呈色反応一覧と試薬の種類・検出方法を解説

呈色反応一覧と試薬の種類・検出方法を解説

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呈色反応の種類と検出方法

この記事でわかること
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タンパク質の呈色反応

ビウレット反応、キサントプロテイン反応、ニンヒドリン反応など主要な検出方法を解説

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糖質の呈色反応

フェーリング液、ヨウ素デンプン反応など還元糖の検出に使われる試薬と反応

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その他の呈色反応

フェノール類、アルデヒド、アミノ酸など物質ごとの特徴的な呈色反応の種類

呈色反応は、特定の化学物質が試薬と反応することで色の変化を起こす現象で、建築材料の成分分析や品質管理において重要な検出方法として活用されています。タンパク質、糖質、フェノール類など、様々な有機化合物の検出に利用され、それぞれの物質に対応した試薬と反応条件が確立されています。この記事では、建築事業者が知っておくべき主要な呈色反応の種類と、その検出原理について詳しく解説します。
参考)【アミノ酸/タンパク質】検出反応を総まとめ(ビウレット/キサ…

呈色反応によるタンパク質の検出方法

タンパク質の検出には複数の呈色反応が利用されており、それぞれが異なる構造的特徴を検出します。最も基本的な反応として、ニンヒドリン反応があり、α-アミノ酸やタンパク質にニンヒドリン試薬を加えて加熱すると赤紫~青紫色に呈色します。この反応はアミノ酸の第一級アミノ基(-NH2)と反応するため、タンパク質だけでなくアミノ酸の検出と定量にも広く利用されています。
参考)有機化合物とタンパク質の検出反応(ヨードホルム反応やキサント…

ビウレット反応は、トリペプチド以上のペプチド結合を持つタンパク質を検出する方法です。水酸化ナトリウム水溶液と硫酸銅(Ⅱ)水溶液を加えると、銅イオン(Cu2+)がペプチド結合とキレート錯体を形成し、赤紫色に呈色します。この反応は、ペプチド結合が2つ以上、つまりトリペプチド以上でないと示されないという特徴があります。youtube​
参考)【高校化学】「高分子化合物(テスト5、第1問)」(問題編)

キサントプロテイン反応は、ベンゼン環を含むアミノ酸(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)の検出に使用されます。濃硝酸を加えて加熱すると芳香族アミノ酸がニトロ化されて黄色になり、さらにアンモニア水を加えると橙色に変化します。この反応は、タンパク質中のベンゼン環の存在を確認するための重要な定性試験です。
参考)【高校化学】アミノ酸 5つの検出反応 - 上野丘・舞鶴・鶴見…

タンパク質検出反応の詳細な原理と実験方法についての参考資料

呈色反応による糖質の検出と試薬

糖質の検出には、還元性の有無に基づいた複数の呈色反応が利用されています。最も有名なヨウ素デンプン反応は、デンプンにヨウ素ヨウ化カリウム水溶液を加えると濃青色に呈色する反応で、デンプンの構造中にヨウ素分子が入り込むことで発色します。この反応は、デンプンの存在を確認する最も簡便な方法として広く使用されています。
参考)糖類・糖質を検出する定性分析方法・判別実験 - 化学徒の備忘…

フェーリング液による還元糖の検出は、アルデヒド基を持つ糖類の還元性を利用した反応です。フェーリング液(硫酸銅水溶液と酒石酸ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液の混合液)に還元糖を加えて加熱すると、銅イオンが還元されて酸化銅(Ⅰ)Cu2Oの赤色沈殿が生成します。単糖類は通常1〜2分で反応しますが、還元性をもつ二糖類は加水分解を伴うため時間がかかります。
参考)【高校化学】「アルデヒドの性質」

ピクリン酸試験も還元糖の検出に用いられ、還元性をもつ糖がピクリン酸と反応して赤色のピクラミン酸を形成します。また、ペントース糖の測定にはビアル試験が使用され、酸性媒体中でフルフラールが生成し、第二鉄イオンの存在下でオルシノールと縮合して青緑色の錯体を形成します。​

