

ネットワーク機器の耐用年数を決めるとき、最初に押さえるべきは「国税庁が示す耐用年数は、機器名そのものよりも“資産の種類・用途・細目”で決まる」という点です。国税庁の質疑応答では、LAN設備を構成する資産を個別に見た場合の耐用年数例が表で示され、サーバー、ハブ、ルーター、ケーブル、ソフトウエアなどが別々に扱われています。
特に建築従事者(設計・施工・保全)にとって実務影響が大きいのは、ネットワークが「弱電設備」的に一式で発注・施工されやすい一方で、税務上は“一式=一つの資産”にならないケースが多いことです。国税庁の考え方では、技術革新や部分更新の頻発により、LAN設備全体を一律年数で償却する前提が崩れたことが、旧取扱いが廃止された理由として説明されています。
つまり、図面上で「LAN設備一式」と表現していても、税務処理は「サーバー」「ルーター類」「配線(建物附属設備)」「ソフト(無形)」に分解される可能性が高い、という発想が起点になります。ここを外すと、見積の内訳、引渡し資料、資産台帳の作り方が後工程で破綻しがちです。
また、耐用年数は節税テクニック以前に「会計と税務の説明責任」の論点でもあります。監査や税務調査の局面では、“どう分類したか”の根拠が問われやすく、国税庁の一次情報に沿う整理が安全策になります。
参考リンク(LAN設備を構成する機器・ケーブル等の耐用年数例と、旧取扱い廃止理由、経過的取扱いの考え方がまとまっています)
国税庁:LAN設備の耐用年数の取扱いに関する質疑応答
国税庁の質疑応答で示されている「個々の減価償却資産ごとの耐用年数(おおむね)」は、現場の機器選定・更新周期の議論にも直結します。代表例は次のとおりです(同じLANでも資産の区分が違う点に注目してください)。
✅ 代表的な耐用年数の目安(国税庁の例)
この並びを見ると、「機器は器具及び備品」「配線は建物附属設備」「ソフトは無形」という三分割が見えてきます。建築・設備の立場で言えば、同じ工事の中に“建物側資産”と“什器側資産”と“無形資産”が混ざるのがLANの特徴です。
意外に見落としやすいのが、ケーブルが一律に建物附属設備に固定されるわけではない点です。国税庁は、建物内に敷設され建物と一体不可分なものを除き、単に各機器を接続するだけのものは「接続する機器の附属品」として、その機器の耐用年数を適用してよい、という考え方を示しています。ここは、施工方法(露出配線か、隠ぺいか、配線ラック・配管で固定されるか)や、更新のしやすさ(機器更改と同時に抜き替える運用か)といった“現場の実態”が税務判断の材料になり得る、少し珍しい論点です。
建築プロジェクトでの実務対応としては、「ケーブルが建物附属設備に寄る根拠(建物と一体不可分)」または「附属品に寄る根拠(単なる接続材)」を、竣工図・写真・機器リストとセットで説明できる状態にしておくと、後日の資産計上が安定します。
ネットワーク工事は、発注・施工・検収の流れが「一式」で進むことが多く、資産計上も一括でやりたくなります。しかし国税庁の説明では、LAN設備の耐用年数を“全体で6年”とする旧取扱い(旧通達)の前提が、技術革新による部分更新の一般化などで崩れたため廃止された、とされています。
それでも“昔の案件”が存在するのが建築・設備の世界です。国税庁は、従前から旧取扱いに基づいてLAN設備全体を一つの減価償却資産として償却している法人について、従前に取得したLAN設備は引き続き6年で償却することを認める、という経過的取扱いに触れています。つまり、設計・施工側が保全・更新に関わる建物では、「過去の資産計上の方法」に合わせて更新計画や見積内訳を調整したほうが、経理・税務の混乱が少ない場合があります。
ここで重要なのは、“今の工事”をどうするかです。部分更新が前提の現代LANでは、例えば「スイッチだけ更改」「無線APだけ増設」「光ケーブルは据置で機器だけ更新」が普通に起こります。このとき、最初から資産を分けておけば、更新時の除却(廃棄)や資産の付け替えが合理的になり、設備管理(更新履歴の追跡)もやりやすくなります。
