毒物劇物取締法 別表第2と建築業従事者の取扱い基準

毒物劇物取締法 別表第2と建築業従事者の取扱い基準

記事内に広告を含む場合があります。

毒物劇物取締法 別表第2の定義と建築業での該当物質

毒物劇物取締法 別表第2 重要ポイント
📋
劇物の法的定義

別表第2に掲げる93種類の物質であって、医薬品及び医薬部外品以外のものを劇物と定義

🏗️
建築業での該当物質

硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニア、硝酸など建築現場で頻繁に使用される薬剤が含まれる

⚠️
取扱責任者の必要性

業務上取扱者として届出と専任の取扱責任者設置が法律で義務付けられる場合がある

毒物劇物取締法 別表第2に記載される劇物の全体像

毒物劇物取締法における「劇物」とは、同法別表第2に掲げる物であって、医薬品及び医薬部外品以外のものを指します。別表第2には、アクリルニトリル、アクロレイン、アニリン、アンモニアなど93種類の劇物が列挙されており、第94号では「前各号に掲げる物のほか、前各号に掲げる物を含有する製剤その他の劇性を有する物であって政令で定めるもの」として、政令による追加指定も可能となっています。
参考)http://www.nihs.go.jp/law/dokugeki/beppyo2.pdf

劇物は毒物に準じた毒性を有する物質として分類され、別表第1に掲げる「毒物」よりは毒性が低いものの、人体に重大な危害を及ぼす可能性があるため、厳格な規制の対象となっています。建築業においても、コンクリート処理剤や洗浄剤、金属処理剤などとして劇物が使用されるケースが多く、適切な管理が求められます。
参考)毒物及び劇物取締法施行令別表第二/千葉県

建築業で使用される別表第2該当物質の具体例

建築業の現場で頻繁に使用される劇物として、以下のような物質が別表第2に該当します。
参考)https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/2023dokutebiki

酸性物質

  • 硫酸(第89号):コンクリート洗浄、金属の酸洗い処理に使用される強酸性液体で、10パーセント超の製剤が劇物に該当
  • 塩化水素・塩酸(第8号):金属の洗浄や表面処理に用いられ、10パーセント超の製剤が規制対象
  • 硝酸(第51号):金属加工や表面処理に使用され、10パーセント超の製剤が劇物として規制

アルカリ性物質

  • 水酸化ナトリウム(第54号):コンクリート洗浄剤や塗料剥離剤として広く使用され、5パーセント超の製剤が該当
  • 水酸化カリウム(第53号):洗浄剤や表面処理剤として使用され、5パーセント超の製剤が規制対象
  • アンモニア(第4号):洗浄剤や冷媒として使用され、10パーセント超の液体製剤が劇物

有機溶剤・その他

  • メタノール(第83号):塗料の溶剤や燃料として使用
  • トルエンキシレン:シンナーや洗浄用途で使用される有機溶剤
  • ホルムアルデヒド(第81号):接着剤防腐剤として使用され、1パーセント超の液体製剤が該当

これらの物質は建築現場における金属加工、コンクリート処理、洗浄作業、塗装作業などで日常的に使用されるため、建築業従事者は劇物としての適切な取扱いを理解する必要があります。​
国立医薬品食品衛生研究所「毒物劇物の適切な保管管理について」
毒物劇物の保管・運搬時の基準について詳細な解説があり、容器や保管設備の管理方法を確認できます。
参考)https://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/hokan/hokan.html

毒物劇物取締法 別表第2物質の業務上取扱者としての届出義務

建築業において劇物を業務上取り扱う場合、事業の種類によっては「毒物劇物業務上取扱者」として届出が必要になります。業務上取扱者は、毒物劇物を製造・販売するのではなく、原材料として使用または運送する事業者を指します。
参考)大阪市:毒物劇物業務上取扱者に係る各種届出等について (…href="https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000161468.html" target="_blank">https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000161468.htmlgt;…

届出が必要な業種(届出要業務上取扱者)
毒物及び劇物取締法第22条第1項および施行令第41条、第42条、別表第2に基づき、以下の業種で特定の毒物劇物を取り扱う場合は届出が必要です。
参考)https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000161/161468/tebikigyoumujyou2025.pdf

  • 電気めっき業:無機シアン化合物を使用する場合
  • 金属熱処理業:シアン化カリウムなどを使用する場合
  • 毒物劇物運送業:施行令別表第2に掲げる毒物劇物を一定量以上積載して運送する場合

届出要業務上取扱者に該当する場合、業務上これらの毒物劇物を取り扱うようになった日から30日以内に都道府県知事への届出が必要であり、専任の毒物劇物取扱責任者を設置しなければなりません。
参考)毒物劇物業務上取扱者の届出の手続き 堺市

届出不要だが管理が必要な業種
法第22条第5項に基づき、試験研究機関、学校、その他毒物劇物を業務上取り扱う者(上記届出要業種を除く)も業務上取扱者に該当しますが、届出は不要です。ただし、この場合でも適切な保管管理と取扱いは法律で求められます。
参考)「毒物及び劇物取締法」毒物及び劇物の取り扱いについて|お問合…

別表第2劇物の保管管理と容器表示の基準

劇物を適切に保管・管理するためには、毒物劇物取締法および関連規則に定める基準を遵守する必要があります。​
保管設備の要件

  • 他のものと明確に区別した毒劇物専用の保管場所を設けること
  • 保管場所は堅固で施錠できる構造とすること
  • 鍵の管理者を選任し、不在時の代理人も選任すること
  • 鍵の管理簿を備えること(平成30年7月厚生労働省通達)
  • 保管されている劇物の在庫量を定期的に点検し、使用量を把握すること

