根切り掘削の違いと工法種類から安全対策まで

根切り掘削の違いと工法種類から安全対策まで

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根切り掘削の違いと工法種類

この記事で分かる3つのポイント
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根切りと掘削の違い

基礎工事における根切りと一般的な掘削作業の定義と使い分けを理解できます

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3種類の根切り工法

布掘り・つぼ掘り・総掘りそれぞれの特徴と適切な選定基準が分かります

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安全対策と注意点

山留め工事や床付けの重要性、現場での実践的な安全管理手法を習得できます

根切りと掘削の基本的な違い

根切りとは、建物の基礎や地下構造を作るために地盤を所定の深さまで掘削する土木工事の一種です。一方、掘削は地面を掘る作業全般を指す広義の用語で、トンネル工事や井戸掘削、地盤改良など多様な目的で実施されます。根切りは基礎工事に特化した掘削作業であり、建築物の安全性を確保するために正確な深さと水平度が求められる点が特徴的です。
参考)根切り工事って何?工事の種類やチェックポイントについて詳しく…

根切りという名称は、土地を掘る際に植物の根を切ることに由来しています。建設現場では「ねじり」と読み、基礎コンクリートを打設できる状態にすることを主目的としています。掘削深さが不適切だと建物の構造的安全性や耐震性に悪影響を及ぼすため、設計図に基づいた正確な施工が不可欠です。
参考)根切り(ねぎり)とは?解体工事や建設工事の際に行う基礎工事を…

根切り工事では主にバックホウなどの重機を使用しますが、大量の残土が発生するため、ダンプカーで別の場所へ運搬・処分する必要があります。広い敷地では敷地内処理も可能ですが、一般的には残土処理費用が工事コスト全体に大きく影響します。掘削工事全般では、ロータリー掘削、泥水掘削、エア掘削など、目的や地層条件に応じた多様な工法が存在します。
参考)‐土木工事の根切り(ねぎり)工事とは?3つの工法・注意点‐

根切り工法の種類と選定基準

根切り工事には「布掘り」「つぼ掘り」「総掘り」の3種類があり、基礎形式や建物規模に応じて適切な工法を選定します。布掘りは布基礎や基礎梁の位置部分のみを連続的に細長く掘削する工法で、建物の壁に合わせて溝状に掘り下げます。掘削面積が限定されるため残土量が少なく、コスト面で有利ですが、降雨時には崩壊防止のための養生や土留めが必要です。
参考)土木工事の根切り・山留め・埋戻しとは?工法の種類と特徴

つぼ掘りは独立基礎を採用する際に用いられる工法で、柱などの独立した基礎部分のみを掘削します。柱の寸法を計測し形状に合わせて掘り進めるため、各つぼ掘りが独立して存在するのが特徴です。ピットがない場合などに多く採用され、実際の現場では頻繁に用いられる工法です。
参考)総掘りとは?建物の土工事の種類を解説

総掘りはベタ基礎の底板下を全て掘り返す工法で、建物の基礎全体が入るように床付け面まで掘り下げます。ベタ掘りとも呼ばれ、工程は比較的シンプルですが、搬出残土が最も多いため残土処理に時間・手間・コストがかかります。現場では必要に応じてこれら3つの工法を組み合わせて施工することもあります。
参考)総堀り?布掘り?つぼ掘り?土工事の掘り方・種類

根切り深さと床付けの重要性

根切り深さとは、GL(地盤面)から根切り底までの距離を指し、基礎の種類によって必要な深さが変わります。掘削によって作られた底の水平面を「根切り底」と呼び、この面の平滑性が基礎工事の品質を左右します。根切り底に凹凸があったり深く掘りすぎたりすると、建物の強度や耐震性に直接影響するため、適切な深さに調整する必要があります。
参考)根切りと床付けの違い href="https://www.higashionna.co.jp/%E6%A0%B9%E5%88%87%E3%82%8A%E3%81%A8%E5%BA%8A%E4%BB%98%E3%81%91%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84/" target="_blank">https://www.higashionna.co.jp/%E6%A0%B9%E5%88%87%E3%82%8A%E3%81%A8%E5%BA%8A%E4%BB%98%E3%81%91%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84/amp;#8211; 株式会社東恩納組

床付けとは、根切り深さに到達した後に掘削面を水平に揃える作業です。重機による掘削では水平に均すことや丁寧に掘ることが難しいため、所定深さより少し上まで重機で掘削し、その後は手掘りや小型重機で作業を進めます。一度掘った土は柔らかくなり作業しづらくなるため、転圧をして水平にする作業が床付けの重要な工程となります。
参考)建設工事の中で行う床付けとはどのような作業?

