
大気汚染は、人間の経済・社会活動に伴う化石燃料の燃焼、金属冶金、化学工業品製造などから排出される汚染物質によって引き起こされる空気の汚染です。代表的な汚染物質としては、二酸化硫黄を主体とした硫黄酸化物(SOx)、二酸化窒素を主体とした窒素酸化物(NOx)、燃料の不完全燃焼に伴う一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、浮遊粒子状物質(SPM)などがあります。
参考)https://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=viewamp;ecoword=%EF%BF%BD%E7%B5%A4%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD
工場や自動車、火力発電所などが主な発生源となっており、これらから排出される有害物質が酸性雨や光化学スモッグ、PM2.5などの形で大きな被害をもたらしています。特に発生源から排出された窒素酸化物と炭化水素が強い日差しのもとで反応し、オゾンやその他の酸化性物質(光化学オキシダント)を増加させる光化学大気汚染も深刻な問題です。
参考)https://gurilabo.igrid.co.jp/article/2432/
建築業界においても、建設機械の排気ガスや粉塵の発生が大気汚染の一因となっており、適切な対策が求められています。工事現場では防音塀、防音パネル、防音シート等を設け、粉じん等が発生する作業については適切に散水を行うなど飛散防止に努めることが重要です。
参考)大気汚染の原因は?汚染物質の種類や与える影響、企業ができる対…
水質汚濁は、河川や海洋などの水域に汚染物質が流入することで水環境が悪化する現象を指します。具体的には水質汚濁、海洋汚染、地下水汚染、底質汚染、富栄養化、貧酸素水塊、赤潮、青潮、アオコ、石油流出などが含まれます。
参考)環境問題 - Wikipedia
水質汚染の主な原因は、工場排水や生活排水に含まれる有害物質、農薬や化学肥料の流出、プラスチックごみなどの廃棄物です。特に新興汚染物質(EPs)と呼ばれる医薬品やパーソナルケア製品、抗生物質、ホルモンなどが近年大きな問題となっており、これらは動物や人間から直接水域に排出されたり、土壌を通じてゆっくりと浸出したりします。
参考)https://www.mdpi.com/2073-4441/13/22/3258/pdf
建設現場においても、コンクリート打設時のアルカリ性排水や油類の流出などが水質汚染の原因となる可能性があります。現場では適切な排水処理設備の設置や、油類の適切な管理が必要です。海洋に流出したプラスチックごみは紫外線によって劣化し、マイクロプラスチック化することで有害な添加剤が水に溶出し、生物濃縮を通じて人間への曝露リスクを高めています。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00571/2012/40-0121.pdf
土壌汚染は、工場で使用される有害物質が不適切に取り扱われたり、排水に漏れて土に入ったり、有害物質を含む廃棄物が不適切に土に埋められることで発生します。代表的な汚染物質には重金属(鉛、カドミウム、水銀など)、揮発性有機化合物、農薬、石油製品などがあります。
参考)土壌汚染とは?原因や事例、土壌汚染対策法についてわかりやすく…
土壌汚染は地下水汚染を引き起こし、飲料水や農業用水への影響を通じて人間の健康に直接的な被害をもたらす可能性があります。また、汚染された土壌で栽培された農作物を通じた有害物質の摂取リスクも存在します。建設業では、過去に工場などがあった土地を開発する際に土壌汚染が発見されるケースが多く、適切な調査と対策が必要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10234584/
土壌汚染対策法により、一定規模以上の土地の形質変更を行う場合は事前調査が義務付けられており、汚染が確認された場合は浄化や封じ込めなどの対策を講じる必要があります。さらに、建設工事に伴う地盤への影響として地盤沈下や塩害なども環境問題として認識されています。
騒音と振動は建設工事に伴う典型的な公害として、近隣住民とのトラブルの主要な原因となっています。建設現場では重機の稼働音、杭打ち作業の衝撃音、運搬車両の走行音などが発生し、これらが基準値を超えると生活環境に悪影響を及ぼします。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/12/4/1579/pdf?version=1582463694