検出対象 試薬 呈色 検出条件
デンプン ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液 濃青色 室温で反応
還元糖(アルデヒド基) フェーリング液 赤色沈殿 加熱が必要
還元糖 ピクリン酸 赤色 沸騰水浴で加熱
ペントース糖 ビアル試薬(オルシノール) 青緑色 沸騰水浴で加熱

呈色反応によるフェノール類の検出方法

フェノール類の検出には、塩化鉄(Ⅲ)水溶液を用いた呈色反応が最も一般的です。フェノール類に塩化鉄(Ⅲ)FeCl3の水溶液を加えると、塩化鉄とフェノールが錯体を形成し、青~赤紫色の呈色反応を示します。この反応は、フェノール類の検出に広く利用されており、薄層クロマトグラフィー(TLC)の発色試薬としても使用されています。
参考)塩化鉄(III):フェノール検出用TLC発色試薬の原理と作り…

塩化鉄による呈色反応の特徴として、フェノールの種類によって呈色の程度が異なることが知られています。電子求引性基(ニトロ基など)を持つp-ニトロフェノールなどは呈色しやすい一方、電子供与性基が多い酸化されやすいフェノール類は呈色されにくい傾向があります。また、エタノール溶液では呈色が弱くなるため、水溶液を使用するとより明確な呈色が得られます。​
実際の使用方法として、塩化鉄(Ⅲ)六水和物1gを水5mLに溶解した後エタノール95mLを加えて調製するエタノール溶液と、水100mLに塩化鉄(Ⅲ)を2g加えた水溶液の2種類があります。TLC展開後のプレートに噴霧またはディップし、110℃で5分程度加熱することで、フェノール類は紫、緑、赤茶色など様々な色に染まります。​
芳香族化合物の呈色反応に関する詳細な実験データ

呈色反応によるアルデヒド基とケトンの検出

アルデヒド基の検出には、銀鏡反応とフェーリング液による還元反応が主に使用されます。銀鏡反応は、アルデヒドを含む溶液にアンモニア性硝酸銀溶液を加えて加熱すると、銀イオンが還元されて金属銀が析出し、試験管の内壁に銀の鏡のような光沢が生じる反応です。この反応はアルデヒド基の還元性を利用した検出方法で、アルデヒドの存在を確認する最も確実な方法の一つです。​
ヨードホルム反応は、特定の構造を持つアルデヒドとケトンを検出する呈色反応です。CH3CO-(アセチル基)またはCH3CH(OH)-の構造を持つ化合物に、ヨウ素とアルカリ性溶液を加えると、黄色のヨードホルム(CHI3)の沈殿が生成します。この反応は、アセトアルデヒドやアセトンなどの検出に利用され、特定の構造を持つ化合物を選択的に検出できる特徴があります。
参考)フェーリング液を還元し、ヨードホルム反応を示した。と書いてあ…

これらの反応は、建築材料に含まれる有機溶剤接着剤の成分分析において重要な役割を果たします。アルデヒド基を持つ化合物は建材から放出される揮発性有機化合物(VOC)の一種であり、室内環境の品質管理においても呈色反応による検出が活用されています。​

呈色反応によるアミノ酸の構造解析

アミノ酸の構造解析には、複数の呈色反応を組み合わせることで、より詳細な情報を得ることができます。ニンヒドリン反応は全てのα-アミノ酸に対して陽性を示すため、アミノ酸の存在確認に最も基本的な反応です。ニンヒドリン水溶液を加えて加熱すると、アミノ酸の第一級アミノ基がニンヒドリンと反応し、ルーへマン紫と呼ばれる青紫~赤紫色の色素を生成します。
参考)https://sekatsu-kagaku.sub.jp/natural-high-polymer2.htm

