溶接エルボ規格完全ガイド:JIS基準と寸法法則

溶接エルボ規格完全ガイド:JIS基準と寸法法則

記事内に広告を含む場合があります。

溶接エルボ規格の基本知識

溶接エルボ規格の重要ポイント
📋
JIS規格体系

JIS B 2311〜2316で定められた突合せ溶接式管継手の標準規格

📐
寸法法則

ショートエルボ25.4mm、ロングエルボ38.1mmを基準とした計算式

🔧
材料記号

FSGP、PY400など用途に応じた材料分類と適用基準

溶接エルボのJIS規格体系と種類

溶接エルボの規格は、主に4つのJIS規格によって体系的に定められています。最も基本的なJIS B 2311は一般配管用鋼製突合せ溶接式管継手を規定し、使用圧力が比較的低い蒸気、水、油、ガス、空気などの一般配管に適用されます。

 

主要なJIS規格の分類

  • JIS B 2311:一般配管用鋼製突合せ溶接式管継手
  • JIS B 2312:配管用鋼製突合せ溶接式管継手(炭素鋼、合金鋼)
  • JIS B 2313:配管用鋼板製突合せ溶接式管継手
  • JIS B 2316:配管用鋼製差込み溶接式管継手

溶接エルボは角度と曲げ半径によって分類され、角度は90度、45度、180度の3種類が標準化されています。曲げ半径はロングとショートの2種類があり、配管設計においてレイアウトや流体抵抗の要求に応じて選択します。

 

エルボの基本分類

  • 90°エルボ(ロング・ショート):最も使用頻度の高い直角継手
  • 45°エルボ(ロング・ショート):配管の方向転換用
  • 180°エルボ(ロング・ショート):Uターン配管用

ロングエルボは流体抵抗が少なく、ショートエルボはスペース効率に優れるという特徴があります。大口径配管では一般的にロングエルボが推奨され、小径配管やスペースに制約がある場所ではショートエルボが選択されます。

 

溶接エルボの寸法法則と計算方法

溶接エルボの寸法には明確な法則があり、これを理解することで現場での作図検討や寸法確認が格段に効率化されます。基準となる寸法は、ショートエルボが25.4mm(1インチ)、ロングエルボが38.1mm(1.5インチ)で、ロングはショートの1.5倍の関係にあります。

 

F寸法の計算法則

  • ショートエルボ:25.4mm × 径の呼び(B)= F寸法
  • ロングエルボ:38.1mm × 径の呼び(B)= F寸法

例えば100A(4B)ロングエルボのF寸法は、38.1mm × 4 = 152.4mmと計算できます。この法則により、暗算でも寸法を求めることが可能になり、設計者や現場担当者にとって非常に有用な知識となります。

 

ただし、25A(1B)以下の小径については同一寸法となり、ロングの場合は38.1mm、ショートの場合は25.4mmが適用されるため、この法則には当てはまりません。

 

実際の寸法表(90°エルボの例)

  • 25A:ロング38.1mm、ショート25.4mm
  • 50A:ロング76.2mm、ショート50.8mm
  • 100A:ロング152.4mm、ショート101.6mm
  • 150A:ロング228.6mm、ショート152.4mm

これらの寸法は、配管の中心から端面までの距離(F寸法)を表しており、配管設計における最も重要な基準寸法です。

 

溶接エルボの材料記号と適用範囲

溶接エルボの材料記号は、接続される鋼管の種類と密接に関連しており、適切な材料選択が溶接品質と配管システムの信頼性を決定します。主要な材料記号には、一般配管用のFSGPから高温・高圧用途のステンレス系まで多岐にわたります。

 

主要材料記号と適用配管

  • FSGP:SGPSTPY400配管用(一般配管)
  • PY400:SGP、STPY400配管用
  • PG370:STPG370配管用(圧力配管)
  • PS370:STPG370、STS370配管用
  • PS410:STPG410、STS410配管用

ステンレス系材料では、SUS304、SUS316、SUS347、SUS347H、SUS836L、SUS890Lなど、用途に応じた耐食性と耐熱性を持つ材料が選択されます。

