

コロニアルグラッサは「高耐候性だから10年はメンテ不要」と信じて選ぶと、7〜8年で色あせて追加費用が30万円以上かかることがあります。
コロニアルグラッサは、ケイミュー株式会社が製造・販売する化粧スレート屋根材の上位グレード品です。一般的な「コロニアル(スレート)」との最大の違いは、表面に「グラッサコート」と呼ばれる無機系塗膜が施されている点にあります。この無機塗膜は、一般的な有機系塗料に比べて紫外線による分解が起きにくく、メーカーが「30年相当の耐候性試験をクリア」と訴求している高耐久製品です。
実際、標準的なスレート屋根材が10年前後で色あせや苔の付着が目立ちはじめるのに対し、コロニアルグラッサは15〜20年程度は美観を保ちやすいとされています。価格は1㎡あたり3,000〜4,500円程度(材料費のみ)で、一般的なスレートより20〜30%高い水準です。
それでも後悔の声が出るのはなぜか。主な理由は「グラッサコートの耐候性」と「屋根全体の耐久性」を混同してしまうことにあります。塗膜が長持ちするからといって、屋根材本体のひび割れ・欠けの防止や、棟板金・防水シートの劣化が抑えられるわけではありません。
つまり「塗り直し不要≠メンテナンス不要」ということです。
この点を施工前に施主へ正確に伝えていないケースが、後悔・クレームの温床になっています。建築業従事者として、ここの説明を省略することが最大のリスクです。
| 製品 | 表面仕上げ | 色あせ保証(目安) | 材料費目安(/㎡) |
|---|---|---|---|
| コロニアル(スタンダード) | 有機塗料 | 約10年 | 2,000〜3,000円 |
| コロニアルグラッサ | 無機グラッサコート | 約20〜30年相当 | 3,000〜4,500円 |
| ガルバリウム鋼板 | フッ素・ポリエステル塗装 | 約20〜25年 | 5,000〜8,000円 |
ケイミュー公式サイトでは製品仕様・保証の詳細が確認できます。
後悔の声は大きく5つのパターンに分類できます。それぞれに「なぜ起きるのか」という構造的な原因があるため、施工前・提案前に把握しておくことが重要です。
① 色あせ・褪色が「思ったより早い」と感じるケース
グラッサコートの性能は確かに高いのですが、北面・谷部・軒先など日陰になりやすい箇所は苔・藻が付着し、10年前後から美観が損なわれることがあります。「30年相当の試験」は理想条件下での数値であり、実際の環境(立地・日照・降雨量)によって差が出ます。
苔・藻は見た目の問題だけでなく、屋根材の吸水を促進するため放置すると素材劣化を早めます。これが原因です。
② ひび割れ・欠けが築10年前後で発生する
コロニアルグラッサを含むスレート系屋根材は、セメントが主成分のため経年で水分を吸収し、凍結融解サイクルを繰り返すことでひび割れが生じます。特に寒冷地や、軒先・棟付近の重なり部は割れやすい傾向があります。
1枚あたりの交換費用は材料+工賃で1万〜3万円程度ですが、足場が必要になると15〜20万円の追加費用が発生します。これは痛いですね。
③ 棟板金の浮き・釘抜けによる雨漏り
「屋根材は大丈夫だったのに棟から雨漏りした」という事例が後悔の声として多く聞かれます。棟板金は木製の「貫板」に釘で固定されていますが、貫板は腐朽しやすく、10〜15年で釘が浮いてきます。コロニアルグラッサ自体の問題ではなく、附帯部材の問題ですが、施主には「屋根を高いので選んだのに雨漏りした」という不満として表れます。
予防策として、貫板を樹脂製(プラスチック)に変更する工法があります。費用は木製より1〜2万円程度高くなりますが、腐朽リスクをほぼゼロにできます。提案時に選択肢として加えるだけで、後々のクレームを大幅に減らせます。
④ 塗装不要と聞いていたのに「塗装を勧められた」と感じるケース
塗装業者が訪問営業で「グラッサコートが劣化している」と指摘し、不必要な塗装を勧めるトラブルが報告されています。グラッサコート表面への再塗装は、密着性の問題から原則推奨されない場合があります。
つまり、塗装の必要性を正確に判断できる知識が施主にもなければ、悪質業者のターゲットになりやすいということです。
⑤ 葺き替え・カバー工法を選べばよかったという後悔
コロニアルグラッサは重ね葺き(カバー工法)には対応していますが、素材が薄く(厚さ約5mm)強度は鋼板系より劣ります。将来的な葺き替えコストまで含めたライフサイクルコストを比較しないまま選択すると、20〜30年後に「ガルバリウム鋼板にしておけばよかった」という後悔が生まれます。
30坪の切妻屋根(約100㎡)で比較すると、コロニアルグラッサの新築施工費は35〜50万円、ガルバリウム鋼板は55〜90万円と初期費用に差があります。しかし30年間のトータルメンテナンス費用を加えると、差が縮まるケースも少なくありません。
後悔の多くは「施工後に発覚する情報のギャップ」から生まれます。施工側として対策できることが確実に存在します。
まず、提案段階でのコスト説明を「材料費・施工費」だけで終わらせないことが基本です。10年・20年・30年のメンテナンスロードマップを図示して渡すことで、施主の「思っていたと違う」という感情的な後悔を9割方防ぐことができます。
具体的なロードマップの内容は以下のとおりです。
