

フェリシアン化カリウム(ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム)は、SDS上のGHS分類で「眼刺激(区分2B)」や「特定標的臓器毒性(単回ばく露)区分3(気道刺激性)」が示されており、建設現場では“目と呼吸器”を最優先で守る設計が合理的です。
一方で「可燃性固体:区分に該当しない」「不燃性」とされ、火災危険そのものよりも、粉じんの吸入・飛散と、反応による有害ガス(後述)を警戒すべき物質です。
またSDSには、直射日光(紫外線)で分解しうること、光による配位子の一部解離で微量のシアン化物イオンが生じ得ることが明記されています。
この“光でゆっくり性状が変わる”タイプは、ラベルだけ見て安心しがちなので、保管場所(屋外仮置き・透明容器・窓際)まで含めて管理対象にするのが安全側です。
厚生労働省の「ラベルでアクション」では、①ラベル表示、②SDS交付、③事業場でのリスクアセスメント実施の3点が義務付けの柱として整理され、現場は“ラベル→SDS→RA→対策→教育”の流れで回すことが推奨されています。
特に実務で効くのは「ラベルに絵表示があったらSDSを確認」「SDSで把握した危険有害性に応じリスクアセスメント」「結果と対策を労働者に周知・教育」という手順を、そのままKY・作業手順書・朝礼に接続することです。
フェリシアン化カリウムは、SDS上で保護具(防じんマスク、手袋、保護眼鏡)や換気、洗眼器・安全シャワーの設置が推奨されているため、RAの結論を“装備と設備”に落とし込みやすい部類です。
建設現場の化学物質管理(ラベル→SDS→リスクアセスメントの基本フロー)を押さえる。
厚生労働省「ラベルでアクション」
SDSでは、粉じん・ミスト等の吸入回避、取扱い後の手洗い、屋外または換気の良い場所での使用が示され、局所排気または全体換気の実施が推奨されています。
保護具は、呼吸器(防じんマスク)、手(ニトリルや塩ビ等の保護手袋)、眼(側板付き眼鏡・ゴーグル)、身体(長袖作業衣)と具体例まで書かれているため、調達・教育・着用監査の基準に流用できます。
建設作業で起きがちな“袋を開ける・小分けする・攪拌する・掃除する”工程は粉じん源になりやすいので、SDSの「粉じん堆積を防止」「水噴霧で飛散抑制」などの表現を、現場の具体動作(湿式清掃、HEPA掃除機、開封場所固定)に置き換えると事故が減ります。
応急措置では、眼に入った場合「水で15分以上注意深く洗う」「コンタクトレンズを容易に外せる場合は外す」などが明記されているため、洗眼設備の位置・水量・連絡手順まで“秒で動ける形”にしておくべきです。
SDSで重要なのは、強酸と反応してシアン化物を生成し中毒の危険をもたらすこと、加熱分解でシアン化水素などの有毒ガスを生じ得ること、混触危険物(強酸化剤、強酸、アンモニア、亜硝酸ナトリウム等)が列挙されている点です。
このため、建設現場では「酸洗い剤」「スケール除去剤」「強酸性洗浄剤」「アンモニア系洗浄剤」など“別用途の薬剤”と同じ保管棚・同じ回収容器に入れない運用が、コストの割に効果が大きい対策になります。
漏出時は「掃き集めて密閉容器回収」「飛散時は水で湿らせてから回収」「河川・下水・土壌へ排出しない」などが示され、乾式で舞い上げる掃除は避けるべきだと読み取れます。
廃棄は、許可業者への委託とマニフェスト交付が明記されており、現場判断での放流・埋設は避ける前提になっています。
意外な落とし穴として、SDSの適用法令欄で水質汚濁防止法の「シアン化合物」の排水基準(CNとして1mg/L)に触れているため、“製品がPRTR非該当でも排水は別問題”として扱う整理が有効です。
フェリシアン化カリウムはSDSの参考用途として、工業用途(熱処理・めっき等)や、青写真用途(青地白線法の現像液)に触れられており、建設業界の歴史的な文脈(図面・現像)と接点がある化学品です。
さらにSDSでは、直射日光(紫外線)で分解しうること、光で微量のシアン化物イオンが生じ得ることが明記されているため、現場の仮置き(屋外・透明容器・日当たり)や、車載保管(直射+高温)を避けるだけでリスクを一段下げられます。
“毒性が低い/非危険物”という印象だけで雑に扱うと、光・酸・熱という建設現場に普通にある条件で、性状変化や有害ガスリスクが立ち上がる可能性がある点が、この物質の管理の肝です。
青写真用途に触れるのは懐古ではなく、SDSを読む癖を付けるためのフックにもなり、古い現場資料や保管品の正体確認(赤血塩・フェリシアンなど別名)にも役立ちます。