中和滴定曲線pH求め方と当量点計算方法を解説

中和滴定曲線pH求め方と当量点計算方法を解説

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中和滴定曲線pH求め方

この記事のポイント
📊
滴定曲線の基本

中和反応の進行に伴うpH変化をグラフ化し、当量点を視覚的に把握できます

🧪
pH計算の実践

酸・塩基の価数と濃度から、各段階でのpH値を正確に算出する方法を習得

⚗️
実務への応用

建築現場のコンクリートpH管理や工業廃水処理での実用的な活用法

中和滴定曲線とpH変化の基礎

 

中和滴定曲線とは、酸または塩基の溶液に滴定試薬を少しずつ加えていく過程でのpH変化を縦軸にpH、横軸に滴定量をとってグラフ化したものです。この曲線は中和反応の進行状況を視覚的に表現し、当量点(中和点)を正確に特定するための重要なツールとなります。滴定曲線の形状は、使用する酸と塩基の強弱によって大きく異なり、強酸と強塩基の組み合わせでは中和点付近でpHが急激に変化するpHジャンプが観察されます。
参考)https://www1.doshisha.ac.jp/~bukka/lecture/general/resume_g/GC-13-11.pdf

中和滴定における基本的な計算式は「酸の価数×酸のモル濃度×酸の体積=塩基の価数×塩基のモル濃度×塩基の体積」で表されます。この式を用いることで、未知濃度の酸または塩基の濃度を求めることができます。例えば、1価の硝酸0.2mol/Lを50mLと1価の水酸化ナトリウム水溶液20mLが中和する場合、0.2×50×1=C×20×1からNaOHの濃度は0.5mol/Lと計算できます。
参考)https://linky-juku.com/acid-base-titration/

建築現場では、コンクリートの中性化評価やアルカリ性廃水の中和処理において滴定法が活用されています。特にコンクリート構造物では、フェノールフタレイン溶液を用いた中和滴定により表層の炭酸化(中性化)の進行度を測定し、構造物の耐久性を評価します。このように中和滴定は理論だけでなく、実際の建設現場における品質管理にも欠かせない技術となっています。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00064/1985/1985-02-0108.pdf

中和滴定曲線における当量点とpH計算

当量点とは、酸由来のH⁺イオンと塩基由来のOH⁻イオンの物質量が完全に等しくなる点を指します。この点でのpH値は、必ずしも7になるわけではなく、反応に用いる酸と塩基の種類によって異なります。強酸と強塩基の中和では当量点のpHが7付近になりますが、弱酸と強塩基の中和では塩基性側(pH>7)に、強酸と弱塩基の中和では酸性側(pH<7)にシフトします。​
当量点でのpH計算には、生成する塩の性質を考慮する必要があります。例えば酢酸(弱酸)と水酸化ナトリウム(強塩基)の中和では、生成する酢酸ナトリウム加水分解して塩基性を示すため、当量点のpHは7より大きくなります。このpH値はKw=Ka×Kbの関係式とICE表を用いて厳密に計算でき、酢酸イオンの塩基解離定数Kbから導出されます。
参考)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13208681098
​youtube​
半当量点は当量点に達するまでの滴定量の半分の点で、弱酸を強塩基で滴定する場合にはpH=pKaの関係が成り立ちます。この性質を利用することで、滴定実験から酸解離定数Kaを求めることが可能です。例えばリン酸の二段階滴定では、第一半当量点でpH=pKa1、第二半当量点でpH=pKa2となり、各段階の酸解離定数を実験的に決定できます。
参考)https://www.jove.com/ja/science-education/v/11414/calculating-ph-for-titration-solutions-weak-acidstrong-base

強酸強塩基と弱酸弱塩基の滴定曲線の違い

強酸と強塩基の滴定では、当量点前後でpHが急激に変化する明確なpHジャンプが観察されます。例えば硫酸と水酸化ナトリウムの中和では、当量点はpH=7付近となり、この点の前後数mLの滴定量でpHが3~11程度まで急上昇します。このような明確な変化により、フェノールフタレイン(変色域pH8.0~9.9)とメチルオレンジ(変色域pH3.0~4.5)のどちらの指示薬でも正確に中和点を検出できます。
参考)https://www.ps.toyaku.ac.jp/~yanagida/bunsekiPDFs/4th1013.pdf

