
比色定量法の中でも最も基本的な手法である分光光度法は、物質が電子転移によって可視部もしくは紫外部の光を吸収することに基づく分析法です。この手法では、特定波長の光の吸光度が溶液の濃度と液層の厚さに比例するランベルト・ベールの法則を利用して濃度を算出します。
分光光度計の構造は、光源、分光器、試料室、検出器から構成されており、測定対象物質が吸収する光の波長と照射光の波長を合わせることが重要です。例えば、溶液の色が青色の場合、吸収される光は赤色であるため、赤色フィルターを使用して入射光から赤以外の光を除去します。
外壁塗装業界では、塗料の色調管理や品質検査において、この原理が応用される可能性があります。塗料に含まれる顔料の濃度測定や、経年劣化による成分変化の定量的評価に活用できる技術として注目されています。
MTT法(MTT assay)は、テトラゾリウム塩の一種であるMTTを用いた比色定量法の代表例です。MTTは細胞内に取り込まれると、ミトコンドリア内の脱水素酵素によってホルマザンに変化し、この反応による色変化を570nmの吸光度で測定します。
MTT自体は水溶性で黄色の溶液ですが、脱水素酵素による酸化還元反応により、青色の非水溶性ホルマザン結晶が生成されます。この結晶をDMSOなどの有機溶媒で溶解すると均一な赤紫色溶液となり、その吸光度から細胞の生存率や毒性を評価できます。
外壁塗装分野では、塗料成分の生体への影響評価や、作業環境の安全性確認において、このような細胞毒性評価技術の理解が重要になってきています。特に環境配慮型塗料の開発や、作業者の健康管理において応用される可能性があります。
実験手順の概要。
ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)法は、酵素反応による色変化を利用した高感度の比色定量法です。この手法では、HRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)の色原性基質として3,3',5,5'-テトラメチルベンチジン(TMB)が使用されます。
HRPによって過酸化水素が分解されると活性酸素が生じ、これがTMBを酸化して色素を生成します。反応停止のために加えられた硫酸酸性下で、この色素は450nmに吸収を持つ黄色を呈します。測定では450nmでの吸光度を主波長とし、620nmを副波長として使用して正確な値を算出します。
外壁塗装業界では、塗料中の特定成分の定量分析や、環境汚染物質の検出において、このような高感度測定技術の原理を理解することが品質管理の向上につながります。特に微量成分の分析や、規制物質の含有量確認において重要な技術です。
測定条件と特徴。
京都大学の分析法資料では比色定量の詳細な原理が解説されています。
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2012/04/2012_shigenseibutsukagakujikkenn_jikkenhou1-2_03-01-1.pdf
金属指示薬法は、イオン類の定量分析に特化した比色定量法の一種で、EDTA等を用いるキレート滴定用の指示薬として使用されます。この手法では、特定の金属イオンと選択的に反応する指示薬を使用し、色変化によって金属濃度を定量します。
代表的な応用例として、砒素(As)の分析があります。AgDDTC法(ジエチルジチオカルバミド酸銀法)は多くの砒素分析法として採用されており、JIS規格や河川水質試験方法、食品衛生法などで正式に採用されています。この方法では、ピリジン中で540nmの波長を使用し、4-12ppmの範囲で砒素を定量できます。
外壁塗装業界では、塗料原料の重金属含有量検査や、建築物の解体時における有害物質の分析において、このような金属定量技術の知識が不可欠です。特に鉛系塗料の使用履歴がある建物の改修工事では、作業前の詳細な成分分析が法的に要求される場合があります。
適用される規格と基準。
同仁化学研究所の技術資料では金属指示薬の詳細な使用法が記載されています。
https://www.dojindo.co.jp/technical/catalog/15.pdf
比色定量法の特殊な応用として、タンパク質のシステイン残基が有するチオール基の酸化還元状態を検出する技術があります。この手法では、検出対象となるタンパク質を試薬と反応させ、吸光度の変化に基づいてチオール基の酸化還元状態を測定します。
代表的な試薬として5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)が使用されます。しかし、従来の比色定量法では溶液系の吸光度を基準とするため、得られる値が必ずしも整数とならず、正確な定量が困難であるという課題がありました。
この技術は外壁塗装業界では直接的な応用は少ないものの、塗料の劣化機構解明や、新しい防食技術の開発において基礎研究として重要な意味を持ちます。特に金属表面の腐食プロセスや、塗膜の分子レベルでの変化を理解するための分析手法として注目されています。
チオール基検出の特徴。
特許情報プラットフォームではタンパク質分析の詳細な技術情報が公開されています。
http://dbsearch.biosciencedbc.jp/Patent/page/ipdl2_JPP_an_2013166448.html