

低粘度クラック補修材の核となるのは、「粘度」と「毛細管現象」を利用した浸透性です。エポキシ樹脂を反応性希釈剤などで低粘度化することで、0.2mm未満の微細クラックにも塗布するだけで内部に含浸し、表層だけでなく深部で接着させる技術が確立されています。
粘度が高い樹脂はクラック開口が大きい箇所には向きますが、ヘアークラックレベルでは入り込みにくく、表面だけをなぞってしまうことがあります。低粘度タイプは7.5cps前後のものもあり、深部浸透型としてコンクリート内部まで流入し、圧縮強度30MPa級・高い接着強度を発揮する製品も報告されています。
また、アクリル系の低粘度樹脂を用いる工法では、毛細管現象を積極的に利用し、0.1mm以下のひび割れまで充填可能とされ、ひび割れ先端部まで樹脂が到達することで水の通り道を遮断します。この「先端まで届かせる」ことが凍害・中性化・塩害に対する長期耐久性に直結するため、粘度だけでなく浸透深さの性能データも確認すべき指標になります。alpha-kogyo+1
低粘度クラック補修材では、樹脂の収縮ややせが小さいこともポイントです。セメント系充填材に比べて樹脂系はやせが少なく、5mm程度のクラックでも一回の充填で十分なケースがあるとされ、再充填回数を抑えられる製品もあります。硬化後にクリア色になるものは、意匠性を重視する床・壁のひび割れ補修に重宝され、美観を損なわずに補修できる点も見逃せません。abc-t+2
ひび割れ補修材の粘度と浸透性の技術的背景について解説した資料です。
浸透系エポキシ樹脂によるコンクリート補修技術について(PDF)
建築現場でクラック補修材を選ぶ際は、まず「クラックの幅・深さ」と「構造上重要かどうか」を区別する必要があります。低粘度クラック補修材は、床・壁・天井の微細なひび割れやマイクロクラックの浸透接着に適しており、特に0.5mm以下の縦横に走るひび割れや、目視では追いきれないヘアークラックの一括処理に威力を発揮します。
一方で、0.5mm以上の開口があるひび割れや、動きが大きい構造クラックについては、高粘度タイプや注入式の樹脂・セメント系モルタルなど、閉塞と断面修復を兼ねられる材料が適している場合もあります。弾性が求められるヘアークラック部には微弾性フィラー、ひび割れ追従性重視の箇所には弾性シーリング材、といったように、低粘度樹脂だけで全てを片付けようとせず、材料特性とクラックの性格を組み合わせて使い分けることが重要です。
低粘度クラック補修材の適用範囲としては、以下のようなケースが代表的です。
予防保全という観点では、点検時に見つかった軽微なひび割れを低粘度樹脂で早期に処理することで、後年の大規模補修・断面修復の発生頻度を抑えることができるとされ、特にインフラや大型施設ではライフサイクルコスト低減の一手段として位置づけられています。
参考)リニューアル工事 コンクリート構造物補修工 | 事業情報|成…
クラック補修材の種類と選び方を建物の部位別に整理した解説です。
実際の施工では、カタログに書かれていない「段取り」と「下処理」の差が、補修の成否を分けます。低粘度クラック補修材は浸透性が高い一方で、ホコリ・レイタンス・油分・旧塗膜が残ったままだと、そこを避けて流れてしまい、ひび割れの奥ではなく表面側に溜まるだけという失敗が起こりがちです。そのため、ワイヤーブラシ・カッター・高圧水洗などを組み合わせてひび割れ周辺を清掃し、必要に応じてVカット・Uカットで開口を整えるなど、樹脂が素地に直接触れられる状態を作ることが前提になります。
カートリッジ式の低粘度クラック補修材では、2連カートリッジからスタティックミキサーを通して自動混合されるため、従来の手練りに比べて配合ミスのリスクが低く、施工のバラつきが抑えられます。とはいえ、施工開始時の最初の吐出分は混ざりが不十分なことが多く、数十グラム程度を捨て打ちしてから本番に入る運用を徹底している現場もあります。硬化時間については、速乾タイプで1時間程度で実用硬度に達する補修材もあり、昼休みや工程間の短時間で補修を完了し、歩行解放できるケースが増えています。hermetic+4
