
真空フランジは、真空装置において真空チャンバーと真空ポンプや各種真空部品を気密に接続するための重要な構成要素です。日本工業規格(JIS)では、JIS B 2290:1998「真空装置用フランジ」として規格が制定されており、真空技術に使用するフランジおよびカラーの寸法を規定し、異なる組み合わせのフランジに互換性をもたせることを目的としています。
参考)JISB2290:1998 真空装置用フランジ
この規格は国際規格ISO 1609:1998に準拠しており、技術的内容はほぼ同等となっています。建築業界における真空設備や配管システムでは、設備間の接続部分でこの規格フランジが広く採用されており、統一された規格により設計の標準化と施工効率の向上が実現されています。
参考)半導体装置に最適な真空フランジの選定と設計ガイド
JIS規格の真空フランジは、ゴム製Oリングによるシール方式を採用し、繰り返し使用が可能で、高真空領域までの真空容器や継手配管に対応しています。建築現場では特に、空調設備や排気システム、クリーンルームなどの真空関連設備において、信頼性の高い接続方法として重宝されています。
参考)JISフランジ
JIS規格の真空フランジは、主にVG(溝付き)タイプとVF(溝なし)タイプの2種類に分類されます。VGフランジは「Groove(グルーヴ)」を意味し、Oリング溝が加工されているタイプです。一方、VFフランジは「Flat(フラット)」を意味し、シール面が平坦で溝がないタイプとなっています。
参考)Q0401 VFフランジとVGフランジの違いはありますか。違…
これらのフランジは原則として対になるように使用され、VGフランジのOリング溝にOリングを装着し、VFフランジの平面と組み合わせることでシールが形成されます。建築現場でのメンテナンス性を考慮すると、一般的にはOリングの交換が容易なVGフランジ側にOリングを配置する設計が推奨されています。
固定フランジと回転フランジのバリエーションも用意されており、回転フランジはボルト締結前に自由に回転できるため、ボルト穴の位置調整が必要な箇所で特に有効です。建築現場では配管ルートの制約が多いため、この回転機能は施工性の向上に大きく貢献しています。また、規格品では貫通穴のボルト穴が標準ですが、タップ穴での製作も可能で、特殊な取り付け環境にも対応できます。
JIS B 2290規格では、真空フランジの口径は10Aから250Aまでの幅広いサイズが規定されています。建築現場で最も使用頻度の高いサイズは、VG-40(48.6mm)、VG-50(60.5mm)、VG-65(76.3mm)、VG-80(89.1mm)、VG-100(114.3mm)などの中口径タイプです。
参考)製品詳細
各サイズのフランジには、A寸法(フランジ外径)、P.C.D寸法(ボルト穴ピッチ円直径)、T寸法(フランジ厚さ)、穴数、穴径が詳細に規定されています。例えば、VF40の場合、A寸法がφ105mm、P.C.D寸法がφ85mm、T寸法が10mm、4穴、穴径φ10mmとなっています。
参考)https://www.kitano-seiki.co.jp/shinkuukikibuhin/product/jis.html
建築業界では、配管の外径dに対して適切なフランジサイズを選定する必要があり、規格表に記載された適用管外径またはこれに近いものを使用することが重要です。フランジの連結面は規格で指定された形状に仕上げ、ボルト締付面はフランジ連結面に平行に仕上げることで、適切なシール性能を確保できます。
参考)真空フランジ溝形(VG形)
真空フランジ用のOリングには、JIS B 2401で規定されるV規格Oリングが使用されます。この規格は真空フランジ専用に設計されており、高温や高真空環境での使用を前提としているため、一般のP規格やG規格より線径が太く設計されています。
参考)Oリング選びで困らない為に覚えておきたい使い分けのポイント!…
材質としては、FKM-70(フッ素ゴム)が最も一般的で、ガス透過度が低く耐熱性に優れているため、真空用途に最適です。建築現場でのベーキング処理(加熱による脱ガス処理)を考慮すると、最大150℃程度までの耐熱性能が要求されるため、バイトンOリング(Vシリーズ)の使用が推奨されています。
参考)真空および清潔な環境で使用されるOリングの材料に関して
Oリングの管理においては、材質の劣化を防ぐため、適切な保管環境の維持が重要です。特に紫外線や高温多湿な環境は避け、清浄な環境で保管する必要があります。建築現場では、施工前のOリング検査として、表面の傷や変形がないことを確認し、真空グリースの適量塗布を行うことで、長期間の信頼性を確保できます。
建築現場での真空フランジの施工では、まずフランジ接合面の清浄性確保が最重要です。接合面に付着した塵埃や油分は真空リークの原因となるため、アルコール系洗浄剤による清拭を徹底する必要があります。Oリングの装着時は、溝内の異物除去を確実に行い、Oリングにねじれや変形を与えないよう注意深く設置します。
参考)真空装置のリークテストと真空漏れ対策:装置を守るための基本知…
ボルトの締付けは、対角線状に段階的に行い、規定のトルクまで均等に締め上げることが重要です。JIS規格では、シール線荷重についても規定されており、一様に締めた時のOリングに及ぼす線荷重が適正範囲内となるよう設計されています。建築現場では、締付け順序とトルク管理を記録し、品質保証の一環として管理することが推奨されています。
参考)JISB2290:1998 真空装置用フランジ
定期的なメンテナンスでは、リークテストによる漏れ検査が不可欠です。ヘリウムリークテストは感度が高く、微細な漏れも検出可能なため、真空装置では非常に一般的な検査方法となっています。また、圧力降下テストや石鹸水による目視確認など、現場の状況に応じた検査方法を選択し、真空漏れの早期発見と対策を行うことで、設備の信頼性維持が実現されます。
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