ハイテン クロモリ 違いと強度 建築業で知るべき特性

ハイテン クロモリ 違いと強度 建築業で知るべき特性

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ハイテン クロモリ 違い

この記事で分かること
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成分の違い

ハイテンは高炭素鋼にニッケル、マンガンなどを添加した高張力鋼。クロモリはクロムとモリブデンを配合した合金鋼。

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強度と特性

クロモリは引張強度980MPa程度でハイテンの860MPaより高強度。靭性と耐久性にも差がある。

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建築用途

ハイテンは軽量化が求められる構造材に。クロモリは高負荷がかかる機械部品や重要構造部材に使用。

ハイテン材の基本的な成分と特徴

ハイテン材とは「High Tensile Strength Steel」の略称で、高張力鋼板と呼ばれる素材です。一般的な鋼板よりも引張強度が高く、340MPa~790MPaのものがハイテン材に分類され、980MPa以上のものは超高張力鋼板(スーパーハイテン)と呼ばれています。
参考)https://metal-stamping-costdown.com/column/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%B3%E6%9D%90%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E5%8A%A0%E5%B7%A5%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%AA%B2%E9%A1%8C/

成分としては、高炭素鋼にニッケル、マンガン、チタンなどを混ぜて強化した合金鋼で、合金の配合割合を変えることで一般的な鋼板の3倍以上の強度を実現できます。引張強度を高くすることが主な要求事項であり、炭素鋼の5倍程度の強度のものが実用化されています。
参考)https://www.kabuku.io/case/plan/metals-basic_03/

建築業界では、河川・橋梁等の鋼構造物や船舶、建築物などの材料として多く使用されており、耐食性が高いため防食処理の工程を削減できるメリットもあります。ハイテン材は市場供給量が年々増えており、低コストで大量生産に向いているという特徴があります。
参考)https://www.proterial.com/blog/st/st010.html

クロモリ鋼の成分構成と機械的性質

クロモリとは「クロームモリブデン鋼」の略称で、スチール(普通鋼)にクロム(Cr)とモリブデン(Mo)を配合した合金です。別名SCMとも呼ばれ、機械の歯車などに使われる高級な鉄として取引されています。
参考)https://favck.com/4800.html

クロムの添加により耐摩耗性と耐食性が増し、モリブデンの添加により硬さ、強さ、粘りを与える特性があります。引張強度は980MPa程度で、ハイテンの860MPaよりも高い強度を持っています。特に靭性(粘り強さ)において優れており、振動吸収能力が高く衝撃を受けても壊れにくいという特徴があります。
参考)http://blog.cc-sanwa.com/?p=27427

建築構造材としてなくてはならない素材として幅広く活用されており、焼き入れ焼き戻しをすることで高い強度と靭性を得られるため、強度や耐摩耗性を必要とする機械部品などに多く採用されています。クロモリ鋼は中程度の耐腐食性を備えていますが、より過酷な環境では追加のコーティングや処理が施されることが多いです。
参考)https://essengoldparts.com/ja/blog/chromoly-tubing/

ハイテン クロモリ 強度比較と引張強度の違い

両素材の強度を数値で比較すると、引張強度ではクロモリが980MPaに対し、ハイテンは860MPa程度となっており、クロモリの方が約14%高い強度を持っています。ただし、ハイテン材の中でも超高張力鋼板(980MPa以上)になると、クロモリ以上の引張強度を持つものもあります。​
弾性係数については、ハイテンが203GPa、クロモリが206GPaとほぼ同等です。しかし実際の使用においては、ハイテンとクロモリでは1000MPaを超えるなど引っ張り強度に優れたハイテンでも、弾性率は一般鋼材とほとんど変わらないという特性があります。
参考)https://www.atuen.com/mml/entry47.html

最も重要な違いは靭性(粘り強さ)にあります。クロモリは引張強度が高いだけでなく、靭性も高く、衝撃を受けても壊れにくい特性を持っています。一方、ハイテンはクロモリと比べるとしなりがあまりなく、ゴツゴツとした固い性質になります。建築業において高い機械的負荷がかかる部品には、この靭性の違いが重要な選定基準となります。
参考)https://journal.buychari.com/chromoly-road-bike/