弱酸と強塩基の滴定では、滴定初期のpHが強酸の場合より高く(pH2以上)、当量点のpHは塩基性側にシフトします。酢酸を水酸化ナトリウムで滴定する場合、当量点でのpHは8~9程度となるため、指示薬にはフェノールフタレインが適しています。一方で強酸と弱塩基の組み合わせでは当量点が酸性側となるため、メチルオレンジを使用します。
参考)https://benesse.jp/kyouiku/teikitest/kou/science/basic_chemistry/k00549.html

弱酸と弱塩基の組み合わせでは、pHジャンプがほとんど観察されず、滴定曲線が全体的に緩やかになります。この場合、フェノールフタレインやメチルオレンジといった一般的な指示薬では変色域に曲線の変化部分が含まれてしまい、正確な当量点の検出が困難です。したがって弱酸と弱塩基の滴定は実用的な分析手法としては適さず、電位差滴定法などの器械分析が必要となります。
参考)https://www.kem.kyoto/genri/titration/

中和滴定における緩衝液とpH制御の実践

緩衝液は弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合溶液で、少量の強酸や強塩基を加えてもpHがほとんど変化しない特性を持ちます。この緩衝作用は滴定曲線上でも観察でき、弱酸に強塩基を滴定する際には半当量点付近で曲線の傾きが最も小さくなります。この領域では弱酸とその共役塩基が同程度の濃度で存在し、添加される酸や塩基を効率的に中和するため、pHの変動が抑制されます。
参考)https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9508/9508_yomoyama.pdf
​youtube​
緩衝液のpH計算にはヘンダーソン・ハッセルバルヒ式(pH=pKa+log([塩基]/[酸]))が用いられます。例えばトリス緩衝液では、トリスとトリスイオンの濃度比が等しいときpH=pKaとなり、最も強い緩衝作用を示します。実用的な緩衝能力を示すpH範囲は、その化合物のpKa±1、望ましくはpKa±0.5の範囲とされています。​
建築現場におけるコンクリート廃水の中和処理では、滴定曲線の知識が実務に直接応用されます。アルカリ性廃水を中和する際、目標pH値に到達するために必要な中和剤の量は、実験室での滴定試験により事前に求められます。タクミナ社の研究によれば、実際の廃水では計算値よりも過剰の中和剤が必要となる場合があるため、滴定曲線を作成して緩衝容量を確認することが重要です。工業用途では自動滴定装置が導入され、化学工業での酸・塩基濃度測定や石油製品の酸価・塩基価測定に広く活用されています。
参考)https://www.tacmina.co.jp/library/basics/938

中和滴定曲線を用いた実務的pH測定技術

電位差滴定法は、pH電極を用いて滴定中のpH変化を連続的に測定する手法で、指示薬による目視判定よりも正確な当量点の決定が可能です。この方法では溶液内の水素イオン濃度(活量)を作用電極と参照電極の起電力差から測定し、滴定曲線を自動的に作成します。建築現場のコンクリート試験では、かつて滴定法による塩化物量測定に手間がかかっていましたが、電位差測定技術の発展により現場での迅速測定が可能になりました。​
複数の酸を含む溶液の滴定では、各酸の解離定数の違いにより複数の当量点が現れます。例えば二価酸のリン酸をNaOHで滴定すると、電離可能な水素ごとに2つの異なる当量点が観察されます。このような多価酸の滴定曲線から各段階の酸解離定数を求めることができ、メトラー・トレド社のExcellence滴定装置などの最新機器では複数当量点の自動検出が可能です。
参考)https://www.jove.com/ja/science-education/v/11416/titrating-polyprotic-acid-with-strong-base-titration-curve

石油化学や製薬業界では非水性酸塩基滴定が重要な分析手法となっています。油脂の酸価や塩基価の測定では水系での滴定が困難なため、非水溶媒を用いた滴定が標準となります。この技術は建築分野にも応用され、コンクリート表層改質材(浸透性コンクリート保護材)の性能評価や、電気めっき浴の酸混合物の濃度管理にも活用されています。現代の自動滴定装置はJIS・ISO・ASTMなどの国際規格に対応し、食品・飲料から環境分析まで幅広い産業分野で品質管理の精度向上に貢献しています。
参考)https://www.pwri.go.jp/jpn/results/db/doken_kankoubutu/doken_shiryou/files/doken_shiryou_4186_00.pdf


高校化学 中和滴定