

MIMで作った部品は、切削加工品より30%以上コストが安くなることがあります。
MIM(Metal Injection Molding)とは、「金属粉末」と「樹脂バインダー(結合剤)」を混ぜ合わせた材料を金型に射出成形し、その後に脱脂・焼結工程を経て完全な金属部品を作り上げる製造技術です。1970年代にアメリカで提唱され、日本では1980年代から実用化が進んだ比較的新しい加工法で、「プラスチック射出成形」と「粉末冶金」という2つの異なる技術を掛け合わせたものと理解すると把握しやすいです。
プラスチック射出成形に使う機械とほぼ同じ設備を使う、という点が意外に知られていません。材料だけが樹脂ではなく「金属粉末+バインダーのペレット(フィードストック)」に変わるだけで、射出の動きそのものは通常の樹脂成形と共通です。これはメリットです。
MIMの製造工程は主に4つのステップで構成されています。
ここで特に注意が必要なのが収縮率です。焼結工程でバインダーが抜けた空隙が埋まるため、製品は元の成形体より15〜20%収縮します。ちょうど20cmのサイズのパーツが完成品では16〜17cmになるようなイメージです。そのため金型設計の段階から収縮率を正確に見越して寸法を設定する必要があります。収縮率の管理が鍵です。
世界のMIM市場規模は2024年時点で約46億5,000万米ドルと評価されており、2032年には約89億9,000万米ドルへの成長が予測されています(年平均成長率約8.6%)。これは自動車・医療・電子機器など幅広い産業での採用拡大が背景にあります。建築業においても今後の活用が注目される技術です。
MIMの製造工程について詳しく解説した日本粉末冶金工業会(JPMA)の公式ページもあわせて確認するとより理解が深まります。
日本粉末冶金工業会 – MIM(金属粉末射出成形法)技術紹介ページ
MIMが建築業従事者にとって注目に値する最大の理由は、複雑な形状の金属部品を高精度かつ大量に、しかも比較的低コストで製造できる点にあります。切削加工では5軸加工機など高額な設備が必要になるような複雑形状でも、MIMなら金型を使った射出成形で一体成形できます。つまり工程が減り、加工コストも下がります。
建築業に直結する具体的なメリットを整理すると、以下の通りです。
これは使えそうです。特に錠前・建築金物・各種ブラケットなど、毎月数万個単位で発注しているメーカーや工務店系の調達担当者にとって、MIMへの切り替えはコスト競争力に直結します。
粉末冶金との違いも覚えておくと便利です。粉末冶金(プレス成形)では「単純な形状」かつ「2次元断面がほぼ均一」な部品が対象ですが、MIMは3次元の複雑形状に対応できます。プレス成形で作れない形のネジ穴付き部品やアンダーカット形状のブラケットなどは、MIMが有力な選択肢になります。
MIMと他の金属加工工法との詳細な比較が整理されたページです。工法選定の参考資料として活用できます。
MIMの利点は大きいですが、注意すべき制約もしっかり把握しておく必要があります。知らずに採用を決めると、コスト超過や品質トラブルにつながるリスクがあります。厳しいところですね。
最初のハードルは金型コストの高さです。MIM用の精密金型は製作費が数十万円〜数百万円規模になることも珍しくなく、少量生産には向きません。一般的に年間数万個以上の量産体制が整って初めてコストメリットが出てくる製法です。建築資材の中でも「全国展開する製品のパーツ」や「大手メーカーへの納入部品」を想定しているケースが最も導入しやすい条件と言えます。
次にサイズ制限があります。MIMで量産コストメリットが出るのは、重量がおおよそ50g以下の小型部品が中心です。名刺サイズ(縦9cm×横5.5cm)より小さな金属パーツを大量に作る用途に向いています。30gを超えると材料コスト(金属微粉末はkgあたり数千円と高価)が上がり、コストメリットが出にくくなります。大型の建築構造部材には適しません。
また、MIM単体の精度は「約±0.3%」であり、切削加工(±0.1mm程度)より若干劣ります。5mm以下の部品なら±0.03mm、20〜30mmのサイズでは±0.15mmが目安です。高精度が求められる箇所は成形後に二次加工(機械加工・研磨)を加える必要があり、その分のコストも見込んでおく必要があります。二次加工は有料です。
