
異形鉄筋の規格表は、JIS G 3112「鉄筋コンクリート用棒鋼」によって厳格に定められています。この規格は、コンクリート補強に使用する熱間圧延によって製造された異形棒鋼について、寸法・品質・性能を統一的に規定したものです。
🔹 JIS規格の構成要素
異形棒鋼は一般的に「異形鉄筋」と呼ばれていますが、JIS規格上の正式名称は「異形棒鋼」です。表面に設けられた節(リブ)により、コンクリートとの付着性能を高めているのが特徴です。
建築分野では、径によって使用される強度の種類が実質的に決まっています。
これは法的な規定ではなく、流通の安定性や構造設計上のコストパフォーマンスを考慮した慣例となっています。
異形鉄筋の寸法と重量は、建築・土木工事における材料計算の基礎となる重要なデータです。以下に主要な規格値を示します。
📊 標準的な異形鉄筋寸法・重量表
呼び名 | 公称直径(mm) | 公称断面積(cm²) | 単位重量(kg/m) | 最大外径(mm) |
---|---|---|---|---|
D10 | 9.53 | 0.713 | 0.56 | 11 |
D13 | 12.7 | 1.267 | 0.995 | 14 |
D16 | 15.9 | 1.986 | 1.56 | 18 |
D19 | 19.1 | 2.865 | 2.25 | 21 |
D22 | 22.2 | 3.871 | 3.04 | 25 |
D25 | 25.4 | 5.067 | 3.98 | 28 |
D29 | 28.6 | 6.424 | 5.04 | 33 |
D32 | 31.8 | 7.942 | 6.23 | 36 |
D35 | 34.9 | 9.566 | 7.51 | - |
D38 | 38.1 | 11.40 | 8.95 | - |
D41 | 41.3 | 13.40 | 10.5 | - |
D51 | 50.8 | 20.27 | 15.9 | - |
🔸 寸法の特徴
単位重量は公称断面積に鋼材の密度(7.85g/cm³)を乗じて算出されています。この値は材料発注や重量計算において正確性が求められる重要な基準値です。
公称断面積は構造計算における応力算定の基礎となり、コンクリート構造物の安全性に直結します。D51のような太径鉄筋では断面積が20cm²を超え、大型構造物の主筋として使用されます。
📏 細径鉄筋の特殊用途
D4~D8といった細径の異形鉄筋も規格化されており、主にせん断補強筋や配筋補強に使用されます。これらは単位重量が軽く、複雑な配筋にも対応可能です。
異形鉄筋の強度は「SD」で始まる種類記号で分類され、数値は降伏点を表しています。各強度グレードには明確な機械的性質が規定されています。
⚡ 主要強度グレード一覧
種類記号 | 降伏点(N/mm²) | 引張強さ(N/mm²) | 伸び(%) | 対象サイズ |
---|---|---|---|---|
SD295A | 295以上 | 440~600 | 16以上 | D22以下 |
SD295B | 295以上 | 440~600 | 14以上 | D25以上 |
SD345 | 345以上 | 490以上 | 18以上 | D22以下 |
SD390 | 390以上 | 560以上 | 17以上 | D22以下 |
SD490 | 490以上 | 620以上 | 16以上 | 指定径 |
🔹 降伏比の重要性
各グレードには降伏比(降伏点/引張強さ)の上限が設定されており、SD345では80%以下となっています。これは構造物の靭性確保のための重要な指標です。
💡 高強度鉄筋の展開
近年では、より高強度なSD590B、SD685B、さらにはSD785といった超高強度鉄筋も開発されています。これらは大臣認定品として特殊な用途に使用され、材料費削減と構造性能向上を両立します。
曲げ性能についても厳格な基準があり、SD345のD16以下では内側半径が公称直径の1.5倍、D19以上では2倍での180度曲げ試験が規定されています。
異形鉄筋の最も重要な特徴である「節」についても、JIS規格では厳密な許容限度が設定されています。節の形状はコンクリートとの付着性能を決定する重要な要素です。
🔧 節の許容限度基準
呼び名 | 節の平均間隔最大値(mm) | 節の高さ最小値(mm) | 節の高さ最大値(mm) | 節の隙間合計最大値(mm) |
---|---|---|---|---|
D10 | 6.7 | 0.4 | 0.8 | 7.5 |
D13 | 8.9 | 0.5 | 1.0 | 10.0 |
D16 | 11.1 | 0.7 | 1.4 | 12.5 |
D19 | 13.4 | 1.0 | 2.0 | 15.0 |
D25 | 17.8 | 1.3 | 2.6 | 20.0 |
D32 | 22.3 | 1.6 | 3.2 | 25.0 |
🔸 節の角度規定
節と軸線との角度は45度以上と規定されており、この角度により引き抜き抵抗力が確保されます。角度が浅すぎると十分な付着力が得られません。
⚙️ 製造上の特殊考慮
SD685RやSD785Rなどの高強度せん断補強筋では、D10、D13、D16について受渡当事者間の協定により節の許容限度を変更することが可能です。これは特殊用途における施工性を考慮した柔軟な対応です。
節の隙間の合計は、コンクリートの流動性確保のために重要な要素となっています。隙間が少なすぎるとコンクリートの充填不良を起こす可能性があります。
実際の設計・施工現場では、規格表の数値だけでなく、実務的な選定基準を理解することが重要です。適切な鉄筋選定は、工期短縮とコスト削減に直結します。
🏗️ 用途別推奨グレード
🔹 経済性の考慮
径が大きくなるほど単価は上昇しますが、断面積当たりの単価は逆に安くなる傾向があります。D19とD22を比較すると、断面積比1.35倍に対し重量比1.35倍となり、ほぼ比例関係にあります。
📈 在庫・調達面での配慮
⚖️ 施工性とのバランス
太径鉄筋は構造効率は良いものの、配筋の難易度が上がります。D32以上では現場での取り扱いに重機が必要となることが多く、総合的なコスト評価が重要です。
🔄 代替材の検討
同等の断面積を確保する場合、複数の細径鉄筋で代替することも可能です。例えば、D22(断面積3.87cm²)をD16×2本(断面積3.97cm²)で代替できますが、配筋密度と施工性を十分検討する必要があります。
溶接金網用途では圧接性の優れた製品が求められ、東京製鐵の「Blue Bar」などの銘柄指定される場合もあります。これらの特殊用途では、単純な規格値だけでなく、製造メーカーの技術特性も重要な選定要素となります。
高強度せん断補強筋として使用される場合は、Jフープ785のような専用材を選定し、一般構造用とは区別して管理することが求められます。