騒音規制法および振動規制法では、建設工事について作業時間の制限、使用機械の種類や作業方法の規制、事前届出義務などが定められています。具体的な対策としては、低騒音・低振動型の建設機械の採用、防音パネルや防音シートの設置、エンジンの防音カバー装着、作業時間の調整などが効果的です。
参考)環境管理(騒音・振動・粉塵対策)の基礎|(株)松本管理事務所
振動対策では、重機作業の影響範囲を事前に把握し、必要に応じて防振対策を講じることが重要です。近隣住民からの騒音・振動・粉塵等の苦情に発注者が特に敏感に反応し、これらが原因で現場がストップするケースが最も多いため、適切な環境管理とモニタリングが求められます。建設機械は整備不良による騒音・振動が発生しないよう点検・整備を十分に行う必要があります。
参考)建設施工・建設機械:建設工事に伴う騒音振動対策技術指針 - …
建設現場における粉塵汚染は、見えにくい危険として軽視されがちですが、作業員や近隣住民の健康に深刻な影響を与える可能性があります。解体工事、掘削作業、資材の運搬などで大量の粉塵が発生し、これが大気中に飛散することで呼吸器系疾患や塵肺のリスクを高めます。
参考)https://www.matec-conferences.org/articles/matecconf/pdf/2018/55/matecconf_rsp2018_04073.pdf
粉塵対策の基本は「発生させない」「飛散させない」「吸い込まない」の3原則です。具体的な対策として、散水による粉塵の飛散防止、防塵シートやフェンスの設置、作業エリアの区画化、運搬車両のタイヤ洗浄などが挙げられます。また、作業員に対しては適切な防塵マスクの着用を徹底することも重要です。
参考)大阪市:建設作業に係る指導方針 (…href="https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000199020.html" target="_blank">https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000199020.htmlgt;環境局href="https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000199020.html" target="_blank">https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000199020.htmlgt;その他)
建設工事に伴う環境対策事例では、騒音と並んで粉塵が苦情の件数が多い項目として挙げられており、現場と運搬路の両方で対策が必要とされています。防音シート・パネルは騒音対策として設置されますが、防塵対策や危険防止でも有用なものであり、原則として採用することが推奨されています。適切な粉塵管理により、作業員の健康保護と近隣への配慮の両立が可能になります。
参考)https://www.env.go.jp/content/900405120.pdf
化学物質による環境汚染は、残留性有機汚染物質(POPs)や環境ホルモン、重金属など多様な物質が関与する複雑な問題です。特にプラスチック製品に含まれる添加剤は、製品の劣化や廃棄により環境中に放出され、生態系と人間の健康に影響を及ぼしています。
参考)【専門家の解説】プラスチックが拡散する有害化学物質 href="https://www.greenpeace.org/japan/news/story_63383/" target="_blank">https://www.greenpeace.org/japan/news/story_63383/amp;#8…
プラスチック製品35品目を調査した結果、毒性を持ったもの、環境影響や人への影響を持つ物質が複数含まれており、ホルモン受容体との結合能をもつ環境ホルモンは100種類近く検出されました。プラスチックごみが管理の流れを外れて環境に出ると、海水や河川に流出し、紫外線によって劣化して添加剤が水に溶出します。
建設業においても、建材や仮設資材に使用されるプラスチック製品の適切な管理と廃棄が求められます。マイクロプラスチックは貝や小魚に取り込まれ、食物連鎖を通じて生態系のより上位の生物に残留性有機汚染物質(POPs)や化学添加剤が濃縮・蓄積していきます。プラスチックの生産から廃棄までの間に関係する化学物質が約1万種あるとされ、包括的な管理体制の構築が必要です。