項目 ハイテン クロモリ
引張強度 340~790MPa(一般)
980MPa以上(超ハイテン)
980MPa程度
弾性係数 203GPa 206GPa
密度 7800kg/m³
靭性 普通 高い(粘り強い)
価格帯 比較的安価 高価

ハイテン クロモリ 溶接性と加工性の実務上の差

溶接性において、ハイテン材は従来の鋼材に比べ炭素含有量が低いため、溶接性に優れているという特徴があります。炭素含有量が低く抑えられているため、溶接時であっても熱の影響による硬化が少なく、安定した溶接が可能です。また、熱を加えても硬化が少ないため劣化しにくく、耐久年限が長いという利点もあります。​
クロモリも適切な技術を用いれば容易に溶接できますが、溶接後に脆化を防ぎ強度を維持するために熱処理を施す必要があります。ガストーチ(酸素-アセチレン、または酸素-プロパン)によるロウ付けが一般的で、母材を溶かさずに接合する方法が用いられます。
参考)https://www.funq.jp/bicycle-club/article/495767/

加工性については、ハイテン材は穴あけ、曲げ、切削などの機械加工性に優れ、冷間でも加工可能です。しかし、その強度の高さから素材に力を加えた際に壊れないまで連続的に変形し、元の形状を保とうとする性質(スプリングバック)があるため、形状によってはプレス成形中に割れやクラックなどが生じる可能性がある難成形材料でもあります。​
クロモリは焼きなましや焼き入れなどの熱処理を施すことで、加工性を維持しながら特定の用途に合わせて硬度、強度、靭性を向上させることができます。ただし、ハイテンに比べて加工性は劣り、手間がかかる傾向があります。建築現場においては、この加工の難易度が工期やコストに影響を与える重要な要素となります。
参考)https://www.ishiyan-kin.com/entry/chromium-molybdenum-steel

建築業におけるハイテン クロモリ 用途と選定基準

建築業界におけるハイテン材の主な用途は、軽量化が求められる構造材です。強度と耐久性が最優先されるインフラ設備や大規模施設で、安全な通行を支えるために不可欠なグレーチングとして使用されています。また、建築物の外壁、屋根、構造材など、耐震性や耐久性を高める用途にも適しています。
参考)https://www.grating-navi.com/material/highten.html

特に塩害や雨風にさらされる外壁に最適で、耐食性が高いという特性を活かして河川・橋梁等の鋼構造物や船舶、その他建築物などの材料にも多く使用されています。ハイテンボルト(高力ボルト)は、耐久性や耐食性に優れているため、建築物・橋の骨組みやクレーンの構造部材など、建造物にとって非常に重要な箇所の接合に使われています。
参考)https://www.ikeda-stamping.com/column/890

クロモリは建築構造材としてなくてはならない素材として幅広く活用されており、高い機械的負荷がかかる部品に使用されます。焼き入れ焼き戻しにより高い強度と靭性を得られるため、強度や耐摩耗性を必要とする重要な構造部材に採用されることが多いです。
参考)https://mitsu-ri.net/articles/scm435

選定基準としては、以下のポイントが重要です。
コストと軽量化重視の場合

  • ハイテン材が適しています​
  • 低コストで大量生産に向き、市場供給量も豊富です​
  • 薄肉化による軽量化が可能で、鋼材使用量を減らせます

    参考)https://www.mipox.co.jp/media/archives/14

高負荷と靭性重視の場合

耐食性が求められる環境

  • どちらも耐食性が高いですが、ハイテン材は沿岸部や凍結防止剤が散布される高塩分環境でも優れた耐食性を発揮します​

強度が必要な部材では薄肉化が可能で軽量化に貢献できますが、部材剛性は弾性係数や板厚、部材形状に依存するため、薄肉化によって低下する剛性は材料の高強度化だけでは補完できない点に注意が必要です。この場合、部品形状に補剛形状を形成することによる対策が考えられます。
参考)https://www.shinnichikogyo.co.jp/news/p2654/

ハイテン材(高張力鋼材)の特徴とメリット・デメリットについての詳細情報
ハイテンパイプの特性とメリット・デメリットの実務情報