鋳鉄管と鉄管の違いと選び方

鋳鉄管と鉄管の違いと選び方

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鋳鉄管と鉄管の違い

鋳鉄管と鉄管の主な違い
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材質・炭素量

鉄管は炭素量が0.02~0.25%と少なく、鋳鉄管は炭素量2.0%以上で黒鉛が分布する材質構造

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強度・特性

鉄管は引張強度が高く柔軟性があり、鋳鉄管は圧縮強度が高く耐食性に優れる

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用途・施工

鉄管は高温高圧配管に適し、鋳鉄管は水道本管・排水管など埋設配管に使用される

鋳鉄管と鉄管の最も大きな違いは、材質の炭素含有量にあります。JIS規格では、炭素量が2.0%を超えるものを「鋳鉄」、2.0%までを含むものを「鋼(鉄)」と定義しています。この炭素量の違いが、配管の性質や用途に大きな影響を与えます。
参考)https://www.jdpa.gr.jp/qa/basic/search/search_2.html

鉄管(鋼管)は炭素量が少なく、引張強度と延性に優れています。これに対して鋳鉄管は炭素量が多く、内部に黒鉛が分布しているため、電気抵抗が高く腐食に強いという特徴があります。また、鉄管は炭素量が少ないため加工性に優れ、溶接や曲げ加工が容易ですが、鋳鉄管は硬く脆いため加工には向きません。
参考)https://www.sankovalve.co.jp/piping_journal/icn-trivia/%E9%8B%B3%E9%89%84%E7%AE%A1%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%83%BB%E6%B1%82%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%80%A7%E8%83%BD%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84/

材質の違いは製造方法にも現れます。鉄管は鋼板を曲げて溶接する方法や継目なし製造法で作られるのに対し、鋳鉄管は溶けた鉄を型に流し込む鋳造法で製造されます。この製造方法の違いが、それぞれの配管の特性を決定づけています。
参考)https://www.jianzhipipefitting.com/ja/2024/03/04/ductile-iron-pipe-vs-cast-iron-pipe/

鋳鉄管の材質と種類の特徴

 

鋳鉄管には大きく分けて「普通鋳鉄管」と「ダクタイル鋳鉄管」の2種類が存在します。普通鋳鉄管の基地組織はフェライト組織で、黒鉛の形が大きく長い片状であるのに対し、高級鋳鉄管はパーライト組織で黒鉛が小さく短い特徴があります。さらに現代の主流であるダクタイル鋳鉄管は、黒鉛を球状化させることで強度と延性を大幅に改良した材質です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/12478acedcb54e311525fdb86b7092b5796f95dc

ダクタイル鋳鉄管が主流になった理由は、従来の普通鋳鉄管が持っていた「衝撃に弱い」という弱点を克服したためです。球状黒鉛の採用により、引張強度が大幅に向上し、伸縮性や可とう性を持つようになりました。この改良により、地震の多い日本において高い耐震性能を発揮できるようになりました。
参考)https://www.sankovalve.co.jp/piping_journal/icn-trivia/%EF%BC%889-7%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E6%B8%88%E3%81%BF%EF%BC%89%E3%83%80%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB%E9%8B%B3%E9%89%84%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%A8%E5%BE%8C%E7%B6%99%E7%AE%A1/

材質による分類以外にも、接合形式によってGX型、NS型、K型、T型など多様な種類があり、それぞれ耐震性や施工性に違いがあります。また、管の厚みによって1種管から5種管まで分類され、使用条件や土圧、水圧に応じて適切な管圧を選定する必要があります。
参考)https://suido-sizai.com/%E6%B0%B4%E9%81%93%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%EF%BC%88%E9%8B%B3%E9%89%84%E7%AE%A1%EF%BC%89/

鋳鉄管と鉄管の強度と耐久性比較

強度面では、鉄管(鋼管)は引張強度に優れ、柔軟性が高いため曲げやねじれに強い特性があります。一方、鋳鉄管は圧縮強度が高く、重量物の荷重に耐える能力に優れています。ただし、鋳鉄管は引張応力に弱く、衝撃を受けると亀裂が入りやすいという弱点があります。
参考)https://www.shandongrunhaistainlesssteel.com/ja/blog/what-is-the-difference-between-iron-pipe-and-ductile-iron-pipe