参考)日本野鳥の会 : 第9回 マイクロプラスチック汚染の脅威2 …
放射性物質による汚染は、原子力施設の事故や放射性廃棄物の不適切な管理によって発生する深刻な環境問題です。放射性物質が体の表面に付着することを体表面汚染と呼び、空気中に飛散した放射性物質を空気とともに吸い込んだり、汚染された飲食物を取り込んだりすると体内被曝のリスクが高まります。
参考)https://www.env.go.jp/content/000217275.pdf
放射線には電離作用を持つものがあり、これが生物の細胞に影響を与えることで健康被害を引き起こします。一方、電磁波でも電波、赤外線、可視光線のように電離作用を持たないものがあり、これらの健康影響については継続的な研究が行われています。電磁波公害として、送電線や携帯電話基地局からの電磁波曝露が懸念される場合もあります。
建設業では、放射性物質に汚染された土壌の除染作業や、汚染地域での建設工事において特別な安全管理が必要です。放射能汚染と同様、放射性物質が体の表面に付着したり、呼吸や食事などで体内に取り込まれたりすることで、継続的に放射線を浴びることとなるため、適切な防護措置が不可欠です。体表の放射性物質は洗浄によって除去できますが、体内に取り込まれた場合は長期的な健康管理が必要になります。
参考)https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/20140707mat1-01-1.pdf
ごみ問題は、不法投棄、ポイ捨て、漂流・漂着ごみ、海洋投入、スペースデブリなど多岐にわたる環境汚染の原因となっています。特に海に浮かぶごみの中で最も多いのが、容量ベースでは漁網などの漁具、個数ではペットボトル類やレジ袋などの容器包装です。
参考)プラスチックごみの種類別ランキング
建設現場においても、建設廃棄物の適切な処理と管理が重要な課題です。廃棄物の種類別に分別し、リサイクル可能なものは再資源化ルートに乗せることで、最終処分場への負荷を軽減できます。不法投棄は土壌汚染や地下水汚染の原因となるだけでなく、景観破壊や悪臭の発生など複合的な環境問題を引き起こします。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9413587/
ごみ問題への対応として、リサイクルや再利用の徹底、廃棄物の減少に努めることが大気汚染防止にもつながります。建設工事から発生する廃棄物については、建設リサイクル法に基づき、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材などの分別解体と再資源化が義務付けられています。適切な廃棄物管理により、環境負荷の低減と資源の有効活用が実現できます。
参考)大気汚染の原因とは?汚染物質の種類や健康への影響、企業・個人…
光害は過剰または不適切な人工照明によって引き起こされる環境問題で、夜間の生態系や人間の生活リズムに悪影響を及ぼします。建設現場での夜間作業照明や、完成後の建物からの光漏れが周辺環境に影響を与えることがあります。また、日照阻害は高層建築物によって周辺の日照が妨げられる問題で、居住環境の質を低下させる要因となっています。
景観破壊は、開発に伴う問題として埋め立てや干拓、無秩序な建設活動などによって引き起こされます。建築業従事者は、周辺環境との調和を考慮した設計と施工を心がける必要があります。特に歴史的景観や自然景観が重要な地域では、景観条例や景観計画に基づいた配慮が求められます。
建設工事における光害対策としては、作業照明の適切な配置と遮光、必要最小限の照度設定、周辺への光の漏洩防止などが挙げられます。また、工事用仮囲いのデザインや色彩にも配慮することで、工事期間中の景観への影響を最小限に抑えることができます。環境アセスメントにおいても、光害や景観への影響評価が重要な項目として位置づけられており、計画段階からの適切な対応が必要です。
環境基準に関する詳細情報(環境省公式サイト)- 大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音に係る環境基準の具体的な数値と測定方法が確認できます
建設工事に係る騒音・振動の規制(東京都環境局)- 騒音規制法・振動規制法の具体的な規制内容と届出手続きについて解説されています
建設工事に伴う騒音振動対策技術指針(国土交通省)- 建設現場での具体的な騒音・振動対策技術と管理手法が示されています