皿ネジザグリ寸法一覧｜加工規格と図面指示の完全ガイド

皿ネジザグリ寸法一覧と加工規格

皿ネジザグリの基本規格と寸法表

皿ネジのザグリ加工は、JIS B 1017:2008「皿頭ねじ用皿穴の形状」で詳細に規定されています。不動産業界では建築金物や設備機器の取り付けで頻繁に使用されるため、正確な寸法把握が施工品質に直結します。

 

以下は実務で最も使用頻度の高いM2からM10までの皿ネジザグリ寸法一覧表です。

ねじの呼び	穴径(mm)	皿径(mm)	皿の深さ(mm)	最小板厚(mm)
M2	2.4	4.4	1.2	1.2以上
M2.5	2.9	5.5	1.35	1.5以上
M3	3.4	6.3	1.75	1.75以上
M4	4.5	8.6	2.3	2.3以上
M5	5.5	10.6	2.8	2.8以上
M6	6.6	12.8	3.4	3.4以上

皿ザグリの円錐角度は90±1°で統一されており、この角度を維持することで皿ネジの頭部が適切に収まります。実際の施工では、皿ビスの皿厚みが板厚を超える場合、ビスが取付けできないため、相手側に面取り加工が必要になることも重要なポイントです。

 

不動産業界では特に、ドアヒンジや窓枠の金物取り付けでM4からM6サイズが多用されるため、これらの寸法は必ず覚えておくべき基本データです。

 

皿ネジ穴径と皿径の計算方法

皿ザグリ加工では、単純に寸法表を参照するだけでなく、実際の加工条件に応じた計算も必要です。特に建設現場で使用する場合、材質や厚みの違いによる調整が求められることがあります。

 

基本的な計算式は以下の通りです。

• 穴径 = ねじの呼び径 + 0.4～0.6mm（余裕代）
• 皿径 = ねじの呼び径 × 約2.1～2.3倍
• 皿の深さ = 皿径 ÷ 2 × tan(45°)

例えばM5皿ネジの場合。

• 穴径：5.0 + 0.5 = 5.5mm
• 皿径：5.0 × 2.12 = 10.6mm
• 皿の深さ：10.6 ÷ 2 × 1.0 = 2.8mm（概算）

この計算方法により、標準規格にない特殊サイズでも対応可能になります。ただし、実務では必ず現物の皿ネジで確認テストを行うことが重要です。

 

板厚との関係では、皿の深さが板厚を超えないよう注意が必要です。例えば厚み2.0mmの鋼板にM4皿ネジ（皿の深さ2.3mm）を使用する場合、皿ザグリ加工により板厚が不足するため、設計段階での検討が必要です。

 

不動産業界でよく使用される軽量鉄骨造の場合、薄板での皿ザグリ加工が多いため、この計算は特に重要になります。

 

皿ネジザグリ加工の図面指示方法

皿ザグリ穴の図面指示は、JIS B 0001:2019「機械製図」で規定されていますが、実務では新JISと旧JISが混在している状況です。不動産業界では加工業者によって対応が異なるため、両方の指示方法を理解しておく必要があります。

 

新JIS（2019年改訂後）の指示方法：

• 皿ザグリ記号：⌐
• 寸法指示：⌐φ8.6×2.3（M4の場合）
• 角度指示：90°（通常は省略可）

旧JISの指示方法：

• 皿ザグリ記号：∪
• 寸法指示：∪8.6×2.3
• 詳細図での断面表示併用

実際の図面作成では以下の情報を必ず記載します。

• ねじの呼び径（例：M4皿ボルト使用）
• 皿径の寸法
• 皿の深さ寸法
• 穴径の寸法
• 材質と表面処理（必要に応じて）

図面指示で注意すべき点は、単に「M4皿ザグリ」と記載するだけでは不十分ということです。加工業者によって解釈が異なる場合があるため、具体的な寸法値を明記することが重要です。

 

