
代替材料とは、在来の建築材料として使用されてきたものに対する代わりの材料、もしくは今までにまったく使用されることのなかった新しい材料の総称です。建築分野では、木製サッシュに代わるアルミサッシュや、木ずりに代わる石膏ボードなどが代表的な代替材料の例として挙げられます。これらの材料は時代とともに変化し、建築材料としての存在価値が認められて定着するまでの間は新建材や代替材料と呼ばれる特徴があります。
参考)新建材(シンケンザイ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
近年では環境問題への対応として、セメントの代替材料であるジオポリマーが注目されており、セメントと同じ産業廃棄物を原料としながらも製造過程における二酸化炭素の排出量を大きく削減できる特性を持っています。建築業界では、プラスチック系、木質系、繊維系などの軽量でかつ燃えやすい材料が、主にシート状や板状の形で化粧仕上げに用いられる非構造材料として普及しています。
参考)セメントを用いない世界初のジオポリマー製3Dプリントハウスが…
建築基準法では、予想しない特殊な建築材料を用いる建築物については、第38条において建設大臣がその建築材料が法に適合すると認めることによって使用できるように措置されています。このため建築事業者は、代替材料の採用にあたっては法規制への適合性を十分に確認する必要があります。
参考)https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/35348/35348_20180322132630-1.pdf
建設業界において代替材料の需要が高まっている主な背景には、環境問題とコスト削減の二つの大きな要因があります。建設業界は気候変動の主要な要因の一つとされており、廃棄物の発生、資源の枯渇、温室効果ガスの排出といった環境への負の影響が指摘されています。このため環境への配慮を考慮した評価と意思決定が建設業界では必須となっています。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/13/18/10438/pdf?version=1632298218
持続可能な建設を実現するための重要な戦略として、建築材料の選定が設計・施工段階において重要な役割を果たすことが認識されています。特に環境負荷の低い建築材料を選択することで、ライフサイクル全体における二酸化炭素排出量を削減できるため、代替材料の活用が推進されています。
参考)301 Moved Permanently
コスト面では、製造業における代替材料の検討により原材料コストの削減が可能となります。例えば航空機部品では強度の高いチタン合金が使用されることが多いですが、一部の非構造部品では軽量なアルミニウム合金に置き換えることでコストを削減できます。また、耐熱性が必要な場合でも、高温が加わる部分だけを耐熱合金にし、他の部分は一般的な鋼材を使用することでコストダウンが可能です。
参考)忘備録 高度な製品をつくる製造業における代替材料の検討とコス…
循環型経済の観点からも、建築材料や構成要素の選定において、早期段階から適切な代替材料を選択することで、バリューチェーン全体において循環型経済の原則を実行し、クローズドループを創出することができます。
参考)https://www.mdpi.com/2412-3811/6/4/49/pdf
建築分野における代替材料は、その用途と性能によって複数のカテゴリーに分類されます。以下の表は主要な代替材料の種類と特徴を示しています。
代替材料の種類 | 従来材料 | 主な特徴 | 代表例 |
---|---|---|---|
金属系代替材料 | 木材、プラスチック | 高強度、匂いや色が付きにくい、保冷・保温性能 |
アルミ製建材、ステンレス鋼 |
バイオマス系材料 | 石油由来プラスチック | カーボンニュートラル、再生可能資源、環境負荷低減 |
トウモロコシ・サトウキビ由来プラスチック |
生分解性材料 | 従来プラスチック | 自然界で分解される、環境負荷が低い | 生分解性プラスチック |
複合材料 | 金属部品 | 軽量化とコストダウンの両立 | CFRP、GFRP |
無機系材料 | セメント | CO2排出量削減(最大90%)、耐火性・耐食性 | ジオポリマー |