 

材料選択のポイント

  • 使用温度:常温から高温まで対応材料の選択
  • 使用圧力:低圧から高圧まで適切な強度材料の選択
  • 流体特性:腐食性流体に対する耐食材料の選択
  • 溶接性:母材との溶接性を考慮した材料選択

配管部品は直管と製造方法が異なるため、成分や強度が若干異なることがあり、溶接材料の選択にも注意が必要です。また、配管部品は形状の複雑さから最小管厚を確保する観点で、直管より管厚が厚く設計されることが多く、接合部での管厚差調整が重要な技術要素となります。

 

溶接エルボの許容差と品質基準

溶接エルボの品質を保証するため、JIS規格では厳格な寸法許容差と品質基準が定められています。これらの基準は、配管システムの安全性と性能を確保するために不可欠な要素です。

 

寸法許容差の基準(JIS B2313-2015)

  • 端部外径:1/2〜2 1/2は+1.6/-0.8mm、3〜4は±1.6mm
  • 端面内径:1/2〜2 1/2は±0.8mm、3〜4は±1.6mm
  • 厚さ:+規定しない/-12.5%(最小厚さを満足すること)
  • 中心から端面までの距離:1/2〜2 1/2は±1.6mm

大口径になるほど許容差は大きくなり、10〜18では端部外径が+4/-3.2mm、20〜24では+6.4/-4.8mmとなります。

 

軸芯に対する直角度許容差

  • 1/2〜4:オフアングル0.8mm、オフブレン1.6mm
  • 5〜8:オフアングル1.6mm、オフブレン3.2mm
  • 10〜12:オフアングル2.4mm、オフブレン4.8mm
  • 18〜24:オフアングル3.2mm、オフブレン9.5mm

これらの許容差は、溶接時の品質管理と検査基準の基準となります。製品の端部はベベル加工が施されエッジ状となっているため、取り扱い時の安全面にも十分な注意が必要です。

 

品質管理のポイント

  • 寸法測定:各部寸法の定期的な測定と記録
  • 目視検査:表面欠陥、変形、損傷の確認
  • 非破壊検査:必要に応じた浸透探傷検査の実施
  • 材料証明:材料証明書による材質確認

溶接エルボ規格の実務活用とカスタマイズ技術

実際の配管設計では、標準的な90度や45度では収まらないケースが頻繁に発生し、30度や60度、70度など様々な角度が必要になります。これらの非標準角度のエルボは「端角度(はかくど)エルボ」と呼ばれ、カスタマイズ技術が重要な技術要素となります。

 

端角度エルボの製作方法

  • 施工現場でのカット加工:最も一般的な方法
  • 工場でのプレハブ加工:精度と効率を重視する場合
  • 専用型での製作:大量使用時のコスト削減策

端角度エルボは基本的に少量使用のため、施工工場でのカット加工が一般的ですが、精度や品質を重視する場合は専門メーカーでの製作も選択肢となります。

 

カスタマイズ時の注意点

  • 元の規格寸法からの変更による強度計算の見直し
  • 溶接品質の確保のための開先形状の適切な設計
  • 非破壊検査による品質確認の徹底
  • 図面での明確な寸法指示と公差の設定

また、最近では国際規格との整合性も重要になっており、API規格と国内JIS規格では溶接部の「きず」の許容値が大きく異なることがあります。「きず」の種類によってはJISの方が1/5以下の厳しい基準となる場合もあり、輸出用設備などでは特に注意が必要です。

 

実務での活用テクニック

  • 寸法法則の暗記による現場での迅速な寸法確認
  • 材料記号の理解による適切な材料選択
  • 許容差基準の把握による品質管理の効率化
  • カスタマイズ技術の習得による設計自由度の向上

これらの知識を体系的に理解し実務に活用することで、溶接エルボに関する作業効率と品質の大幅な向上が期待できます。特に設計者や現場監督者にとって、これらの規格知識は必須のスキルといえるでしょう。