次に施工品質の面では、下葺き材(防水シート)の選定が重要です。グラッサコートで屋根材自体の寿命は伸びても、防水シートが10〜15年で劣化するルーフィングを使っていれば、屋根全体の耐久性はそこで頭打ちになります。改質アスファルトルーフィング(田島ルーフィング「ニュータイプルーフィング220」など)を標準採用するだけで、屋根全体のライフサイクルが格段に伸びます。
防水シートの規格・性能については国土交通省の住宅瑕疵担保責任保険の技術基準も参考になります。
国土交通省 住宅瑕疵担保履行法・技術基準(国交省公式):防水関連基準の確認に活用できます
施工時のもう一つのポイントは「重ね代の確保」です。コロニアルグラッサの施工要領書には最小重ね代が明記されていますが、スピード優先の施工で重ね代を削ると、毛細管現象による雨水の侵入リスクが高まります。これは施工後の点検では発見しにくい部分であり、知識として持っておくことが重要です。
意外と見落とされがちな後悔の原因として、「色選びの失敗」があります。これは美観上の問題だけでなく、実際の劣化速度にも影響するため、建築業従事者が知っておくべき情報です。
コロニアルグラッサのカラーラインナップは「コロニアルグラッサ」シリーズで12色(2024年時点)あります。このうち濃色系(ブラック・ダークグレー系)は、白華(エフロレッセンス)が目立ちやすい傾向があります。白華とはセメント成分が水分とともに表面に析出する現象で、黒い屋根に白い斑点が出る形で現れます。
逆に淡色系(ライトグレー・クリームホワイト系)は、汚れが目立ちにくい反面、苔や藻が付着した際に茶色・緑色の変色が気になりやすくなります。
一方で、日射反射率(遮熱性能)は色によって大きく異なります。黒系は日射吸収率が高く、夏場の屋根裏温度が白系と比べて10〜15℃高くなるという調査データ(建材試験センター測定)があります。夏の冷房負荷を気にする施主には、淡色・遮熱グレードの製品を選ぶよう提案するのがベストです。
これは使えそうです。
色選びの失敗によるクレームは「交換」が唯一の解決策になることが多く、費用は葺き替えと同等の80〜150万円に達します。施工前に「色見本帳の屋外照合」と「施工事例写真の確認」を徹底させることで、このリスクをほぼゼロにできます。可能であれば実際に同じ色が施工されている近隣物件に案内するのが最も効果的です。
| 色系統 | 白華の目立ちやすさ | 苔・汚れの目立ちやすさ | 遮熱性 |
|---|---|---|---|
| ブラック・ダークグレー系 | ⚠️ 目立ちやすい | △ 比較的目立ちにくい | 低い |
| ミドルグレー系 | △ 普通 | △ 普通 | 中程度 |
| ライトグレー・ホワイト系 | ○ 目立ちにくい | ⚠️ 苔が目立つ | 高い |
すでにコロニアルグラッサを施工済みで「後悔している」という状況になった場合の対処法と、次回提案に活かせる代替材との比較をまとめます。
現状確認から始めることが原則です。
まず「何が問題なのか」を切り分けることが重要で、以下の3つの確認から始めます。
完全な葺き替えを急がないことが基本です。コロニアルグラッサは防水シートが健全であれば、屋根材の見た目が悪くても雨漏りは起きません。点検で防水シートの状態を確認したうえで、実際の対処方針を決める順序を守ることが大切です。
次に、代替材との比較を見てみましょう。
| 屋根材 | 初期費用(100㎡) | 主なメンテ周期 | 重量(/㎡) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| コロニアルグラッサ | 35〜50万円 | 棟板金:10〜15年 | 約20kg | デザイン豊富・コスト中程度 |
| ガルバリウム鋼板 | 55〜90万円 | 塗装:20〜25年 | 約5kg | 軽量・耐久性高・遮音性低い |
| アスファルトシングル | 40〜65万円 | 部分補修:15〜20年 | 約10kg | 施工性良・北米で実績豊富 |
| 陶器瓦(和瓦) | 80〜150万円 | 漆喰:20〜30年 | 約45kg | 最高耐久・重量大・初期高 |
ガルバリウム鋼板は「軽量・長寿命」で近年人気が高まっていますが、雨音が室内に響きやすいというデメリットがあります。制振材(断熱材一体型)を採用すれば改善できますが、費用は10〜20%増しになります。
陶器瓦は30〜60年の耐久性を持ち、メンテナンス費用が最も少ない屋根材ですが、重量が大きく耐震性能への影響を検討する必要があります。2000年以降の建物で耐震等級2以上が確保されていれば問題ないケースが多いものの、築年数が古い建物への葺き替えには構造確認が必須です。
結論は「最適解は建物の構造・立地・予算で変わる」ということです。
建築業従事者として後悔のない提案をするためには、「この製品が最高」という一元的な推奨ではなく、施主の条件に合わせたトータルコスト・リスク説明が最も信頼を生みます。コロニアルグラッサの後悔事例を知識として持つことは、次の提案の質を確実に上げてくれます。
スレート屋根材の評価に関しては、住宅金融支援機構のフラット35技術基準も参考資料として活用できます。
住宅金融支援機構 フラット35技術基準(屋根・外壁関連):屋根材の採用基準確認に活用できます