
根入れ深さとは、地盤面(GL)から基礎の底面までの距離を指し、建築物の安定性を確保するための重要な設計要素です 。この深さは捨てコンクリートや割栗石の厚さは含まず、基礎底版の下端までの純粋な埋込み深さのみを計測します 。
参考)https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016amp;wid=30048amp;wdid=01
根入れ深さが浅いと、地震時や台風時に構造物が移動・転倒する恐れがあるため、建築基準法では基礎の種類に応じて最低限の深さが規定されています 。また、寒冷地では土中の水分が凍結する際の体積膨張により、基礎が持ち上げられる凍上現象を防ぐためにも、適切な根入れ深さの確保が不可欠です 。
参考)根入れ深さ - Wikipedia
建築基準法施行令第38条および平成12年建設省告示第1347号により、基礎の根入れ深さは以下のように定められています 。
参考)https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006441.pdf
布基礎の場合:根入れ深さは240mm以上が必要です。布基礎は線で建物を支える構造であるため、より深い根入れによって安定性を確保する必要があります 。
参考)ベタ基礎ってどんな基礎?メリットデメリットや布基礎との比較を…
ベタ基礎の場合:根入れ深さは120mm以上が必要です。ベタ基礎は面で建物を支える構造であり、荷重が分散されるため、布基礎よりも浅い根入れでも十分な安定性を得られます 。
参考)基礎が大事!布基礎とベタ基礎 力強く支えてくれるのはどっち?
これらの規定は最低限の基準であり、実際の設計では地盤条件や構造物の特性を考慮して、より深い根入れを設定することも多くあります 。
参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/681691.pdf
建築基準法では、根入れ深さは「凍結深度よりも深いものとすること」が規定されており、これは凍上被害を防ぐための重要な要件です 。
参考)べた基礎とは|建築基準法による設計基準・メリットとデメリット…
凍結深度とは、地面が凍結する深さのことで、土中の水分が氷点下で凍結する深度を示します 。水が氷に変わる際の体積膨張は約9%に達し、この膨張力によって基礎が押し上げられ、建物の不同沈下や構造的な損傷を引き起こす可能性があります 。
参考)寒冷地に建つ建物を設計する際の注意点について href="https://an-sd.jp/%E5%AF%92%E5%86%B7%E5%9C%B0%E3%81%AB%E5%BB%BA%E3%81%A4%E5%BB%BA%E7%89%A9%E3%82%92%E8%A8%AD%E8%A8%88%E3%81%99%E3%82%8B%E9%9A%9B%E3%81%AE%E6%B3%A8%E6%84%8F%E7%82%B9%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/" target="_blank">https://an-sd.jp/%E5%AF%92%E5%86%B7%E5%9C%B0%E3%81%AB%E5%BB%BA%E3%81%A4%E5%BB%BA%E7%89%A9%E3%82%92%E8%A8%AD%E8%A8%88%E3%81%99%E3%82%8B%E9%9A%9B%E3%81%AE%E6%B3%A8%E6%84%8F%E7%82%B9%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/amp;#8211;…
各地域の凍結深度は、標高、気象条件、地形、地質、地下水位、積雪量などの要因により異なるため、建設地の行政機関が定める凍結深度を確認する必要があります 。北海道では凍結深度が60cm以上となる地域も多く、一部では100cm近い深度となる場合もあります 。
参考)凍結深度と建築物の基礎の設計 - 福島県ホームページ
施工現場では、根入れ深さと根切り深さの違いを正確に理解することが重要です。根切り深さは掘削底面までの深さを指し、根入れ深さに捨てコンクリートや割栗石の厚さ(通常約150mm)を加えた深度となります 。
参考)根切りとは(深さと種類)【住宅建築用語の意味】
地盤改良工事を行う場合、改良体の設計では根入れ効果による支持力の割増し係数(κ=1+0.3・Df'/Be)が適用され、根入れ深さが深いほど高い支持力を得られます 。ただし、根入れ深さを深くすると土留め工事が必要となり、施工費用が増加するため、経済性と安全性のバランスを考慮した設計が求められます 。
参考)根入れ深さってなに?1分でわかる意味と直接基礎との関係
寒冷地での施工では、凍結深度を十分考慮した根入れ深さの確保が必要で、設計者の責任において安全な建築物を設計することが義務付けられています 。また、現場条件によっては、予期せぬ地盤状況が発見されることもあるため、施工中の確実な確認と記録が不可欠です 。
参考)擁壁の根入れ深さ基準と設計時の注意点
軟弱地盤や特殊な地盤条件では、標準的な根入れ深さだけでは十分な支持力が得られない場合があります。このような場合には、地盤改良工事や杭基礎の採用など、追加的な対策が必要となります 。
参考)施工について|全国FL工業会
擁壁工事における根入れ深さは、基礎地盤の内部摩擦角によって異なり、内部摩擦角30度以上の場合は擁壁高さの15%以上かつ35cm以上、30度未満の場合は20%以上かつ45cm以上が必要です 。
建築業従事者として重要なのは、会計検査院による指摘事例にもあるように、根入れ深さ不足は重大な問題となることです。特に公共工事においては、基準に準拠した設計・施工が厳しく求められるため、根入れ深さの確保は確実にチェックすべき重要なポイントとなります 。
現場では完成後に目視確認できない根入れ部分の施工品質管理が重要で、設計者と施工者の密な連携により、基準を遵守した適切な根入れ深さの確保を実現する必要があります。