失敗パターンとしては、次のようなものが典型的です。
湿潤面施工が可能な低粘度クラック補修材では、コンクリート床や壁の湿潤状態でも施工できるものがありますが、それでも「水たまり」や「流水」はNGで、表面水を除去した状態が前提とされます。カタログに「湿潤面硬化タイプ」とあっても、想定条件(温度・含水率・下地状態)をよく読み、現場の実情と合っているか確認することが重要です。hermetic+1
低粘度樹脂を用いたひび割れ塗布・浸透工法の手順を写真付きで解説したページです。
低粘度クラック補修材をカタログで比較する際は、「粘度」だけでなく、「接着強度」「圧縮強度」「適用ひび割れ幅」「硬化時間」「施工可能温度」などのスペックをセットで見る必要があります。例えば、深部浸透型の低粘度速乾タイプでは、23℃で粘度7.5cps、接着強度13.5MPa、圧縮強度31.3MPaといった数値が示され、構造的にも十分な補修性能が期待できることが分かります。
一方で、外壁塗装分野では、低粘度型エポキシは微細クラックへの浸透性に優れ、高粘度型は幅の広いクラックを埋めるのに適していると整理されており、同じ「ひび割れ補修材」でも目的によって必要な特性が異なることが強調されています。
特に、冬期施工や寒冷地を想定する場合は、低温時でも硬化するかどうかが重要です。低粘度アクリル樹脂を用いる工法の中には、−10℃でも硬化し、ひび割れ幅が広がりやすい冬期に合わせた補修が可能なものも紹介されています。これにより、凍害や凍結融解に伴うひび割れ拡大を抑えることができ、雪国や高地の現場では大きなメリットとなります。
さらに、施工効率や現場管理の観点からは、次のようなスペックもチェックしておきたいところです。
これらの情報を事前に整理し、「どの部位に」「どの幅のクラックへ」「どの季節に」使うのかを明確にしたうえで製品を選定しておくと、現場で迷う時間を減らせます。
低粘度クラックインジェクターの具体的なスペックや特長を掲載したメーカー情報です。
TSE-050 低粘度・浸透力と接着力に優れた湿潤面施工型(ヘルメチック)
検索上位では「カタログ通りの性能」や「一般的な施工手順」に焦点が当たりがちですが、実際の建築現場では、低粘度クラック補修材を「検査のための保険」として運用している例も見られます。例えば、定期点検でクラックマップを作成する際、0.2mm未満の微細ひび割れについては、その場で低粘度樹脂を塗布しておき、次回点検時にクラックの進展有無を確認することで、構造上問題のあるクラックと表層のみのクラックを見分ける材料とする手法です。
このような運用を行うと、ひび割れの「数」だけでなく「動いているかどうか」を把握できるようになり、限られた補修予算をどこに重点投下すべきか判断しやすくなります。低粘度クラック補修材は材料単価こそ高めですが、予防的に打っておくことで、後年の断面修復や再塗装の規模を抑えられれば、長期的にはコストダウンにも寄与します。
もう一つ、現場レベルで効果的な活用として、床改修やライン引き前の「部分的な素地強化」が挙げられます。コンクリート床の表層にマイクロクラックや微細な欠けが多い場合、低粘度樹脂を塗布して浸透硬化させ、その上から塗り床材やライン塗装を行うと、素地の脆弱層をまとめて固めることができ、後のピンホールや剥離トラブルを減らせます。これはカタログ上は「ひび割れ補修」の一例として書かれている程度ですが、実務では「下地強化材」として位置づけている会社もあり、特にフォークリフトが走る倉庫床や工場床では効果が分かりやすい使い方です。abc-t+1
運用ルールとしては、以下の点を社内基準に落とし込んでおくと現場の判断がブレにくくなります。
こうした運用面の工夫により、単なる「便利な補修材」としてではなく、構造物の長寿命化戦略の一部として低粘度クラック補修材を位置づけることができます。
低粘度樹脂を使ったコンクリート構造物補修の予防保全的な位置づけを解説する技術資料です。
コンクリート構造物補修工 スーパーJ工法(低粘度アクリル樹脂の特徴)