
オーガー併用プレボーリングドロップハンマー工法は、既製コンクリート杭の施工において、事前に孔を掘削してから杭を建て込み、最終的に打撃によって支持層まで打ち込む複合的な施工方法です。この工法は、従来の打撃工法とプレボーリング工法の利点を組み合わせた技術として、建設業界で広く採用されています。
工法の最大の特徴は、支持層手前までアースオーガーで事前掘削を行うことで、打撃回数や騒音・振動を大幅に低減できる点にあります。特に都市部の建設現場では、周辺環境への配慮が重要な課題となっており、この工法は環境負荷軽減の有効な解決策として注目されています。
施工対象となる杭径は、一般的にφ300~φ800mmの範囲で適用可能で、砂質地盤、礫質地盤、粘土質地盤のいずれにも対応できます。施工可能深度は地盤面から60mまでとされており、中高層建築物の基礎工事に幅広く活用されています。
工費の面では、従来の打撃工法と比較して初期コストは若干高くなりますが、施工期間の短縮や騒音対策費用の削減により、総合的なコストパフォーマンスは優れています。また、故障が少なく、現場条件に応じて臨機応変に対応できる柔軟性も大きなメリットとなっています。
ドロップハンマー工法は、打撃工法とも呼ばれる基礎工事の中核技術で、重錘(ハンマー)をウインチで巻き上げて自由落下させ、杭頭を打撃することで杭を地中に貫入させる仕組みです。この工法では、重錘の重量選定が施工品質に直接影響するため、適切な基準に基づいた設計が重要になります。
重錘の重量選定基準として、以下の2つの条件が設定されています。
この基準により、効率的な打撃エネルギーの伝達が可能となり、杭の貫入性能が最大化されます。実際の施工では、地盤条件や杭の材質に応じて、重量の大きなハンマーを小さいストロークで使用し、打撃回数を多くするなど、現場に応じた調整が行われます。
ドロップハンマー工法の技術的な課題として、偏心しやすいという短所があります。これは重錘の落下時に杭頭に対して正確に垂直に打撃することが困難な場合があるためです。この問題を解決するため、最新の施工機械では、ガイド機能の強化や打撃位置の自動調整機能が搭載されています。
施工管理では、打撃エネルギーの測定と記録が重要な品質管理項目となります。1回の打撃による貫入量(打ち込み量)を正確に測定し、設計で想定された支持力が発現されているかを確認する必要があります。
プレボーリング作業は、オーガー併用プレボーリングドロップハンマー工法の成功を左右する重要な工程です。アースオーガーを使用して支持層手前まで事前掘削を行うこの作業では、正確な施工手順と細心の注意が求められます。
施工手順は以下の段階で進められます。
掘削準備段階
掘削作業段階
杭建て込み準備段階
プレボーリング作業で特に注意すべき点は、掘削径の管理です。掘削径が大きすぎると杭周面の摩擦力が低下し、小さすぎると杭の建て込みが困難になります。また、地下水位が高い現場では、掘削液や安定液の使用による孔壁保護が必要になる場合があります。
施工中の品質管理では、掘削深度の正確な測定と記録が重要です。設計で指定された支持層到達深度まで正確に掘削されているか、GPS測量機器や深度計を用いて継続的に監視する必要があります。
オーガー併用プレボーリングドロップハンマー工法の最大の利点の一つは、騒音・振動の大幅な低減効果です。都市部の建設現場では、周辺住民への影響を最小限に抑えることが法的にも社会的にも重要な課題となっており、この工法はそのニーズに応える技術として高く評価されています。
騒音低減の仕組みは、事前のプレボーリングにより杭の打撃回数を大幅に削減できることにあります。従来の打撃工法では、杭全長にわたって連続的な打撃が必要でしたが、この工法では支持層付近のみの打撃で済むため、騒音レベルを30-40%程度低減することが可能です。
振動対策の効果も同様に顕著で、地盤への衝撃が大幅に軽減されるため、近隣建物への影響を最小限に抑えることができます。特に以下のような現場条件では、その効果が最大限に発揮されます。
適用場面としては、中・小径杭での硬い中間層の貫通が必要な現場で特に有効です。従来工法では貫通困難な地層も、プレボーリングにより効率的に処理できるため、施工期間の短縮と品質向上の両立が可能になります。
環境アセスメントの観点からも、この工法は高く評価されており、建設業界のSDGs達成に向けた取り組みの一環として注目されています。
オーガー併用プレボーリングドロップハンマー工法の施工管理では、従来の単一工法とは異なる複合的な管理体制が必要となります。プレボーリング段階とドロップハンマー段階の両方で適切な品質管理を行うことが、工事の成功に直結します。
施工管理の重要ポイント
品質管理では、各工程での詳細な記録と検査が不可欠です。プレボーリング段階では掘削径、深度、土質の確認を行い、ドロップハンマー段階では打撃回数、貫入量、最終打撃時の打ち止め管理を実施します。特に杭径が700mm以上の大径杭では施工実績が少ないため、より慎重な管理が求められます。
工程管理では、天候や機械トラブルによる遅延リスクを最小化するため、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。また、複数の工程が連続するため、各段階の連携を密にし、待機時間を最小限に抑える効率的な作業計画が必要になります。
よくあるトラブルと対応策
掘削孔の崩壊は最も深刻なトラブルの一つです。地下水位が高い現場や軟弱地盤では、安定液の注入や鋼製ケーシングの使用により孔壁を保護します。また、掘削完了から杭建て込みまでの時間を短縮することで、崩壊リスクを低減できます。
杭の傾斜や偏心は、ドロップハンマー工法特有の課題です。これを防ぐため、杭建て込み時の鉛直性確認を徹底し、打撃開始前に杭頭の位置調整を入念に行います。最新の施工機械では、自動制御システムによる精度向上が図られています。
機械トラブルへの対応では、予備機の確保と定期メンテナンスの徹底が重要です。特にオーガーヘッドの摩耗やウインチシステムの不具合は施工に大きな影響を与えるため、日常点検と早期交換による予防保全を実施します。
施工データの電子化による管理効率向上も近年の重要なトレンドです。IoT技術を活用した自動計測システムにより、リアルタイムでの施工状況把握と品質管理の高度化が進んでいます。