100V電源ケーブル規格とVCTFコード基本特性

100V電源ケーブル規格とVCTFコード基本特性

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100V電源ケーブル規格とVCTFコード基本特性

100V電源ケーブル規格の基本知識
規格区分と法規制

電気用品安全法に基づく特定電気用品の分類と100V電源ケーブルの位置づけ

📏
導体断面積と許容電流

0.75mm²から2.0mm²までの標準サイズと安全な電流容量の関係性

🔌
コード種類と用途

VCTF、VCT、KIVコードの特徴と適用場所の違い

100V電源ケーブルの特定電気用品区分と法規制要件

100V電源ケーブルは電気用品安全法における特定電気用品として厳格に規制されています。定格電圧100V以上600V以下のコードが規制対象となり、技術基準では300V以下と規定されています。
🔸 特定電気用品の範囲

  • コード:定格電圧100V以上600V以下(技術基準は300V以下)
  • キャブタイヤケーブル:導体断面積100mm²以下、線心7本以下
  • ビニルキャブタイヤコード(VCTF):交流300V以下で使用

建築現場では、PSE(電気用品安全法)技術基準適合品の使用が義務付けられており、トラッキング対策適用範囲拡大対応品の選択が重要です。100V未満の回路では特定電気用品外となるため、PSE表示がないものもありますが、安全性確保のため認証品の選択が推奨されます。
電磁両立性(EMC)規制も重要な要件です。電源ケーブルは電磁波の伝導経路となるため、無線通信への障害や他の電子機器の機能障害を防ぐ設計が求められます。特に建築物内の配線では、放射妨害波測定時のインピーダンス安定化が重要な技術課題となっています。

100V電源ケーブルのVCTFコード構造と導体断面積規格

VCTFコードは屋内小型電気器具の電源コードとして最も一般的に使用される100V電源ケーブルです。ビニルキャブタイヤコードの略称で、可とう性に優れ、巻込み形電気掃除機等の電源コードに広く採用されています。
📊 VCTF主要仕様

  • 定格電圧:300V(100V未満回路用は特別仕様)
  • サイズ:0.75~2mm²(標準)、3.5~5.5mm²(大容量)
  • 認証:JIS C3306適合、電気用品安全法対応
  • 心数:2心~4心(0.75~2mm²)

日本のJIS規格は独自基準を採用しており、国際標準のIEC規格と完全には合致しません。JISでは0.75sq、1.25sq、2.0sq、3.5sq、5.5sqが標準サイズですが、IEC規格では0.75mm²、1mm²、1.5mm²、2.5mm²、4mm²、6mm²という段階的な構成となっています。
特殊用途向けKVコード
100V未満の通信機器・電子機器内部配線用として、KVコード(通信機器用ビニル電線)があります。定格電圧100V未満、温度60℃(HKVは75℃)の仕様で、可とう撚線使用により柔軟性に優れています。

 

100V電源ケーブルの許容電流と安全基準計算

100V電源ケーブルの適切な選定には許容電流の把握が不可欠です。気中1条、周囲温度30℃の標準条件での許容電流値を基準として計算を行います。
標準許容電流値

  • 0.75mm²:12A
  • 1.25mm²:19A
  • 2.0mm²:27A
  • 3.5mm²:37A
  • 5.5mm²:49A

実際の施工では、ケーブルを束ねる本数による補正が重要です。10本を超える束ねでは熱を持ちやすくなるため、許容電流値に0.7を乗じた値を使用します。また、線路長が60mを超える場合は電圧降下計算も併用する必要があります。
電圧降下計算式
Vd = KILR(簡易式)

  • K:電気方式係数(単相2線式=2、単相3線式=2)
  • I:負荷電流(A)
  • L:線路長(km)
  • R:導体交流実効抵抗(Ω/km)

計算例:単相3線式、100V、3A、80m、KIV2mm²使用時
Vd = 2 × 3 × 0.08 × 10.7 ≒ 5.14V
これは100Vに対して5.14%の電圧降下となり、内線規程の許容値を超えるため、3.5mm²への変更が必要です。

100V電源ケーブルのIEC規格適合とPSE認証要件

100V電源ケーブルの国際規格適合は、建築プロジェクトの海外展開や輸入機器との接続において重要な要件となります。IEC規格60320のC-13コネクタ互換性を持つ製品が多く流通しており、国内外での汎用性が確保されています。
🌐 IEC規格対応の特徴

  • IEC60320 C-13コネクタ互換
  • PC電源コード規格準拠
  • PSE 100V/200V対応
  • C-7(メガネコネクター)、C19プラグ対応

PSE認証は国内販売の必須要件であり、認証番号の確認が重要です。JETマークを持つJET1342-12009-1004などの認証番号により、製品の安全性が保証されています。特に0.3mm²~0.5mm²の細径線は特定電気用品外のためPSE表示がありませんが、100V未満回路での使用に限定されます。
建築現場では、UL・cUL規格にも適合したマルチラバロンMRⅢ-CI等の多国間認証製品の採用が増加しています。これらは制御盤内外の配線に使用可能で、国際プロジェクトでの施工効率向上に貢献します。

100V電源ケーブル選定における電磁環境対策と将来性

現代の建築物では、電磁環境の複雑化により100V電源ケーブルにも高度な対策が求められています。CPU、マイコン、インバータ、スイッチング電源回路から発生する非意図的電磁波が、電源ケーブルを通じて伝導し、無線通信障害や機器誤動作の原因となります。
🔬 電磁環境対策の要点

  • 放射妨害波測定対応
  • インピーダンス安定化回路(VHF-LISN)適用
  • EMC(電磁両立性)規格準拠
  • 人体防護電磁界レベル対応

ワイヤレス給電技術の進歩により「電源ケーブル不要の時代」が議論されていますが、建築分野では当面、有線給電が主流を維持すると予想されます。むしろ、IoT機器の増加により、より高精度な電源品質管理が求められる傾向にあります。
建築業従事者は、将来的な技術変化を見据えながらも、現行規格への確実な対応を基本とした選定を行うことが重要です。特に大型建築物では、電源系統の冗長化や保守性を考慮した100V電源ケーブルシステムの構築が、長期運用の鍵となります。

 

国際標準化の動向も注視が必要で、日本独自のJIS規格からIEC規格への段階的移行も検討されており、設備設計時の将来互換性確保が課題となっています。