

ねじの山数とピッチは、ねじ山の間隔を表す2つの異なる表記方法です。ピッチは隣り合うねじ山の中心同士を結んだ距離をミリ単位で表すもので、ミリねじ(メートルねじ)で使用されます。一方、山数は1インチ(25.4mm)あたりのねじ山の数を表し、インチねじ(ユニファイねじ)やウィットねじで使用される表記方法です。
参考)https://aka-bane.com/blog/2020/05/neji-2/
建築現場で使用されるねじは、ミリねじ、インチねじ、管用ねじの3種類に大きく分けられます。ミリねじの場合、例えばM8のボルトでは標準ピッチ1.25mmが使用され、これは隣り合う山の頂点間の距離を意味します。インチねじの場合、1/2インチのボルトで「12山」と表記されていれば、1インチ間に12個のねじ山があることを示しており、これをピッチに換算すると25.4mm÷12=2.12mmとなります。
参考)https://osgnavi.com/faqs/294?language=jaamp;category_id=8200
ねじ山の角度も規格によって異なり、メートルねじとユニファイねじは60度、ウィットねじは55度です。この違いにより、同じ外径でも異なる規格のねじは互換性がなく、混用すると締結不良や破壊につながる危険性があります。
参考)https://neji-no1.com/dictionary/data/index08/
ねじの山数やピッチを正確に測定するには、ピッチゲージとノギスの2つの工具が必要です。ピッチゲージは複数の異なるピッチの歯が刻まれた薄い鋼板製の測定器具で、ミリ用とインチ用が別々に用意されています。測定したいねじ山にピッチゲージを当てはめ、隙間なく合う歯のピッチを読み取ることで、簡単にねじのピッチを特定できます。
参考)https://www.monotaro.com/note/cocomite/099/
ノギスはねじの外径を測定する際に使用します。おねじの外径を測定する場合はジョーの先端を山の頂点に置き、めねじの場合は溝に入れて測定します。一般に使われている2級ねじの場合、実際の計測値は規格上のサイズより0.1~0.2mm程度細くなることに注意が必要です。例えばM10のボルトを測定すると、実測値は9.8~9.9mm程度となります。
参考)https://www.rakuten.ne.jp/gold/nejiya/chiebukuro/info_hakarikata.html
ピッチゲージがない場合の測定方法として、1インチ(25.4mm)中に何山あるかを数える方法や、5山または10山の長さをノギスで測定してピッチを割り出す方法があります。例えばM8(ピッチ1.25mm)と5/16インチ(ピッチ1.41mm)の区別が難しい場合、10山の長さが約13mmならM8、約14mmなら5/16インチと判定できます。
ねじには並目(標準ピッチ)と細目(ファインピッチ)の2種類があり、同じ呼び径でもピッチが異なります。並目ねじは最も一般的に使用される標準規格で、特にピッチの指定がない場合は並目が選択されます。例えばM8の並目ピッチは1.25mmですが、細目では1.0mm、0.75mm、0.5mmなど複数の選択肢があります。
参考)https://nejiya.net/pitch.html
細目ねじは並目ねじに比べてねじ山1つ1つが小さいため、薄肉のパイプに対してねじを切ることができるという利点があります。また、リード角が小さいため1回転させた時に進む量が少なく、精密な位置決めが必要な用途や、振動による緩み止めが必要な場面で有利に働きます。ねじ山強度も高いため、高精度・高負荷の用途に適しています。
参考)https://hamuteru.com/fine-screw/
一方で、並目ねじは汎用性と強度に優れ、一般的な締結作業では並目ねじが推奨されます。細目ねじは特殊な用途に限定して使用するのが基本的な考え方で、多用すると部品管理が煩雑になるデメリットもあります。建築現場では作業効率とコストを考慮し、特別な理由がない限り並目ねじを選定することが一般的です。
参考)https://rivi-manufacturing.com/mechanical-design/screw/3107/
日本の建築業界ではJIS規格とISO規格のねじが使用されていますが、両者には互換性に関する重要な違いがあります。旧JIS規格とISO規格(現在のJIS規格)の主な違いは、M3、M4、M5のねじにおけるピッチです。旧JIS規格ではM3=0.6mm、M4=0.75mm、M5=0.9mmでしたが、ISO規格(現JIS)ではM3=0.5mm、M4=0.7mm、M5=0.8mmとなっています。