さらに、成形条件の設定が難しいという技術的な課題もあります。MIM用材料は樹脂と比べて熱伝導率が高く固まりやすいため、バリやショートなどの成形不良が出やすく、安定生産のための条件ウィンドウが狭いです。発注する側として信頼できるMIMメーカーを選ぶ目を持つことが、品質リスクを下げるうえで重要です。
以下の表は主要な工法とMIMの特性を比較したものです。
| 項目 | 機械加工(切削) | 粉末冶金 | ロストワックス | MIM |
|---|---|---|---|---|
| 形状複雑度 | 中 | 低 | 高 | |
| 寸法精度 | 高(±0.1mm) | 中(±1%) | 中〜高(±0.3〜0.5%) | |
| 量産コスト | 高 | 低 | 低〜中 | 中(大量生産時は低) |
| 対応サイズ | 大型可 | 中程度 | 小型(〜50g推奨) | |
| 材料の幅 | 広い | 限定的 | 広い(難削材も可) |
MIMのデメリットと注意点が体系的にまとめられている解説記事は、発注前のチェックリストとして役立ちます。
Neway Precision – メタルインジェクションモールディングの利点・欠点と注意点
MIMで建築業の調達コストを変えた事例は、実は他産業の代替事例に多くのヒントが隠れています。建築業で直接「MIM採用事例」として語られることは少ないのですが、電線工具部品・防犯部品・高速ポンプ羽根など、建築・インフラ工事の現場に関わる部品でMIMへの切り替えが進んでいます。これは意外ですね。
日本粉末冶金工業会(JPMA)が公開している代替事例では、以下のような成果が報告されています。
建築業との接点で考えると、たとえば錠前・ドアクローザー・サッシ用精密金具・設備配管の小型バルブ部品などは、このような代替事例と共通する条件(小型・複雑形状・大量使用)を満たしています。こういった部品を大量に発注・調達している立場であれば、現在の調達先にMIM製法への切り替え検討を打診する価値があります。
MIMへの切り替えを検討するうえでの実践的なフロー例を整理すると、次のようになります。
材料利用効率が100%近いことも、建設業における環境配慮・SDGs対応という観点で有利に働く可能性があります。廃材スクラップが少ない製法は、グリーン調達の基準に適合しやすいです。これが条件です。
JPMAによるMIM代替事例の一覧は、工法変更を検討する際の具体的な参考資料になります。
日本粉末冶金工業会 – MIM応用例(他工法からの代替事例)
MIMで使用できる金属材料の幅広さは、他の精密加工法と比べて際立った強みのひとつです。金属粉末の種類を変えるだけで、多様な機械的特性・耐食性・磁気特性を持つ部品を製造できます。結論は「素材選択の自由度が高い」ということです。
建築業従事者が知っておくべき主要材料の特徴を以下にまとめます。
素材選択で注意したい点が1つあります。MIM用の金属粉末は粒径10μm前後の微粉末で、kgあたり数千円と高価です。そのため部品重量が30gを超えると材料コストが急増しやすく、50gを超える部品ではコストメリットが出にくくなります。小型・軽量な部品だけが対象です。
また、MIM部品は焼結後も通常の金属と同様に、メッキ加工・表面研磨・熱処理・陽極酸化処理などの表面処理が可能です。建築業では外観品質や耐候性も重要なため、この汎用性は大きなメリットになります。
ステンレス鋼を含む各種材料のMIM適用例や特性については以下のページが詳しく、素材選定の際に参考になります。
Neway Precision – 金属射出成形(MIM)で使用できる金属の種類
MIMを使って良い部品を作るためには、設計段階から「MIMらしい形状設計」を意識することが大切です。従来の切削加工で設計された図面をそのままMIMに転用しても、不良が出やすかったり、コストメリットが得られなかったりするケースがあります。設計の見直しが前提です。
MIM部品設計の基本ルールとして押さえておきたいポイントを以下に示します。
建築業の文脈で具体的に言うと、錠前のシリンダー内部部品・サッシ用クレセント錠の回転体・ドアクローザーのギア部品などは、複雑形状・小型・高精度という条件を満たしており、MIM設計ルールに沿った再設計で一体化・コスト削減が実現しやすい部品群です。
MIM化に向けた部品設計の詳細なポイントや不良防止の考え方については、日本粉末冶金工業会の専門ページが参考になります。

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