容器及び被包への表示義務
劇物の容器及び被包には、以下の表示が義務付けられています。
参考)https://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/gaiyou/kisei/zyoubun/pdf/12.pdf

表示項目 表示内容 表示方法
医薬用外表示 「医薬用外」の文字 明確に記載
劇物表示 「劇物」の文字 白地に赤文字で記載
名称・成分 劇物の名称、成分及び含量 販売時に必要

劇物を別容器に小分けして保存する場合や、調製したもの(調製後も劇物に該当するもの)を保管する場合も、同様に表示が必要です。また、保管場所にも「医薬用外劇物」と表示する義務があります。​
取扱い上の注意事項

  • 盗難・紛失防止の措置を講じること
  • 施設外への飛散、漏れ、流れ出し、しみ出し等を防止すること
  • 飲食物用の容器を使用しないこと(誤飲防止)
  • 劇物の性質に応じた適正な温度を保つよう取り扱うこと
  • 容器や保管設備に腐食・亀裂・破損等がないか定期的に確認すること

厚生労働省「毒物及び劇物の貯蔵に関する構造・設備等基準」
貯蔵タンクや保管施設の構造基準、漏えい対策などの詳細が記載されており、大量保管する場合の参考になります。
参考)エラー

別表第2劇物の運搬時における容器基準と安全対策

劇物を運搬する際には、毒物及び劇物取締法および関連規則に定める運搬容器の基準を遵守する必要があります。
参考)https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/webkousyuukai/dokugeki/f813e7c7d5f12e36724f25b60ccb1b66.pdf

運搬容器の一般規定
運搬容器は以下の要件を満たす必要があります。
参考)エラー

  • 運搬時における温度変化、湿度変化又は圧力変化によって破損するおそれがなく、収納された劇物が漏れるおそれがないものであること
  • 外部環境による劣化又は内容物による化学的変化により運搬の安全性を損なわないものであること
  • 液体の劇物は、容器の内容積の98パーセント以下の収納率で、かつ、55℃で漏れないように十分な空間容積を確保すること

包装等級による分類
劇物は危険性の程度に応じて包装等級Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに区分され、それぞれの等級に応じた容器基準が適用されます。包装等級Ⅰが最も危険性が高く、包装等級Ⅲが比較的低い劇物に適用されます。​
運搬時の禁止事項

  • 一の外装容器には、原則として他の毒物若しくは劇物又は毒物若しくは劇物以外のものを収納してはならない
  • ガラス製内装容器を収納した組合せ容器は、適当な不活性の緩衝材を詰めて内装容器を保護しなければならない
  • 運搬中に融解するおそれのある固体の劇物は、特定の容器に収納してはならない

業務上取扱者(運送業)の届出基準
毒物劇物運送業として、施行令別表第2に掲げる毒物劇物を一定量以上積載して運送する場合、業務上取扱者としての届出が必要です。施行令別表第2には、黄燐、四アルキル鉛、無機シアン化合物、弗化水素、アンモニア、塩化水素、塩素、過酸化水素、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、硫酸など23種類の毒物劇物が列挙されており、これらを大量に運送する事業者は特に注意が必要です。​
東京都健康安全研究センター「毒物・劇物運搬の手引」
運搬中の事故防止と適切な運搬方法について、具体的な事例とともに解説されています。​

建築業における毒物劇物取扱責任者の資格要件と役割

毒物劇物を業務上取り扱う場合、専任の毒物劇物取扱責任者を設置することが法律で義務付けられる場合があります。建築業においても、届出要業務上取扱者に該当する場合や、大量の劇物を継続的に取り扱う場合には、取扱責任者の設置が必要です。
参考)毒物劇物取扱責任者の資格とは

毒物劇物取扱責任者の資格
毒物及び劇物取締法第8条に定める毒物劇物取扱責任者の資格は以下のとおりです。
参考)毒物劇物取扱者とは

資格区分 取得方法 証明方法
薬剤師 国家資格取得 薬剤師免許証
応用化学学課修了者 厚生労働省令で定める学校で応用化学に関する学課を修了 卒業証明書や単位取得証明書
試験合格者 各都道府県で実施する毒物劇物取扱者試験に合格 合格証書

ただし、18歳未満の者、心身の障害により業務を適正に行うことができない者、麻薬・覚せい剤の中毒者、毒物若しくは劇物又は薬事に関する罪を犯し罰金以上の刑に処せられて3年を経過していない者は、取扱責任者となることができません。​
都道府県別の試験実施
毒物劇物取扱者試験は全国一斉に行われるものではなく、都道府県ごとに年1回実施されます。試験実施時期、試験方法などは各都道府県によって異なるため、受験を希望する場合は各都道府県の保健所または公式ウェブサイトで確認する必要があります。
参考)毒物劇物取扱責任者とは|毒物劇物取扱責任者を取得するメリット…

取扱責任者の業務内容
毒物劇物取扱責任者は、毒物及び劇物の輸入、製造や販売を行い、管理・監督するのに必要な専任資格です。青酸カリや硫酸等の毒性・劇性の強い物質による保健衛生上の危害の防止に当たることが主な役割であり、適切な保管管理、容器表示の確認、在庫管理、従業員への教育指導などを担当します。​
建築業において劇物を安全に取り扱うためには、法令遵守はもちろんのこと、現場作業員への教育、定期的な保管設備の点検、緊急時対応マニュアルの整備など、総合的な安全管理体制を構築することが重要です。​