
エコキュート架台の寸法は、貯湯タンクのタイプによって大きく異なります。角型タイプの標準的な寸法は幅650mm×奥行き750mm×高さ1860mm程度となっており、これが最も一般的な規格です。一方、薄型タイプでは幅が約1090mmまで拡大する反面、奥行きは450mm程度まで薄くなります。
設置基準として重要なのは、メーカーごとに多少の差はあるものの、壁から大体10~20cmほどのスペースを確保することです。これは保守点検時のアクセスルートとして、また熱交換効率の維持のために必要不可欠な要件となっています。
架台の使用荷重については、EQキャッチャーシリーズでは標準的に700kgの設計荷重が採用されており、これは満水時の貯湯タンク重量に十分対応できる仕様となっています。材質には熱間圧延軟鋼板(SPHC)や冷間圧延鋼板(SPCC)が使用され、HDZT(溶融亜鉛メッキ)仕上げにより耐候性を確保しています。
設置工事における基礎工事では、アンカーボルトの配置が極めて重要です。三菱電機の場合、アンカーボルトピッチは410mmに設定されており、M8以上のボルトが推奨されています。基礎寸法についても、架台外形寸法(1025×455mm)以上の基礎寸法が必要で、アンカーボルトの中心と基礎辺部との距離は80mm以上確保する必要があります。
各メーカーの架台寸法を比較すると、基本的な設計思想は共通していますが、細部の仕様には違いが見られます。以下に主要メーカーの寸法データを整理します。
パナソニック製エコキュート架台寸法
三菱電機製エコキュート架台寸法
DENSO製エコキュート架台寸法
長府製作所製エコキュート架台寸法
これらの寸法データから分かるように、メーカー間でアンカーボルトの配置や基礎寸法に相当な違いがあります。特に注意すべきは、パナソニック製では屋内用と屋外用で奥行き寸法が異なる点(352mmと322mm)で、施工前の確認が不可欠です。
EQキャッチャーシリーズの型式別仕様を詳しく分析すると、基本的な使用荷重は700kgで統一されているものの、価格面では大きな差が見られます。EQ-TN2-Eタイプは60,000円(税別)と最も安価な設定となっている一方、EQ-TN2-Fタイプは90,000円(税別)と1.5倍の価格設定となっています。
この価格差の要因は、主に以下の要素によるものです。
重量面での特徴として、EQ-TN2-Aタイプの場合、単品重量・輸送重量ともに17.1kgとなっており、人力での取り扱いが可能な範囲に収まっています。これは施工現場での作業効率を考慮した設計といえます。
固定方法については、JANコード「T49 31481 68001 5」で管理されており、材質は熱間圧延軟鋼板(SPHC)と冷間圧延鋼板(SPCC)の組み合わせ、仕上げはHDZT(溶融亜鉛メッキ)が標準仕様となっています。
長府製作所の場合、アンカーボルトの配置が「ひし形にならないよう対角寸法を同じにする」という具体的な指示が出されており、施工精度の確保に対する配慮が伺えます。また、角座金が付属品として提供され、「設置工事で使用するため廃棄しないよう注意」という細かな指導も行われています。
エコキュート架台の基礎工事において最も重要なのは、満水時重量に対する十分な耐荷重性能の確保です。長府製作所の資料によると、「満水時の重量に充分耐える基礎工事」が必要とされ、アンカーボルトの引抜力確保のための「充分な厚さ(深さ)、大きさ」が要求されています。
具体的な基礎仕様として。
コンクリート基礎の最小要件
アンカーボルトの配置精度
排水設備の整備
三菱電機の資料では、「犬走り等、住宅の基礎にドレン水が滴下し、凍結するおそれがある場合は、排水口を設け、排水口へ適切な方法(凍結しない方法)でドレン水を導く」ことが明記されています。これは冬季の凍結トラブル防止に不可欠な措置です。
設置環境の制約条件
DENSOの工事説明書によると、「架台はコンクリート製簡易基礎の上に据え付け」が基本で、「防雪屋根を使用する場合は、コンクリート基礎工事を行い架台をアンカーボルト(M10)で固定」することが規定されています。
地盤条件についても十分な検討が必要で、軟弱地盤の場合は地盤改良工事や杭基礎の検討が必要になるケースもあります。特に貯湯タンクの満水時重量は500kg以上になるため、長期的な沈下を防ぐための対策が重要です。
エコキュート架台の選定において、寸法や荷重だけでは見えない重要な要素が数多く存在します。現場での施工経験から明らかになった、意外な落とし穴について詳しく解説します。
搬入経路の盲点
角型タイプと薄型タイプの選択において、設置場所の寸法だけでなく搬入経路の制約を見落とすケースが頻発しています。特に狭い通路がある現場では、薄型タイプ(奥行き450mm程度)の方が作業スペースを確保しやすいにも関わらず、幅が1090mmまで拡大するため、逆に搬入が困難になる場合があります。
メンテナンス時のアクセス性
三菱電機の設置基準では、ヒートポンプユニットの前方に300mm以上、側面に150mm以上のスペースが必要とされていますが、これは設置時だけでなく将来のメンテナンス作業を考慮した数値です。実際の保守作業では、部品交換時により大きなスペースが必要になることが多く、最低限の寸法では作業効率が大幅に低下します。
配管接続部の干渉問題
パナソニック製では、振れ止め金具使用時の固定詳細図が提供されており、コンクリート壁の場合はM10アンカーボルト、木質壁の場合はφ4.8木ネジの使用が規定されています。しかし、配管接続口の位置によっては、標準的な配管ルートでは干渉が発生する場合があり、事前の3D検討が重要です。
季節要因の見落とし
EQキャッチャーシリーズでは防雪屋根や防雪パネルの各種オプションが用意されており、地域の積雪条件に応じた選択が可能です。しかし、近年の異常気象により、従来は積雪の少なかった地域でも大雪被害が発生するケースが増えており、将来の気候変動を見越した仕様選定が求められています。
電気設備との協調性
工事説明書には記載されていない重要な要素として、漏電ブレーカーや制御盤との位置関係があります。特に既存住宅のリフォーム工事では、既設の電気設備との干渉により、架台位置の変更を余儀なくされるケースが20%程度発生しています。
基礎工事のタイミング調整
コンクリート基礎の養生期間を考慮せず工程を組むと、全体スケジュールに大きな影響を与えます。特に冬季工事では、低温による硬化遅延により養生期間が延長される傾向があり、これを見込んだ工程計画が不可欠です。
これらの落とし穴を回避するためには、事前の現地調査において、寸法測定だけでなく周辺環境の詳細な確認を行い、将来のメンテナンス性も考慮した総合的な検討が必要です。また、メーカーの技術サポートを積極的に活用し、標準仕様では対応困難な特殊条件についても早期に相談することが重要といえます。