また、不動産業界特有の注意点として、建築金物メーカーの独自規格が存在する場合があります。例えば、某大手建材メーカーでは標準JIS寸法より0.1～0.2mm大きめの皿径を推奨している場合があるため、図面には「○○社製金物対応」などの注記を入れることも実務では重要です。

 

皿ネジザグリ設計時の注意点と板厚

皿ザグリ設計で最も重要なのは板厚との関係性です。皿ビスの皿厚みが板厚を超える場合、物理的に取り付けが不可能になるため、設計段階での十分な検討が必要です。

 

板厚別の推奨皿ネジサイズ：

• 板厚1.2～1.5mm：M2まで
• 板厚1.6～2.0mm：M2.5まで
• 板厚2.5～3.0mm：M3まで
• 板厚3.5～4.0mm：M4まで
• 板厚4.5～5.0mm：M5まで
• 板厚6.0mm以上：M6以上

実際の設計では、以下の安全率を考慮します。

1. 構造的安全率：皿底から板裏面まで最低0.5mm以上の余肉確保
2. 加工精度：±0.1～0.2mmの加工公差を見込む
3. 材料公差：板厚の±5～10%程度のばらつきを考慮

不動産業界でよく問題となるのが、リノベーション時の既存構造への皿ザグリ追加です。例えば、既存の鉄骨梁（板厚4.5mm）にM6皿ネジ（皿の深さ3.4mm）でブラケットを取り付ける場合、残り板厚は1.1mmとなり構造的に問題ないか検討が必要です。

 

また、ステンレス材や高張力鋼など特殊材質では、加工時の熱影響により材質変化が生じる可能性があるため、皿ザグリ加工後の材質確認も重要な検討事項です。

 

設計チェックリスト：

• 板厚と皿の深さの関係確認 ✓
• 構造計算での断面欠損考慮 ✓
• 加工公差の設定 ✓
• 材質と加工方法の適合性 ✓
• 防錆・防食処理の指定 ✓

皿ネジザグリ加工コスト削減の実務テクニック

不動産業界では、施工コスト削減が常に課題となります。皿ザグリ加工においても、工夫次第で大幅なコスト削減が可能です。業界ではあまり知られていないテクニックを紹介します。

 

加工効率向上テクニック：

1. 一括加工によるコスト削減

   同一サイズの皿ザグリが複数箇所ある場合、NC加工機での一括処理により単価を30～50%削減可能です。特に100個以上の場合、専用治具作成費を含めても大幅削減になります。

    

2. 標準寸法の活用

   JIS規格寸法を使用することで、加工業者の標準工具が使え、特殊工具費（1本3～5万円）が不要になります。0.1mm程度の寸法調整なら、標準寸法採用による工具費削減効果の方が大きいケースが多数あります。

    

3. 材料選定による加工性向上

   SS400よりもSS490の方が皿ザグリ加工時の切削性が良く、加工時間を15～20%短縮できます。材料費は若干高くなりますが、加工費削減でトータルコスト減になることがあります。

    

発注方法の最適化：

• 図面の詳細化：寸法公差を適切に設定し、過度な精度要求を避ける
• ロット統合：複数現場分をまとめて発注し、セットアップ費を削減
• 加工業者の特性活用：板金業者vs機械加工業者の得意分野を理解した発注

実際の事例では、中規模オフィスビルの改修工事において、皿ザグリ加工部品約200点を従来の個別発注から一括発注に変更し、加工費を約40%削減した実績があります。

 

また、意外に知られていないのが「皿ザグリ加工タイミング」です。溶接前の加工と溶接後の加工では、熱変形の影響で精度と加工難易度が変わります。溶接前加工により精度向上と加工費削減を同時実現できる場合が多いのです。

 

これらのテクニックを組み合わせることで、年間数十万円から数百万円のコスト削減効果を実現している不動産会社も存在します。重要なのは、設計段階からコスト意識を持ち、加工業者との密な連携を図ることです。