

不動産物件における給水設備は、建物の規模や階数によって最適な方式が異なります。給水設備の主要な構成要素として、給水管、貯水槽、給水ポンプ、給湯設備の4つが挙げられます。これらの設備を組み合わせることで、建物全体に安定した水の供給が可能になります。
参考)https://www.haisui.jp/2022/12/01/%E7%B5%A6%E6%B0%B4%E8%A8%AD%E5%82%99%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
給水方式は大きく「水道直結方式」と「受水槽方式」の2つに分類されます。水道直結方式はさらに直結直圧方式と増圧直結方式に分かれ、受水槽方式は高置水槽方式と加圧給水方式(ポンプ直送方式)に分けられます。建物の階数や用途に応じて、これら4種類の給水方式から適切なものを選択する必要があります。
参考)https://archi-setsubi.com/sanitary/water-supply-method/
直結直圧方式は、水道本管の圧力をそのまま利用して各戸に給水する最もシンプルな給水方式です。配水管から給水管を直接分岐して建物内に引き込み、受水槽やポンプを使用せずに蛇口まで水を届けます。一般的に3階建てまでの建物に適用され、地域や環境条件によっては5階建てまで対応可能な場合もあります。
参考)https://sankou-setsubi.co.jp/kouza/watersupply
この方式の最大のメリットは、受水槽に水を貯めないため水質汚染のリスクが低く、常に新鮮な水道水を供給できる点です。また、受水槽やポンプなどの設備が不要なため、設置スペースを節約でき、メンテナンス費用も抑えられます。停電時でも水道本管の圧力で給水できるという利点もあります。
参考)https://sears.co.jp/blog/?bid=113
デメリットとしては、水道本管の水圧に依存するため3階建て以下の低層建物にしか適用できないこと、断水時には給水がストップしてしまうこと、水の貯留機能がないため災害時の備蓄水が確保できないことが挙げられます。
参考)https://kenchiku-setsubi.biz/kyusuihoushiki/
増圧直結方式は、水道本管からの水圧に加えて増圧ポンプ(ブースターポンプ)で圧力を高めて給水する方式です。受水槽を設けずに配水管から直結し、増圧装置を設置することで中高層建物への給水を可能にします。一般的に4階から15階程度の建物に適用され、直結直圧方式では対応できない高さの建物に採用されます。
参考)https://www.haisui.jp/2023/04/03/%E3%81%8A%E3%81%95%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%84%E3%80%8C%E7%B5%A6%E6%B0%B4%E6%96%B9%E5%BC%8F%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC/
この方式のメリットは、受水槽が不要なため新鮮で衛生的な水を供給できること、受水槽設置スペースを有効活用できること、受水槽の清掃や点検が不要でメンテナンスコストを削減できることです。また、停電時でも水道本管の圧力分は給水可能で、増圧ポンプの電源が落ちるだけで完全に断水することはありません。
参考)https://www.morioka-water.jp/general/chukoso_kyusui.html
デメリットとしては、増圧ポンプの設置スペースが必要なこと、15階を超える高層建物には適用できないこと、断水時には給水がストップすること、地域によっては水道局の認可が下りない場合があることが挙げられます。また、多くの水道局でメーターバイパスユニットの設置が義務付けられており、設置コストが発生します。
参考)https://kenchikusetubisekkei.com/13_watersupply/
受水槽方式は、水道本管から引き込んだ水をいったん受水槽(貯水槽)に貯めてから建物内に給水する方式です。5階以上の高層マンションやビルなど、水道直結方式では対応できない大規模建物に採用されます。受水槽は建物の1階や地階に設置されるのが一般的で、ここから各戸への給水方法によって「高置水槽方式」と「加圧給水方式(ポンプ直送方式)」に分かれます。
参考)https://www.qracian.co.jp/column/exterior/11841/
高置水槽方式は、受水槽に貯めた水を揚水ポンプで建物の屋上に設置した高置水槽まで汲み上げ、重力を利用して各戸に給水する方式です。この方式のメリットは、停電時や断水時でも高置水槽と受水槽に残っている水を利用できること、重力による給水のため水圧が安定していることです。デメリットは、受水槽と高置水槽の両方の清掃・点検が必要なこと、屋上に高置水槽を設置するスペースと構造的強度が必要なこと、設置コストが高いことが挙げられます。
加圧給水方式(ポンプ直送方式)は、受水槽に貯めた水を加圧ポンプで直接各戸に圧送する方式で、マンションやオフィスビルで最も多く採用されています。メリットは高層階にも給水できること、ポンプで水圧を調節できること、断水時でも受水槽に残っている水を供給できることです。デメリットは受水槽の定期的な清掃が必要なこと、停電時には給水できないこと、受水槽と加圧ポンプのスペースが必要なことです。
