
オイルシール規格は2013年に大幅な改正が行われ、JIS B2402が3部構成となりました。第1部では寸法及び公差、第2部では用語、第3部では保管・取扱い・設置について規定されています。
最新のJIS B2402-1:2013では、軸径6〜480mm及びハウジング内径16〜530mmの範囲に適合したばね入り回転軸用オイルシールの寸法及び公差について詳細に規定しています。これまでの旧規格と比較して、国際規格との整合性が図られ、ISO規格との対応関係も明確に示されるようになりました。
改正により新たに追加された構造分類として、タイプ1から6までの6つの基本構造が規定されました。タイプ1はばね入り外周ゴム、タイプ2はばね入り外周金属、タイプ3はばね入り組立形外周金属という具合に、より詳細で実用的な分類となっています。
JIS B2402規格では、オイルシールの構造によって6つのタイプに分類されています。各タイプは以下のような特徴を持ちます:
・タイプ1(ばね入り外周ゴム):最も一般的な構造で、外周ゴムによりハウジングとの密封性を確保します
・タイプ2(ばね入り外周金属):外周金属により高い強度を持ち、高荷重条件で使用されます
・タイプ3(ばね入り組立形外周金属):組立形により大型寸法に対応可能です
・タイプ4〜6:保護リップ付き構造で、外部からの異物進入を防止する機能を持ちます
各メーカーの型式対照表では、NOKのSC型がタイプ1に対応し、SB型がタイプ2、TC型がタイプ4に対応するなど、規格と実際の製品が明確に対応付けられています。
オイルシールのリップ部材質選定は、使用温度範囲と対象流体により決定されます。汎用ゴム材質(ニトリルゴム)は-30℃から+100℃の温度範囲で使用でき、鉱物油に対して優れた耐性を示します。
高機能材質としては、フッ素ゴム系が-20℃から+230℃という広い温度範囲で使用可能で、耐油性や耐薬品性に優れています。特にパーフルオロエラストマー(FFKM)は0℃から+230℃の温度範囲で、ほぼ全ての流体に対する耐性を備えています。
バネ材質についても重要な選定要素です。標準材質のSW(硬鋼線)やSWP(ピアノ線)は一般的な潤滑油やグリスに対応しますが、水や腐食性の高い薬液にはSUS316などの専用材質が必要です。金属環材質も同様に、標準のSPCCやSPHCから、特殊用途にはSUS304やSUS316を選択します。
JIS B2402規格では、オイルシールの各部寸法に対する厳格な公差が規定されています。軸径公差は±0.05mm、ハウジング内径公差は+0.1/0mmといった具体的数値により品質の均一化が図られています。
ハウジング穴の表面粗さについても明確な規定があり、外周金属タイプでは0.4〜1.6μmRa、外周ゴムタイプでは1.6〜3.2μmRaの範囲が推奨されています。この表面粗さ管理により、オイルシールとハウジングの密着性が確保され、漏れの発生を防止できます。
NOKをはじめとする主要メーカーは、ISO9001認証を取得し、国際品質規格に準拠した製品を提供しています。これにより、建築機械用途においても安定した性能と長期信頼性が保証されています。
近年のオイルシール技術では、従来の一方向回転シールから双方向回転対応への進化が注目されています。電動化が進む建築機械において、モーターの正逆回転に対応するシール技術は重要性を増しています。
密封理論の観点では、オイルシールのリップ部と軸の隙間に形成される微細油膜の挙動解析が進歩しています。この油膜厚さは通常0.5〜5μmという極薄の範囲で制御され、レイノルズ方程式による流体力学的解析により最適化されています。
建築事業者にとって特に重要なのは、過酷な使用環境に対応する新材料の開発です。例えば、HVO(水素化植物油)燃料に対応するエラストマー材質の開発や、極低温から高温まで対応する新しいフッ素ゴム配合の実用化が進んでいます。
桜シール株式会社のオイルシール技術資料 - 各種材質の特性と選定指針について詳細な技術情報が掲載されています
JIS B2402-1:2013規格書 - オイルシールの寸法及び公差に関する最新の技術基準が確認できます