに摘めます。逆に言えば、現場で起きる寸法トラブルの多くは、道具の価格ではなく、道具の状態管理と当て方の一貫性で発生します。150mmは携帯性が高い分、落下・踏みつけ・溶剤付着のリスクも高いので、測定工具として扱うなら「いつ壊れたか分からない状態」を作らないことが最優先です。