参考)https://neji-trivia.jp/2013/01/01/trivia43/
ISOねじとJISねじは基本的な山形が同じであり、多くのサイズで互換性がありますが、ピッチや許容差など一部で違いがあるため注意が必要です。特に輸出入製品や海外部品を扱う場合、この差異を理解せずに設計を進めると締結不良やコスト増の原因になります。設計段階でISO規格とJIS規格を統一しておくことで、生産コスト削減や品質安定につながります。
参考)https://fi-real.net/neji-kikaku-jis-iso-unc/
現在市販されているねじの多くはISO規格に準拠しており、ピッチの指定がない場合は自動的にISO規格の標準ピッチが適用されます。建築現場で使用する際は、図面や仕様書で規格を明確に確認し、旧JIS規格のねじが混在しないよう管理することが重要です。
参考)https://www.rakuten.ne.jp/gold/nejiya/chiebukuro/info_nejibu.html
インチねじとミリねじの換算は建築現場で頻繁に必要となる作業です。インチねじの基準は1インチ=25.4mmで、この数値を使えば電卓で簡単に計算できます。例えば3/8インチの外径は、25.4mm÷8×3=9.525mmとなります。山数からピッチへの換算は、25.4mmを山数で割ることで求められます。
参考)https://faq.osg.co.jp/faq/show/294?category_id=42amp;site_domain=default
インチねじにはユニファイねじ(UNC並目、UNF細目)とウィットねじがあり、UNCが現在の主流です。ウィットねじとユニファイねじは一部のサイズに互換性がありますが、ねじ山の角度が異なるため基本的に別物として扱う必要があります。例えば1/2インチでは、ウィットねじが12山、ユニファイねじが13山と異なります。
参考)https://www.tsurugacorp.co.jp/nejilog/01/04.html
建築現場でよく使われるインチねじのサイズと換算値は以下の通りです。1/4インチ(2分)は外径約6.35mm・20山(ピッチ1.27mm)、3/8インチ(3分)は外径約9.53mm・16山(ピッチ1.59mm)、1/2インチ(4分)は外径約12.7mm・13山(ピッチ1.95mm)です。これらの換算値を覚えておくことで、現場での作業効率が向上します。
参考)https://www.saima.co.jp/product/inch/conversion/
建築現場でボルトやねじを使用する際、山数ピッチ以外にも重要な規定があります。建築基準法施行令では、高力ボルトやボルトの相互間の中心距離(ピッチ)は、その径の2.5倍以上としなければならないと定められています。例えばM20のボルトであれば、ボルト同士の間隔は最低50mm以上必要です。
参考)https://mikao-investor.com/2020/04/20/distance_of_high_tension_bolt/
標準ピッチは締付けによる材間圧縮力の分布範囲や電動レンチの作業性も考慮して決められており、一般的にピッチは60mm、端空き40mmが採用されています。ボルト孔の径についても規定があり、建築基準法施行令ではボルト径+1mm以内、日本建築学会の鋼構造設計規準ではボルト径+0.5mmとしています。実際の現場では製作精度や施工精度を考慮し、1.5~2mmのクリアランスが用いられることが多いです。
参考)https://sasst.jp/qa/q3/q3-23.html
ウィットねじとユニファイねじの識別には特に注意が必要です。同じサイズでもねじ山の角度が異なり(ウィット55度、ユニファイ60度)、混用するとユニファイの雌ねじにウィットの雄ねじは入りますが、逆は入らないか抵抗が大きくなります。ねじとしての機能を十分発揮できず、最悪の場合はねじの破壊につながるため、規格の確認を徹底することが安全管理上不可欠です。
ねじのピッチについて - 建築BLOG'S
建築業従事者向けにミリねじとインチねじのピッチ表が詳しく掲載されています。
ねじ規格・サイズ選定表 | ねじのデータ集
ノギスとピッチゲージを使った実践的な測定方法と規格選定の参考資料です。
ピッチゲージの特長と使い方 | MonotaRO
ピッチゲージの使用方法と角度の確認方法について図解入りで解説されています。