

圧密試験を「ただ沈下量を出すだけの試験」と思っていると、設計値が最大30%以上ずれて後から追加杭工事が必要になることがあります。
圧密試験(consolidation test)の最も基本的な目的は、粘性土地盤が上載荷重を受けたときにどれだけ沈下するか、またその沈下がどのくらいの速さで進行するかを定量的に予測することです。
特に軟弱な粘性土地盤、たとえば海岸沿いや河川下流域の埋め立て地・沖積粘土層が厚く堆積した地域では、建物や盛土の荷重によって地盤内の間隙水が長時間かけて排出され、体積が圧縮されます。この現象を「圧密」と呼びます。
圧密は速い話ではありません。厚さ10mの粘土層が1/2圧密(沈下量の半分が完了)するまでに、数年から十数年かかるケースも珍しくないのです。
設計の現場では、この「どれだけ・どのくらいの速さで沈下するか」が分からなければ、基礎形式の選定も地盤改良工法の選択も成立しません。圧密試験はその根拠データを提供するための不可欠なプロセスです。
試験では直径6cm・高さ2cm程度の薄い円形供試体(はがき1枚分の直径のイメージ)を用い、段階的に荷重を載荷しながら時間経過による沈下量を計測します。この地道な計測作業から、地盤の本質的な力学特性が引き出されます。
圧密試験から得られる主要なパラメータは大きく3つあります。それぞれが設計のどの場面で使われるかを理解しておくことが基本です。
① 圧縮指数(Cc)と膨潤指数(Cs)
圧縮指数Ccは、e-logP曲線(間隙比と有効応力の対数関係を示すグラフ)の正規圧密領域における傾きです。Ccの値が大きいほど、荷重増加に対して地盤がより大きく圧縮されることを意味します。東京湾岸の沖積粘土では、Ccが0.6〜1.2程度になるケースもあり、この数値を誤って小さく見積もると最終沈下量が実際の半分以下で計算されてしまいます。
② 圧密降伏応力(Pc)
圧密降伏応力Pcは、その地盤が過去に受けた最大有効応力の目安です。つまり「地盤の記憶」といえます。
現在の有効土被り圧Poに対するPcの比(OCR:過圧密比)が1より大きければ「過圧密状態」、1であれば「正規圧密状態」を示します。この判定によって、沈下量の計算式そのものが変わります。過圧密地盤は正規圧密地盤と比べて沈下しにくいですが、その境界を誤認すると設計値が大幅にずれます。
③ 圧密係数(Cv)と時間係数
圧密係数Cvは圧密の速さを表し、時間係数Tvを介して沈下完了までの時間を予測するために使います。液状化対策や盛土の施工管理においても、「何年後にどの程度沈下しているか」というスケジュール管理の根拠になります。
これが条件です。3つのパラメータを正確に読み取ることが、信頼性の高い沈下予測の第一歩となります。
e-logP曲線は圧密試験結果の「顔」です。この曲線の読み方を誤ると、地盤の状態評価が根本から狂います。
横軸に有効応力Pの対数(logP)、縦軸に間隙比eをプロットすると、折れ曲がりを持つグラフが得られます。この折れ曲がり点付近が圧密降伏応力Pcを示しており、Casagrandeの作図法を用いて視覚的に決定するのが一般的です。
意外ですね。Casagrande法は作業者によって読み取り値が変わりやすく、同じ試験データから異なる2人の技術者がPcを判定すると、10〜20%程度のばらつきが生じることも報告されています。
このばらつきが設計に与える影響は軽視できません。たとえばPcを高めに読みすぎると「過圧密地盤」と判定されて沈下量が少なく見積もられ、施工後に想定外の不同沈下が発生するリスクが生まれます。
対策として、e-logP曲線の読み取りは担当者1人だけでなく、複数の技術者でクロスチェックを行う運用が望まれます。また近年は、デジタルデータ処理によってCasagrandeの作図をアルゴリズム化し、読み取りのブレを抑えるソフトウェアも活用されるようになっています。
過圧密比OCRは、Pc ÷ Po(現在の有効土被り圧)で求めます。OCR = 1.0が正規圧密、OCR > 1.0が過圧密です。OCRが2.0を超えると沈下量の計算式が大きく変わるため、この判定には十分な注意が必要です。
圧密試験には複数の種類があります。現場での用途によって使い分けが必要です。
標準圧密試験(段階載荷試験)
JIS A 1217に規定された最も一般的な方法です。荷重を段階的に倍増させながら(たとえば10→20→40→80→160kPa)、各ステップで24時間の沈下計測を行います。試験期間は通常5〜7日程度かかります。作業が定型化されており、多くの試験機関で対応可能なのが強みです。
定ひずみ速度圧密試験(CRS試験)
供試体に一定のひずみ速度を与えながら連続的に荷重と変形を計測する方法です。試験時間を大幅に短縮できる(標準試験の1/3〜1/4程度)という大きなメリットがあります。