床付け面が平滑でないと砕石や捨てコンクリートを水平に打つことができず、基礎の高さなどに影響を及ぼします。床付け面には砕石を敷き、捨てコンクリートを打設してその上に建物を設置するため、監理者は設計図書と同じであるか確認する必要があります。地盤がかく乱されていた場合には、自然地盤と同等以上の強度となるよう適切な処置を講じることが求められます。
参考)ConCom

根切りと床付けの違いについて詳しく解説している現場事例

根切り工事における山留めと法面保護

山留めとは、地盤を掘削する際に周囲の地盤が崩れないように、また建物が倒れないようにする構造物のことです。一般的に根切り深さが1.5m以上になると山留めの設置が必要とされ、深さ3mを超える根切り工事では施工計画概要書の提出が義務付けられています。山留めは「山留め壁」と「支保工」から構成され、地盤状況により工法が変わりますが、通常は1.5m以上から30m程度以浅で必要とされます。
参考)https://taikou-kogyo.co.jp/y_knowledge/

山留め工法には複数の種類があり、堅い地盤では地山自立工法、土質条件に応じてオープンカット工法、法付けオープンカット工法などが選択されます。深い掘削では山留め壁を用いた工法や支保工を併用した工法、バックアンカーを併用した工法が採用されます。法面全体の安定をグラウンドアンカーで保つ構造も存在し、最大掘削深さ23mの事例も報告されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiban/JGS38/0/JGS38_0_1663/_pdf

根切り工事を行う場合、地下に埋設されたガス管・ケーブル・水道管・下水道管の損壊による危害防止措置を事前に講じる必要があります。建築物や工作物に近接して掘削を行う場合は、基礎または地盤を補強して構造耐力の低下を防止し、急激な排水を避けるなど傾斜・倒壊による危害防止措置が求められます。地階の根切り工事は、地盤調査による地層および地下水の状況に応じて作成した施工図に基づいて行う必要があります。
参考)https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/topics/r04/pdf/021_siryou_03.pdf

川崎市による根切り・山留め工事の安全対策に関する注意喚起

根切り工事の安全管理と実践的な対策

近年、局地的な大雨が多発していることから、工事中のがけ崩落のような災害が発生する可能性が高まっています。根切り・山留め工事では、建築等の工事中に点検を実施し、山留めの補強や排水を適切に行うなど安全確保に注意を払う必要があります。特に局地的な大雨が予想される際には、周辺の安全確認と対策強化が不可欠です。
参考)川崎市 : 根切り、山留め工事の安全対策について(注意喚起)

工事現場では排水計画が重要で、湧き水だけでなく雨水も排水溝で排水枡(釜場)に集め、水中ポンプで場外に排出します。泥や砂が混じっている場合は、放流先に流れないよう沈砂槽(ノッチタンク)を設けて沈殿させてから排出する必要があります。冬季には根切り底の凍結が起こらないよう対処し、寒冷地では凍結深度よりも根入れ深さが取れるよう掘削することが求められます。
参考)根切りとは(深さと種類)【住宅建築用語の意味】

重機の運用では、安全作業スペースの確保と注意事項の再確認を作業開始前に実施します。周囲の安全確認を常に行いながら積込み・運搬作業を繰り返し、最後の積込み時には地面に土が残らないよう手作業で丁寧に片付けることが重要です。現場で作業する方をはじめ、事業主・建築主は近隣居住者や通行人に危害を与えることのないよう、工事現場内外の安全確保に努める必要があります。
参考)工場内の残土撤去工事 - 共進建機共進建機

安全対策項目 具体的な内容 実施タイミング
埋設物確認 ガス管・ケーブル・水道管・下水道管の位置確認と損壊防止措置 工事着手前
山留め設置 深さ1.5m以上の根切りで周辺状況を考慮し設置 掘削開始前
排水管理 排水溝・排水枡・沈砂槽の設置と水中ポンプによる排出 工事期間中
床付け確認 平滑性の確認と地盤のかく乱状態チェック 根切り完了時
降雨対策 大雨予想時の補強・点検強化と崩落防止措置 天候変化時

東京都による工事現場の危害防止に関する規定と工事安全の工夫等についての資料(PDF)