
山形鋼の規格は、日本産業規格JIS G3192「熱間圧延形鋼の形状,寸法,質量及びその許容差」に基づいて統一化されています。この規格は、1989年に制定されたISO 657シリーズを技術的に改良した日本独自の規格として位置づけられています。
山形鋼は断面がL字形状を有する構造用鋼材で、一般にアングル材と呼ばれています。JIS G3192では、等辺山形鋼と不等辺山形鋼の2種類に分類され、それぞれに詳細な寸法表と断面性能が規定されています。
規格の主要な特徴。
この規格体系により、建築・土木・機械分野での設計計算において、統一された断面性能値を使用することが可能になっています。
等辺山形鋼の規格寸法は、辺長(A×B)と厚さ(t)の組み合わせで表現され、最小20×20×3mmから最大250×250×25mmまでの豊富なサイズが規格化されています。
主要な等辺山形鋼規格寸法
辺長(mm) | 厚さ(mm) | 単位重量(kg/m) | 断面積(cm²) | 断面二次モーメント(cm⁴) |
---|---|---|---|---|
30×30 | 3.0 | 1.36 | 1.727 | 1.42 |
50×50 | 4.0 | 3.06 | 3.892 | 9.06 |
75×75 | 9.0 | 9.96 | 12.69 | 64.4 |
100×100 | 10.0 | 14.9 | 19.00 | 175 |
150×150 | 15.0 | 33.6 | 42.74 | 888 |
200×200 | 20.0 | 59.7 | 75.92 | 2,180 |
断面性能の計算式は以下のように規定されています:
これらの数値は構造計算において、曲げモーメント、圧縮・引張応力、座屈計算などの基礎データとして活用されます。
JIS G3192では、山形鋼の製造品質を確保するため、詳細な許容差基準が設定されています。これらの許容差は、建築構造物の安全性と品質を保証する重要な要素です。
寸法許容差の詳細規定
辺長(A、B)の許容差。
厚さ(t)の許容差(辺長130mm未満の場合)。
長さと質量の許容差
これらの厳格な許容差基準により、設計値通りの構造性能が確保され、建築物の安全性が保たれています。特に耐震設計においては、これらの許容差が構造計算の信頼性に直結するため重要です。
建築設計において山形鋼を選定する際は、荷重条件、使用環境、接合方法を総合的に検討する必要があります。構造計算では、規格化された断面性能値を用いて、応力度検定や変形計算を実施します。
選定における主要考慮事項
構造性能面。
使用環境面。
材質規格の選択
効率的な選定のためには、断面二次モーメントと単位重量の比(I/W)を指標とした最適化も重要です。これにより、軽量でありながら必要な剛性を確保できる経済的な設計が可能になります。
近年の建築技術の進歩に伴い、山形鋼規格にも新たな展開が見られます。特に高強度鋼材の開発と、環境配慮型建築への対応が注目されています。
高強度山形鋼の展開
従来のSS400に加え、高強度鋼種の適用が拡大しています。
特殊表面処理材の規格化
軽量形鋼との棲み分け
JIS G3350軽量形鋼との使い分けが明確化されています:
デジタル技術との融合
これらの技術革新により、山形鋼規格は従来の構造材料の枠を超え、次世代建築技術のキーマテリアルとしての地位を確立しつつあります。設計者は最新の規格動向を把握し、プロジェクトの要求性能に最適な材料選定を行うことが求められています。
建築設備耐震設計・施工指針への適合性確保や、環境配慮型建築での炭素削減効果も、今後の山形鋼選定における重要な判断基準となるでしょう。