これは使えそうです。ただし、ひずみ速度の設定を誤ると背圧比(供試体内部の水圧と排水境界の差)が過大になり、結果の信頼性が損なわれます。適切なひずみ速度は供試体の透水性によって異なるため、事前の透水試験結果を参照することが望ましいです。
自重圧密試験
超軟弱な浚渫土や廃棄物処分場の底泥など、自重だけでも圧密が生じるような非常に軟らかい材料を対象とします。試験装置の設定が特殊で、専門的な設備が必要です。
試験方法の選択は、地盤の状態・要求精度・工期のバランスで決まります。「コストを抑えたいからとにかく短期間で終わらせたい」という理由だけでCRS試験を選ぶと、適切な設定管理が伴わない場合に精度が落ちるリスクがあります。選択理由を明文化しておくことが後々のトレーサビリティにも役立ちます。
日本工業規格(JIS A 1217)の圧密試験方法の詳細については、公式情報での確認が推奨されます。
日本規格協会(JSA)公式サイト – JIS規格の閲覧・購入
圧密試験の結果は、単に「沈下量がいくらか」を知るためだけに存在するわけではありません。地盤改良工法の選定、施工管理計画、さらには維持管理方針まで、一連の設計実務を支える根幹データとして活用されます。
バーチカルドレーン工法(サンドドレーン・プラスチックボードドレーン)への活用
軟弱粘性土地盤の圧密を促進するバーチカルドレーン工法では、ドレーン材の間隔・本数・設置深度を決めるためにCv(圧密係数)と最終沈下量が不可欠です。Cvが小さい(圧密が遅い)地盤では、ドレーン間隔を狭くする必要があり、材料コストが大きく変わります。
プレロード(先行盛土)工法との組み合わせ
盛土荷重を事前に載荷して圧密を促進し、供用後の沈下量を減らすプレロード工法では、「どのくらいの荷重をどのくらいの期間載荷すれば目標圧密度が達成されるか」を時間係数Tvと圧密係数Cvから計算します。
圧密度が基本です。プレロード期間の設定を誤って90%未満の圧密度で盛土を撤去すると、その後に残留沈下が続き、路面のひび割れや段差の原因になります。
深層混合処理工法(CDM工法など)の適用判断
改良強度の設計においても、原地盤の圧縮特性を把握しておくことが、改良体の変形挙動予測に貢献します。特に改良率(改良体の体積比)の設定には、未改良部の沈下量見込みが前提となります。
設計の現場では、圧密試験の結果を孔内水平載荷試験(PMT)やスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)などの他の地盤調査と組み合わせることで、より立体的な地盤評価が可能になります。
地盤工学会が発行する「地盤調査の方法と解説」は、圧密試験の解釈方法と工法選定への応用が体系的にまとめられた実務参考書として広く使われています。
ここが独自視点です。圧密試験の結果と実際の現場沈下量が一致しないケースは少なくなく、「試験はやったのに予測が外れた」という経験を持つ技術者も多いはずです。この乖離の原因を理解しておくことが、設計精度の向上につながります。
① サンプリング攪乱の影響
ボーリングで採取した不撹乱試料(Shelbyチューブサンプルなど)でも、採取・運搬・試験準備の過程で少なからず攪乱を受けます。攪乱によってPcが低めに出る傾向があり、「正規圧密」と判定された地盤が実は「弱過圧密状態」だったというケースもあります。
試料の質が条件です。高品質な試料を得るためには、固定ピストン式シンウォールサンプラーの使用や、採取後の速やかな温度管理・振動回避が重要です。
② 試験体のスケールと実地盤の不均質性
直径6cm・高さ2cmの供試体は、実際の地盤の一部分を代表しているに過ぎません。実地盤には砂の薄層や有機質の偏在など、1本のボーリング孔周辺でも組成が変動します。複数地点で採取した試料を平均化して設計値とすることが基本ですが、地盤の変動が大きい場合は試料数を増やす(標準的な10m間隔より狭めるなど)判断も求められます。
③ 二次圧密(クリープ)の見落とし
一次圧密(間隙水の排出による体積変化)が完了した後も、土骨格のクリープ変形によって沈下が続く現象が「二次圧密」です。有機質土や高液性限界の粘土では、二次圧密係数Cαが無視できない大きさになります。
二次圧密は見落とされがちです。特に道路盛土や鉄道盛土のような長期供用が前提の構造物では、一次圧密後も数十年にわたって数cm〜数十cm規模の沈下が続く場合があります。設計寿命を考慮した総沈下量の算定には、Cαを含めた検討が欠かせません。
現場での沈下計測データ(沈下板・傾斜計など)を定期的に試験結果の予測値と照合し、乖離が顕著な場合は地盤モデルを修正するフィードバックループを持つことが、長期的なリスク低減につながります。
地盤工学における二次圧密や長期沈下予測の詳細については、国立研究開発法人土木研究所の技術資料も参考になります。
国立研究開発法人 土木研究所(PWRI)– 軟弱地盤に関する技術資料
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