
竹節鉄筋は、鉄筋表面に竹の節のような形状で、軸方向に対して直角方向に突起(フシ)が配置された異形鉄筋です。植物の竹と同様に、軸に対して直角方向の突起を持つことから「竹節」と呼ばれています。現在では、コンクリート構造物に使用される鉄筋のほぼすべてが異形鉄筋であり、その中でも竹節タイプは一般的な形状として広く流通しています。
参考)竹節鉄筋|鉄鋼・砕石砕砂・農業資材の【朝日工業】
竹節鉄筋は不純物が少なく、曲げ加工などの加工性に優れた特性を持ちます。マンションやオフィスビルなどの建築物、高速道路や橋梁などの土木建造物に幅広く使用されており、汎用性の高さと流通性の良さが大きな利点となっています。
参考)鉄筋の性質と異形棒鋼の種類5つとは?鉄筋の区分や製造方法も紹…
ねじ節鉄筋は、表面の節がねじ状に成形された特殊な異形鉄筋で、鉄筋全体がねじの形状を有しています。鉄筋のサイズに合うカプラー(継手金具)をねじの原理で回転させることで、簡単に接合できる構造が最大の特徴です。
参考)ネジテツコン(高張力ネジ節棒鋼)
ねじ節鉄筋には「カラーマーキング」と呼ばれる色分け表示が施されており、鋼種やサイズの識別が容易です。この識別システムにより、配筋ミスを防ぎ、確認作業も効率的に行うことができます。原料には高品質の鉄源が使用されているため、不純物が少なく、延性、じん性、加工性に優れています。
参考)https://www.jfe-bs.co.jp/ds/screw/index.shtml
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ねじ節鉄筋は、JIS規格(G3112)に準拠しており、普通強度から高強度まで幅広いグレードが製造されています。特に高強度ねじ節鉄筋として、USD590AやUSD685などの規格があり、超高層ビルや大型構造物の建設に対応できます。
参考)ねじ節鉄筋
コンクリートとの付着性能において、竹節鉄筋は優位性を持つことが実験で確認されています。同等の圧縮強度における最大付着応力度は、竹節がクロス節(ねじ節に近い形状)に比べて約1.14倍大きい結果が得られています。
参考)https://www.itec-c.co.jp/ohata-zaidan/common/tus2020.pdf
竹節鉄筋は、小さい初期付着応力度でも同等の最大付着応力度を確保でき、付着不良の防止においても有利です。一方、ねじ節鉄筋の付着性能は竹節鉄筋に比べてやや低いものの、ねじ状の起伏がコンクリートの付着性を高める効果があります。
モルタル充填式継手を使用する場合、ねじ節鉄筋では母材破断が生じづらく、竹節鉄筋とは異なる挙動を示します。そのため、継手工法の選定時には、鉄筋の節形状による付着特性の違いを考慮する必要があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj/54/5/54_490/_pdf/-char/ja
日本コンクリート工学会の研究論文では、竹節鉄筋とコンクリートの付着性状に関する詳細なデータが掲載されています
竹節鉄筋の継手方法は、主にガス圧接、アーク溶接、機械式継手の3種類があります。直径16mm以下の細径鉄筋では重ね継手が、直径19mm以上の中・太径鉄筋では突合せ溶接継手または機械式継手が一般的です。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0090030010
ガス圧接継手は、接合端面を突き合わせて酸素アセチレン炎で加熱し、圧縮力を加えながら接合する方法で、機動性に富み、現在でも71%のシェアを占めています。機材の持ち運びが簡単で、コストも比較的安価です。
参考)鉄筋継手は3種類ある!その特徴とは?
ねじ節鉄筋の継手は、専用のカプラーとナットを使用した機械式継手が主流です。熟練した技術がなくても容易かつ確実に接合でき、作業スピードが格段に速く、天候に左右されずに作業できます。グラウト材を充填して固定する工法では、無機グラウトと有機グラウトの2種類があり、用途によって使い分けられます。
参考)ねじ節鉄筋と通常の異形鉄筋の用途の違いと継手方法とは?