給水配管に使用される材料は、耐久性、耐腐食性、衛生性、コストなどを考慮して選定されます。主な配管材料として、ダクタイル鋳鉄管、ステンレス鋼管、水道用ポリエチレン管、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管(HIVP管)などがあります。
参考)https://www.haisui.jp/2024/02/02/%E4%B8%BB%E3%81%AA%E7%B5%A6%E6%B0%B4%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E9%81%B8%E3%81%B3%E6%96%B9/
ダクタイル鋳鉄管は、通常の鋳鉄より強度と耐久性が高く、上水道の配管に広く使用されています。高強度で耐久性に優れ、加工性も良好ですが、重量があるため施工時に注意が必要です。ステンレス鋼管は耐食性・耐久性に優れ、清掃が容易で衛生的なため、水道やガス供給に利用されますが、コストが高いという欠点があります。
参考)https://www.pluscad.jp/howto/5905/
樹脂系配管材料として、ポリエチレン管とHIVP管があります。ポリエチレン管は軽量で耐腐食性が高く、施工が容易で長寿命という特徴があります。地下埋設や高温環境でも使用可能で、内面が滑らかなため水流がスムーズになります。HIVP管(水道用耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)は、耐食性に優れ軽量で施工性が良好ですが、直射日光や紫外線に弱いという特性があります。
配管材料の選定では、使用箇所(地中埋設、屋外露出、屋内配管)、水温条件、水圧条件、メンテナンス性、コストなどを総合的に判断する必要があります。近年は環境意識の高まりから、持続可能な素材としての樹脂管への期待が高まっています。
給水設備で使用されるポンプには、揚水ポンプ、加圧ポンプ、増圧ポンプの3種類があり、それぞれ異なる用途で使用されます。これらのポンプは建物の給水方式や規模によって適切に選択され、安定した給水を実現するための重要な機器です。
参考)https://www.hamashima-setsubi.co.jp/column/865/
揚水ポンプは、受水槽に貯めた水を建物の屋上に設置された高置水槽まで汲み上げるためのポンプです。高置水槽方式を採用している大型マンションやビルで使用され、定期的に高置水槽に水を送り込む役割を果たします。揚水ポンプには制御盤が別に設置されているケースが多く、水位センサーと連動して自動的に運転・停止を行います。
参考)https://anabuki-m.jp/owners/47377/
加圧ポンプは、受水槽に貯めた水を各部屋に直接給水するためのポンプで、受水槽方式の中でも加圧給水方式(ポンプ直送方式)で使用されます。受水槽から各戸へ水を圧送する方式で、中規模から大規模のマンションで広く採用されています。加圧ポンプは水の使用量に応じて圧力を調整し、安定した給水圧を維持します。
参考)https://minatopump.co.jp/faq/14242/
増圧ポンプは、水道本管から引き込んだ水に直接圧力を加えて各部屋に給水するためのポンプです。受水槽を使用せず、配水管と直接連結して圧力を高める方式で、中規模のマンションに多く見られます。増圧ポンプと加圧ポンプの主な違いは受水槽の有無で、増圧ポンプは受水槽を使わない直結増圧方式に使用されます。
給水設備の適切なメンテナンスと管理は、建物利用者に安全で衛生的な水を供給し続けるために不可欠です。定期的な保守点検により、機器の故障を未然に防ぎ、突発的事故や経年劣化による急激な性能低下を防止することができます。建築基準法では、建物の規模により給水設備は毎年、排水設備は2年に1回の点検が義務付けられています。
参考)https://yksg.co.jp/kyuusui/
受水槽や高置水槽を使用する給水方式では、年1回の清掃が法律で義務付けられています。貯水槽清掃では、まず槽内の水を排水した後、高圧水やブラシを使って隅々まで汚れを洗い流し、消毒を行います。清掃を怠ると、水質劣化やホコリ、虫などによる衛生上の問題が発生する可能性があります。また、水質検査も年1回実施し、残留塩素の測定は週1回、水の色・濁り・臭い・味のチェックは毎日行うことが推奨されています。
参考)https://www.city.kagoshima.lg.jp/suido/soumu/kyuhaisui/gesuido/shikumi/kyusuihoshiki.html
給水ポンプの点検も重要なメンテナンス項目です。ポンプの異音、振動、水圧の変化などを定期的にチェックし、必要に応じて分解整備や部品交換を行います。配管についても、目視で錆や歪み、漏水などの異常がないか確認し、バルブやジョイント部分からの水漏れをチェックすることが大切です。
参考)https://www.amcon.co.jp/useful/use-maintenance/6532/
直結増圧方式の場合でも、増圧ポンプの定期点検が必要です。受水槽方式に比べてメンテナンス項目は少ないものの、ポンプの性能維持と機器の長寿命化のために、専門業者による年1回の点検が推奨されます。適切なメンテナンスを行うことで、設備の耐用年数を延ばし、長期的なコスト削減にもつながります。
参考)https://tochino.co.jp/article/1962