硫黄を含むアミノ酸(システイン、メチオニン)の検出には、酢酸鉛(Ⅱ)水溶液による反応が利用されます。システインのような側鎖に硫黄原子を含むアミノ酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し、酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えると、硫化鉛(Ⅱ)PbSの黒色沈殿が生じます。ほとんどのタンパク質には硫黄を含むアミノ酸が含まれているため、この反応はタンパク質の検出反応としても広く用いられています。​
芳香族アミンの検出には、ジアゾカップリング反応が使用されます。酸性条件下で亜硝酸ナトリウムを作用させると、芳香族アミンはジアゾ化反応を起こし、津田試薬を加えるとジアゾ色素(赤紫系の色)が呈色します。脂肪族アミンの場合はジアゾ化分解が起こり窒素ガスが生成するため、ガス放出の有無で芳香族アミンと脂肪族アミンを区別することができます。
参考)官能基の定性試験

検出対象 反応名 試薬 呈色
α-アミノ酸全般 ニンヒドリン反応 ニンヒドリン水溶液 赤紫~青紫色
トリペプチド以上 ビウレット反応 NaOH水溶液+硫酸銅(Ⅱ) 赤紫色
ベンゼン環を含むアミノ酸 キサントプロテイン反応 濃硝酸+アンモニア水 黄色→橙色
硫黄含有アミノ酸 硫化鉛反応 NaOH+酢酸鉛(Ⅱ) 黒色沈殿
芳香族アミン ジアゾカップリング 亜硝酸Na+津田試薬 赤紫色

建築現場で活用される呈色反応の応用例

建築材料の品質管理において、呈色反応は簡便で迅速な分析方法として重要な役割を果たしています。接着剤や塗料に含まれるタンパク質系バインダーの検出には、ビウレット反応やニンヒドリン反応が利用され、製品の品質確認や成分分析に活用されています。また、木材や繊維系建材に含まれるセルロースやデンプンの確認には、ヨウ素デンプン反応が簡便な検出方法として使用されています。
参考)https://nwuss.nara-wu.ac.jp/media/sites/11/ssh17_19.pdf

防腐処理された木材や建材の分析では、フェノール系防腐剤の検出に塩化鉄(Ⅲ)による呈色反応が応用されています。フェノール類は木材防腐剤の主要成分であり、塩化鉄水溶液による呈色反応で処理の有無や濃度を簡易的に確認することができます。この方法は、高価な分析機器を必要とせず、現場で迅速に結果が得られるという利点があります。
参考)【高校化学】「フェノール類の呈色反応」

さらに、建築材料から放出される揮発性有機化合物(VOC)の分析においても、呈色反応は重要な役割を果たしています。ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類の検出には、銀鏡反応やフェーリング液による還元反応が利用され、室内空気質の評価や建材の安全性確認に活用されています。これらの呈色反応は、建築現場における材料の品質管理と安全性評価の基本的なツールとして、今後も重要性が増していくと考えられます。​
タンパク質定量法(Bradford法、Lowry法)の原理と応用

呈色反応の試薬調製と保存方法の注意点

呈色反応の試薬は、適切な調製と保存方法を守ることで、正確な検出結果を得ることができます。塩化鉄(Ⅲ)発色試薬の場合、エタノール溶媒と水溶媒の2種類があり、それぞれ呈色の強度が異なります。エタノール溶媒では塩化鉄(Ⅲ)六水和物1gを水5mLに溶解した後エタノール95mLを加えて調製し、水溶液では水100mLに塩化鉄(Ⅲ)を2g加えて溶解します。​
試薬の保存方法として、塩化鉄(Ⅲ)溶液は室温で保存すると徐々に沈殿が生成するため、冷蔵庫での保存が推奨されています。ただし、保存期間は比較的短く、1週間程度で使用できなくなることがあるため、使用直前に調製することが望ましいとされています。また、アルコールの影響で呈色が妨害されるため、エタノール溶液を使用する場合は、水溶液と比べて呈色が弱くなる傾向があります。​
ニンヒドリン試薬の場合、中性~弱酸性のアミノ酸水溶液に薄いニンヒドリン水溶液を加えて温める必要があります。反応温度と時間が検出感度に大きく影響するため、加熱条件を一定に保つことが重要です。フェーリング液は、硫酸銅水溶液と酒石酸ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液を等量ずつ混合して調製しますが、使用直前に混合することで、より安定した反応結果が得られます。​