硫化鉛化学式と方鉛鉱の性質および用途

硫化鉛化学式と方鉛鉱の性質および用途

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硫化鉛の化学式と基本特性

この記事で分かること
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硫化鉛の化学式と構造

PbSの化学組成と塩化ナトリウム型結晶構造の特徴を解説

半導体としての性質

光電池や赤外線検出器への応用と光起電力効果について説明

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鉛製錬と建設への影響

方鉛鉱からの金属鉛製造プロセスと環境リスクを紹介

硫化鉛の化学式PbSの組成

 

 

 

硫化鉛は化学式PbSで表される無機化合物で、鉛イオン(Pb²⁺)と硫化物イオン(S²⁻)が1対1で結合したイオン結晶です。分子量は239.27で、天然には方鉛鉱(galena)として産出します。鉛(II)化合物の水溶液に硫化水素を通じると、黒色の沈殿として得られる反応が特徴的です。この反応の平衡定数は3×10⁶mol/Lであり、無色や白色から黒色への劇的な色の変化を伴うため、定性無機分析に用いられてきました。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%AB%E5%8C%96%E9%89%9B(II)

硫化鉛は等軸晶系で、塩化ナトリウム型の結晶構造を持ちます。配位構造は正八面体型で、格子定数はa=5.936Åです。融点は1114℃、密度は7.59g/cm³であり、水にはほとんど不溶で、水100gに対する溶解度は18℃で8.6×10⁻⁵g程度です。希塩酸や希硫酸にはほとんど溶けませんが、硝酸には溶解する性質があります。
参考)https://kotobank.jp/word/%E7%A1%AB%E5%8C%96%E9%89%9B-1215830

硫化鉛の結晶構造と方鉛鉱の特性

方鉛鉱は硫化鉱物の一種で、モース硬度2.5、比重7.5~7.6という軟らかく重い鉱物です。色は銀白色で、新鮮なものは強い金属光沢を示しますが、雨などに晒されると表面が硫酸鉛鉱(PbSO₄)に変化するため、光沢が失われます。完全な劈開を持つため、割るとさいころのように立方体の形に割れることが特徴的です。結晶は多くの場合六面体ですが、まれに八面体結晶も観察されます。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B9%E9%89%9B%E9%89%B1

日本国内では神岡鉱山、豊羽鉱山、花岡鉱山、小坂鉱山などの鉛・亜鉛鉱山で主要鉱石として採掘されていましたが、現在では日本国内で鉛を採掘する鉱山は全て閉山しています。海外ではアメリカ合衆国、オーストラリア、ボリビアなどの生産量が多く、低温から高温の熱水鉱床、スカルン鉱床、黒鉱鉱床に産出します。方鉛鉱はほとんど常に数百ppm程度の銀を含み、銀含有量が多いものは含銀方鉛鉱と呼ばれます。
参考)https://www.weblio.jp/content/%E6%96%B9%E9%89%9B%E9%89%B1

硫化鉛の半導体特性と光電池応用

硫化鉛はテルル化鉛(II)やセレン化鉛(II)と同じく半導体の性質を示し、最も古くから用いられている半導体です。ただしIV-VI族の半導体とは異なり、塩化ナトリウム型の結晶構造を有する点が特徴的です。半導体としての性質により、光起電力効果が著しく、光電池、赤外線検出器、露出計、半導体レーザー結晶材料として用いられています。
参考)https://metoree.com/categories/6701/

硫化鉛のナノ粒子や量子ドットは太陽電池への応用が期待されており、近年では硫化鉛量子ドット太陽電池の研究が進められています。量子ドット太陽電池は集光時の理論効率が60%以上ともいわれる高効率次世代太陽電池として注目されており、幅広い波長の光吸収を行えることと、高いエネルギーの光を熱エネルギーとして損失する前に励起子生成に活用できる点が強みです。硫化鉛量子ドットはサイズによってバンドギャップが調整可能で、高い光吸収を持つ特性があります。
参考)https://www.jst.go.jp/pr/announce/20120626/index.html

硫化鉛からの鉛製錬プロセス

方鉛鉱は鉛の最も重要な鉱石鉱物であり、鉛製錬の主要な原料として化学変換がなされてきました。主なプロセスは精錬であり、生成した酸化物を還元して金属鉛を得ます。焼結―溶鉱炉法では、方鉛鉱を石灰石、シリカ、酸素及び鉛含有スラッジと混合して焙焼することにより、硫黄分及び揮発性金属が除去され、酸化鉛(PbO)が得られます。その際、除去された硫黄由来のSO₂や燃料の天然ガス由来のCO₂が排出されます。
参考)https://www.env.go.jp/content/000274830.pdf

鉛溶錬の原料としては、自溶炉煙灰を湿式処理した硫酸鉛、含銅残渣、鉛精鉱、転炉煙灰、国内外の亜鉛浸出残渣および鉛津類が使用されます。原料のほぼ全量がPbSO₄であるという特徴があるため、電気炉にて原料とコークスおよび鉄粒を添加し、鉛を還元して粗鉛を得る方式が採用されています。二酸化硫黄は硫酸に変換され、環境への配慮がなされています。閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱などと伴って産出し、特に閃亜鉛鉱とは密接に伴って産するため、鉛鉱床と亜鉛鉱床は一括して鉛・亜鉛鉱床と呼ばれることが多いです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai1989/109/12/109_12_983/_pdf

硫化鉛と建設工事における環境リスク

建設工事において自然由来の重金属等を含有する岩石・土壌への対応が重要な課題となっています。岩石・土壌中の重金属等が溶出するものがあり、黄鉄鉱などの硫化鉱物が酸化されると硫酸が生成され、錆汁状の水の発生やのり面植生の劣化、重金属等の溶出を引き起こします。東海環状自動車道の事例では、2000年から2003年にかけて掘削ずり約90万m³を盛土した結果、2003年に下流の溜池で魚の斃死が発生しました。掘削ずり(美濃帯の粘板岩)に含まれる黄鉄鉱の酸化により、酸性水の発生および重金属等の溶出が起こり、溜池の酸性化(pH4.5~4.9)が魚の斃死の原因となりました。
参考)https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/d11pdf/recyclehou/manual/shizenyurai2023.pdf

コンクリートの基礎講座では、黄鉄鉱、白鉄鉱、磁硫鉄鉱などの硫化物がエトリンガイトの生成による膨張や崩壊を引き起こす可能性が指摘されています。建設発生土中の鉛の環境基準は0.01mg/L以下とされており、掘削による重金属等の溶出や酸性水の発生に対する適切な対策が求められています。不動産従事者は、土地の履歴調査や土壌汚染状況調査を通じて、硫化鉱物を含む地質の存在を把握し、建設計画段階から環境リスクへの対応を検討する必要があります。
参考)https://www.pwri.go.jp/jpn/results/tec-info/siryou/showcase/2019/hiroshima/pdf/SC2019_hiroshima03.pdf

 

 

 

 


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