逆に、全体一式で資産化していると、機器単体の廃棄が会計上の除却として表現しづらくなり、結果として「現場では機器が変わっているのに台帳では残っている」状態が起きがちです。建築従事者としては、税務のためというより、BIM/台帳/保全をつなぐための設計として“最初から分解する”方針を提案できると、プロジェクト全体の品質が上がります。
参考リンク(LAN設備を一括6年としていた旧取扱いの廃止理由と、経過的取扱い、弾力的運用に触れています)
国税庁:LAN設備の耐用年数の取扱いに関する質疑応答
建築・設備の実務でいちばん揉めやすいのは、「ネットワーク配線やラック、配管・配線ルートが建物附属設備なのか、それとも機器側(器具及び備品)の範囲なのか」という境界線です。国税庁の質疑応答では、耐用年数表にいう建物附属設備とは“建物の居住性の維持等のために建物本体に施設されるもの”と説明したうえで、LANの伝送媒体でも「建物内に敷設され建物と一体不可分なもの」は建物附属設備に寄る、という整理が読み取れます。
一方で、同じ質疑応答の中に「単に各機器を接続するだけのもの」は、その接続する機器の附属品として機器の耐用年数を適用してよい、という考え方が明示されています。ここが“建築従事者が現場写真で説明できる税務論点”になり得る部分です。例えば、次のような視点で整理すると、社内説明が通りやすくなります。
🏗️ 建物附属設備に寄りやすい例(説明が立てやすい)
🧰 機器の附属品に寄せやすい例(状況次第で合理化できる)
ここでの“意外なポイント”は、税務が施工の実態(更新頻度、撤去の容易性、建物との一体性)に寄ってくる可能性があることです。つまり、建築側で「更新可能な構成(モジュール化、ラック内で完結、露出配線、将来更新余地)」を意図して設計・施工しておくと、設備のライフサイクル管理だけでなく、資産区分の説明もしやすくなる場合があります。
さらに、発注形態にも注意が必要です。建築一式にLANが含まれるのか、別途工事なのか、機器購入と工事が同一契約なのかで、社内の資産計上のフローが分断されやすいので、引渡し時に「機器リスト」「配線区分」「ソフト有無」を一枚にまとめた引渡し資料を作ると、経理側が迷いません。
検索上位の多くは「耐用年数は何年か」という答えに寄りますが、建築従事者向けに一段深掘りすると、耐用年数は“更新設計の方針”を決めるための入力情報になります。国税庁の例では、ツイストペア等が18年、光が10年、ルーター類が10年、サーバーが6年、ソフトが5年と、同じネットワークでも寿命がバラけています。これをそのまま現場の更新周期に当てはめる必要はないものの、「更新が先に来やすい部分(サーバー/ソフト)」と「残しやすい部分(幹線ケーブル等)」を分けて設計する合理性が見えてきます。
そこで独自視点として提案したいのが、ネットワークを“建築の長寿命部材”と“ITの短寿命部材”に分離する設計・発注・引渡しの型です。具体的には次のような整理です。
🧱 長寿命側(建物附属設備寄り)を先に整える
🖥️ 短寿命側(器具及び備品/無形)を交換しやすくする
この考え方のメリットは、工事費の議論が「全体一式の金額」から「どこを残して、どこを替えるか」に移ることです。結果として、更新時のコストだけでなく、停止時間(テナント影響)や、改修時の粉じん・騒音リスクも抑えやすくなります。
税務の観点でも、国税庁が示すようにLANは本来“個々の減価償却資産ごと”の色が濃い領域です。設計段階で分離しておけば、資産台帳も分離され、更新時の除却・新規計上が自然になり、保全履歴(いつ何を替えたか)も残ります。建築従事者の価値は、単に機器を並べることではなく、こうした「更新できる建物」に落とし込むことにあります。