竹節鉄筋とねじ節鉄筋を接合する場合、溶接継手や異形棒鋼でも使用できるタイプの機械式継手が採用されます。圧接も技術的には可能ですが、ねじ節鉄筋を使用する現場では鉄筋の先組工法やPC工法と併用することが多く、鉄筋が縮むのを避けるため、圧接以外の継手方法が選ばれる傾向にあります。
機械式定着工法は、定着性能を有する金物を用いることで、従来の折り曲げ定着に求められる働きを簡易に確保できる工法です。第三者機関で折り曲げ定着と同等以上の性能が証明されており、高い信頼性を持っています。
参考)https://www.jfe-bs.co.jp/ds/plate/index.shtml
ねじ節鉄筋を使用した機械式定着では、定着板とナットを鉄筋にねじ込むことで固定します。この工法により、従来の曲げ定着の「曲げ」部分の鉄筋がなくなるため、過密配筋を緩和でき、ジャンカ(コンクリートの充填不良)防止に貢献します。
参考)https://www.gbrc.or.jp/assets/documents/gbrc/GBRC124_627.pdf
竹節鉄筋でも機械式定着は適用可能で、TPナット工法などでは節形状を問わず、あらゆる鉄筋に対応できます。鉄筋組み立て作業が簡略化され、合理的な施工が可能になり、工期短縮とコスト低減が実現できます。
参考)TPナット工法 テーパーネジを用いた機械式定着工法|技術・サ…
高強度鉄筋や太径鉄筋は曲げ加工が困難ですが、機械式定着工法では曲げ加工の必要がなく、鉄筋量も低減されるため、軽量化が求められる高層建築物には最適です。定着部の品質向上や構造体のスリム化といったメリットもあります。
工法 | 竹節鉄筋の適用 | ねじ節鉄筋の適用 | 主なメリット |
---|---|---|---|
ガス圧接継手 | ◎(主流) | △(可能だが少ない) | コスト安、機動性高 |
溶接継手 | ○ | 接合強度高 | |
機械式継手 | ○ | ◎(最適) | 工期短縮、品質安定 |
機械式定着 | ○ | ◎(最適) | 過密配筋緩和、施工性向上 |
ねじ節鉄筋と機械式継手を組み合わせた工法では、重ね継手による鉄筋の結束が省略され、工期短縮が実現できます。火器を使用するガス圧接がないため全天候対応となり、天候に左右されずに作業を進められるのも大きな利点です。
参考)R2年、2021年 建設・鋼コン Ⅱ−1−3 問題 模範解答…
作業が定型化されることで、一般レベルの作業員でも施工が可能となり、人材確保が容易になります。熟練した技術者の不足が深刻化する建設業界において、この点は極めて重要です。
参考)Vol.02 ネジ節鉄筋編
鉄筋を重ねる必要がないため、鉄筋同士の空きの確保が容易となり、施工性が向上します。鉄筋先組工法を採用した場合、工場などで予め組み立てた柱や梁などの部材を現場で接合することで、施工時の安全性やスピードがより向上します。
ただし、ねじ節鉄筋は一般的な竹節鉄筋よりもコスト面で割高です。そのため、定着板や機械式継手に絡む主筋のみをねじ節鉄筋とし、それ以外を竹節鉄筋とする使い分けを行う現場も多くあります。全体のメリット・デメリットを踏まえて俯瞰的に検討することが重要です。
機械式継手は他の継手よりコスト高となりますが、施工スタッフによる品質のばらつきが出ないという特徴があり、品質管理の観点からは優位性があります。
参考)鉄筋工事に欠かせない溶接の種類
ねじ節鉄筋には、カラーマーキングによる識別システムが導入されており、鋼種とサイズの判別が視覚的に行えます。この色分け表示により、配筋時のミスを防止し、検査や確認作業が効率化されます。youtube
竹節鉄筋も含めて、異形鉄筋はJIS規格(JIS G 3112)に準拠して製造されており、降伏点、引張強度、伸びなどの機械的性質が規定されています。一般的なSD295AやSD345から、高強度のSD490、超高強度のUSD685まで、用途に応じた鋼種が選択できます。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2003/58-5/58-5-0186.pdf
高強度ねじ節鉄筋(USD590A、USD590B、USD685A、USD685B)は国土交通大臣認定を取得しており、機械式継手についても日本建築センターからA級継手としての評定を取得している製品が多数あります。
参考)ねじ節異形棒鋼 ネジエーコングラウト継手(USD685) 朝…
製品の品質を保証する各種認定や評定の取得状況は、メーカーのカタログや技術資料で確認できます。建築基準法や関連法規に適合した製品を選定することが、構造物の安全性確保において不可欠です。
JFE条鋼株式会社のネジバー製品ページでは、高強度ねじ節鉄筋の詳細な仕様と認定情報が掲載されています
機械式継手を採用する際は、継手部が同一断面に集中する場合、鉄筋の配置間隔を大きくとり、継手同士の空きを確保する必要があります。せん断補強筋では、継手前後に鉄筋をずらして必要なかぶり厚を確保することが重要です。
継手部にかかる鉄筋の必要かぶり厚の確保が困難な場合は、エポキシ樹脂塗装を施すことで、コンクリートの耐久性を確保できます。このような細かな配慮が、長期的な構造物の性能維持につながります。
国内におけるねじ節鉄筋の需要は、都市再開発や建物の超高層化、災害に強い国土強靭化の推進などに伴い、今後も増加していく見通しです。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた関東地区の開発以降も、その勢いは継続しています。
ベトナムなどの海外においても、経済発展に伴うインフラ整備が急速に進み、超高層ビルの建設が増加しており、ねじ節鉄筋の需要拡大が期待されています。日本の鉄筋メーカーは、現地生産体制を強化し、グローバルな需要に対応しています。
建設業界全体で労働力不足が深刻化する中、施工の省力化と品質の安定化を両立できる機械式継手工法の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう。竹節鉄筋とねじ節鉄筋それぞれの特性を理解し、現場条件に最適な工法を選定することが、効率的で高品質な建設工事を実現する鍵となります。