金属代替材料は、プラスチックに比べて重さがネックになることが多いものの、破損しても再生して繰り返し使えるメリットがあります。アルミはプラスチックに比べて匂いや色が付きにくく、きれいな状態を保ちやすいという特徴があります。
バイオマスプラスチックは、植物が成長過程でCO2を吸収することから、廃棄物の焼却時に排出されるCO2は実質、地球上のCO2濃度を増やさないカーボンニュートラルな素材です。木材や紙は廃棄された後、自然に還る素材として脱プラスチックの筆頭に上がっており、近年では透明性のある木材が開発されるなど、今後はさらなる発展が期待されています。
ジオポリマー3Dプリントモルタルは、硬化するまでの時間が短いため作業を中断せずにプリントでき、1200℃まで耐えられる優れた耐火性があります。また耐食性があり、海の塩や潮風の影響を受けないため、海辺の構造物にも使用可能です。
建築事業者が代替材料を選定する際には、多面的な評価基準を考慮する必要があります。材料選定のチェックリストとして、以下の項目が実務において重要です。
参考)SS400とS45Cの違いを徹底解説!材質選定の基礎から実践…
強度要件の確認においては、静的強度(降伏点、引張強度)が十分であるか、疲労強度が要求を満たすか、硬度要件があるかといった観点から評価します。加工性の確認では、溶接の有無と難易度、機械加工の程度と精度要求、冷間加工(曲げ、絞りなど)の必要性を検討する必要があります。
経済性の評価では、材料調達コストと入手性、加工コストの見積もり、製品寿命とライフサイクルコストを総合的に判断します。その他の考慮点として、納期への影響、標準化・規格への適合性、将来的な材料調達の安定性も重要な評価項目です。
持続可能性の観点からは、安全性、リサイクル性、環境への影響(CO2・エネルギー削減等)など、様々な要素の考慮が必要となります。代替品の選定においては、対象物質と代替品の有害性やばく露評価を比較し、その結果を総合的に判断することが推奨されています。
参考)代替品を含む化学物質や材料を選択する際に考慮する事項について
材料選定の基本ガイド|SS400とS45Cの違いを徹底解説
鋼材の代替材料を検討する際の具体的なチェックリストと判断基準が詳しく解説されています。
設計担当者が代替材料を扱う際には、環境規制への対応(RoHS指令等の規制対象か確認、将来を見据え鉛フリー材への切替えも検討)、要求性能との適合性(強度や耐食性などの要求性能と合致するか確認、性能が不足する場合は他材料や表面処理を検討)、加工方法との適合性などを押さえておくべきです。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/marketplace/50236/
代替材料の導入は、建築事業者にとって複数の経済的メリットをもたらします。金属代替樹脂の採用例では、一般に金属材料よりも安価であることに加え、加工時の電力や時間、そして道具の消耗が少なく、結果的に製品の製造コストを低減できるというメリットがあります。
参考)金属代替樹脂完全ガイド ー選定から設計まで徹底解説ー|樹脂の…
樹脂は金属より軽いため、完成品の輸送や取り扱いが容易になり、物流コストの削減や作業負荷の軽減も見込めます。また、材料特性の適正化により、オーバースペックな材料の見直しが可能となり、例えば非構造部品では高価な材料から一般的な材料に置き換えることでコストを削減できます。
ハイブリッド材料の活用では、金属部品をカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)に置き換えることで、軽量化とコストダウンを両立できます。代替材料を検討する際の主な視点として、より高強度が必要な場合はSS400からSM490(構造用高張力鋼)へ、耐食性向上にはSS400からSUS304(ステンレス鋼)へといった選択肢があります。
ただし代替材料の検討では、性能向上と共にコスト増も考慮する必要があります。例えばSS400からステンレス鋼への変更は耐食性を大幅に向上させますが、コストも数倍になる可能性があるため、総合的な経済性評価が不可欠です。環境面では、製造工程における二酸化炭素排出量が比較的低く抑えられる点、リサイクルの容易さなどから、環境負荷の低減努力の一環として採用が進んでいます。
金属代替樹脂完全ガイド|選定から設計まで徹底解説
コスト削減と環境負荷低減を実現する金属代替樹脂の詳細な経済効果分析が掲載されています。