耐久性においては、ダクタイル鋳鉄管は優れた耐食性により50年以上の長寿命が期待できます。特に水道管として使用される場合、外面塗装の改良により100年以上の耐久性も見込まれています。これに対して鉄管は、適切な防食処理を施さないと錆びやすく、特に湿気の多い環境では腐食が進行しやすい傾向があります。
参考)https://steelprogroup.com/ja/galvanized-steel/comparison/vs-cast-iron/

興味深いことに、鋳鉄管は金属材料の中では電気抵抗が高いため、電食の影響を受けにくいという特性があります。この特性は埋設配管として使用される際に大きな利点となり、地中での長期使用に適しています。一方で鉄管は電食の影響を受けやすいため、埋設時には特別な防食対策が必要です。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8B%B3%E9%89%84%E7%AE%A1

鋳鉄管の用途と施工方法

鋳鉄管は主に上水道の導水管・送水管・配水管、下水道の管きょや処理場配管、工業用水道、農業用水など、埋設される大口径配管に広く使用されています。日本の水道本管において最も多く使われている管材であり、道路下に埋設されているため通常は目にする機会がありません。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB%E9%8B%B3%E9%89%84%E7%AE%A1

施工方法には大きく分けて「プッシュオンタイプ」と「メカニカルタイプ」の2種類があります。プッシュオンタイプは挿し口を受け口に挿入する差し込み式で、作業を迅速に行えます。メカニカルタイプは受け口と押輪をボルトで締め付ける方式で、より高い接合強度が得られます。​
特殊な用途として、橋梁添架配管では露出配管として使用されることがあり、この場合は耐候性向上のため特殊な塗装が必要です。また、管路の維持管理においては、経年劣化した鋳鉄管を塩ビ管ポリエチレン管に更新する工事が行われており、MD継手やストラブカップリング継手などの専用継手を使用した改修方法が確立されています。
参考)https://www.sankovalve.co.jp/piping_journal/icn-trivia/%E6%8E%92%E6%B0%B4%E7%94%A8%E3%83%80%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB%E9%8B%B3%E9%89%84%E7%AE%A1%E3%81%AE%E6%94%B9%E4%BF%AE%E5%B7%A5%E4%BA%8B%E3%81%AB%E5%9B%B0%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%EF%BC%81/

鋳鉄管選定時の不動産業界での注意点

不動産従事者として知っておくべき重要なポイントは、建物の配管材質が建物の資産価値と維持管理コストに直結することです。昭和50年代(1975年代)頃までに建設された物件では、排水用に普通鋳鉄管が使用されていることが多く、これらは現在では製造終了しているため、改修時には代替品を使用する必要があります。​
配管の耐用年数は材質によって大きく異なります。ダクタイル鋳鉄管は強度と耐久性が高く長寿命ですが、重量が重く施工コストが高いというデメリットがあります。また、防食面に損傷を受けると腐食しやすいため、定期的な点検が重要です。物件の購入や管理を検討する際は、配管の材質と設置年数を確認し、将来的な更新費用を見積もることが賢明です。
参考)https://www.ougiyakouji.co.jp/news/1882/

興味深い実務上の知見として、鋳鉄管には溝切り加工を行う場合があり、その際は管厚が厚い1種管である必要があります。管厚の薄い2種管や3種管では、加工後の残肉が薄くなり離脱防止性能を損なう可能性があります。このような技術的な詳細は、改修工事の際に施工業者とのコミュニケーションで重要となります。また、鋳鉄管の改修工事では事前調査が極めて重要で、現場写真があると品番特定がスムーズに進みます。​
<参考リンク>
普通鋳鉄と高級鋳鉄の組織の違いについて詳しく解説 - 日本ダクタイル鉄管協会
鋳鉄管の歴史と水道管としての性能要件 - 三興バルブ継手
ダクタイル鋳鉄管の接合形式と管圧の選定方法 - 水道資材
排水用鋳鉄管の改修工事における具体的な施工方法 - 三興バルブ継手