

鉄丸くぎの最大の特徴は、錆びることでかえって保持力が向上する点にあります。木材は経年により乾燥して痩せていきますが、鉄丸くぎは錆びることで表面が膨張し、木材の痩せに追従します。この現象により、打ち込み直後よりも時間が経過した後の方が締結力が高まるケースもあります。
参考)https://www.diy-id.net/know-how-screw/nail-sabino-chikara/
鉄は錆びると表面が荒れて膨れるという段階を経て、木材の繊維に食い込んで抜けにくくなります。10年程度で完全に錆びて木材に密着し、その後も保持力を維持し続けます。屋内使用であれば数十年単位で問題なく使用でき、文化財レベルの建築物にも鉄生地の釘が使用されています。
参考)https://act-kougu.com/column/nail_type/
一方、ステンレス釘はほぼ錆びないため、木が痩せてきた際には打つ手がなく、初期の締結力から低下していく傾向があります。鉄丸くぎの錆による「木とのシンクロ率」の高さが、長期的な建築物の安定性に寄与しています。
鉄丸くぎはJIS A 5508で「N釘」として規格化されており、正式名称は「鉄丸釘」です。住宅の木造軸組工法(在来工法)では、JIS鉄丸くぎの使用が国の告示第1100号で規定されています。
参考)https://www.monotaro.com/g/00180485/
N釘の寸法規格は、呼び名の数字が長さを示しており、N19(19mm)からN150(150mm)まで幅広いサイズが揃っています。胴部径は長さに応じて1.50mm~5.20mmまであり、頭部は丸く布目がついた形状です。
参考)https://airdiy.net/material/material_001.html
構造用合板などの耐力壁の固定には、N釘もしくはCN釘(太め鉄丸釘)を使用することが定められています。CN釘は主に2×4工法(枠組壁工法)で使用され、N釘よりも胴部が太く高い接合耐力が見込まれます。
参考)https://daidohant.com/homecenter/tips/2532/
鉄丸くぎを使用する際は、板厚の2.5倍以上の長さを選択するのが基本です。例えば10mm強の板厚であれば38mm、14mmであれば45mmの長さが標準となります。繊維方向と同じ向きに釘を打つ場合は、板厚の3.5倍以上の長さを選択する必要があります。youtube
材木の端部に打つ際は割れる確率が高くなるため、釘の先端を金槌で潰すことで割れを防止できます。先端が鋭利な場合は木材繊維を押し分けて割れが生じやすいですが、先端を潰すことで繊維を押しつぶして打ち込むため割れにくくなります。youtube
くぎ打機を使用する際は、くぎ頭が面材と面一になるよう設定およびエアー圧を調整し、試打後に施工してください。打ち込み不足が生じた場合は、ハンマー等でくぎ頭が面材と面一になるよう留め付けます。くぎを使用する際は必ず保護メガネを着用し、安全に配慮してください。
参考)https://yoshino-gypsum.com/pdf/approved_doc/ex9.5_hyojun_NZ50_jiku.pdf
建築用の釘には鉄丸くぎの他、メッキ鉄釘、ステンレス釘、銅釘などがあり、それぞれ特性が異なります。鉄丸くぎは最も錆びやすく、水をかければ4時間程度で赤錆が発生しますが、この特性が長期的な保持力向上につながっています。
NZ釘は一般的なN釘に耐食性の高いメッキ処理を施したもので、性能はN釘と同様ですが、長期耐久テスト(劣化促進試験)ではN釘と同様に錆が発生することが確認されています。溶融亜鉛めっきを施したCNZ釘は耐久性向上に役立ち、Cマーク表示金物とともに防錆効果を高めています。
参考)https://coconfamille.jp/2023/11/06/%E3%80%90%E9%95%B7%E5%AF%BF%E5%91%BD%E5%8C%96%E3%80%91%E9%8C%86%E3%81%B3%E3%81%AA%E3%81%84%E9%87%98%E3%81%AE%E5%AE%B6%E3%81%A7%E6%9A%AE%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%81%8B%EF%BC%9F/
ステンレス釘は台所や風呂場など湿気の多い場所、アルミサッシやアルミ板の取り付けに適しており、耐食性に極めて優れ錆が出ません。しかし木材の痩せに対応できないため、一般的な木造建築の構造材としては鉄丸くぎの方が適しています。
参考)https://www.handsman.co.jp/diy-howto/nail-type/
屋外の雨ざらしの場所で鉄丸くぎを使用した場合、10年ほどで朽ちてしまう可能性がありますが、屋内であれば数十年単位で問題なく使用できます。
鉄丸くぎの早期劣化を招く要因として、薬性の強い塗料、防腐処理された木材、色が赤っぽい木材などがあります。これらは金属の腐食を促進する働きがあり、通常よりも早く釘の劣化が進行します。
和鉄中の過飽和固溶酸素は560°C以下で反応し、緻密な結晶構造のFe₃O₄被層を生成することで鉄の腐食速度を著しく遅くする効果があります。伝統的な鍛錬技術では、鉄表面に藁灰と泥を塗布することで、FeO濃度の高いFeO-SiO₂系溶融スラグを生成し、鉄表面への酸素供給を促進しています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane/107/9/107_TETSU-2021-014/_html/-char/ja
錆びることでチカラを発揮する鉄丸くぎの詳細メカニズムについて解説された参考資料
木造家屋の外壁における釘の劣化環境では、錆の発生が初期変形のせん断力を高める作用があり、らせんでない丸釘では木材の乾燥・膨潤による影響が大きくなります。適切な環境下での使用により、鉄丸くぎは建築物の長期的な耐久性を支える重要な役割を果たします。
参考)https://iezukuri-business.homes.jp/column/construction-00039

ダイドーハント (DAIDOHANT) (釘) 丸釘 400g (胴部径d) 5.2 x (長さL) 150mm [鉄/表面処理なし] (約16本入) 56341