
深層混合処理工法は、別名「柱状改良工法」とも呼ばれ、軟弱地盤を改良するための効果的な工法です。この工法は、セメント系固化材と水を混ぜた「スラリー」を地盤に注入しながら、専用の機械で土と混合攪拌することにより、地盤内に柱状の改良体を築造します。
基本的な施工手順は以下の通りです。
深層混合処理工法には主に2種類の方式があります。
現在は、スラリー攪拌方式が主流となっています。この方式では、スラリー状のセメント系固化材を軟弱地盤に注入し、軟弱地盤とともに撹拌混合することで、化学的に固化させ、改良体を造成します。
代表的な工法としては、CDM工法、アスコラムTYPEⅡ工法、CDM-LODIC工法などが挙げられます。これらの工法は基本原理は同じですが、使用する機械や改良体の形状などに違いがあります。
深層混合処理工法は、地上から深さ8mほどの柔らかい地層の上に建造物が建てられるように地中を強化する工事です。地中の土を固めることで、地震時の液状化や不同沈下を防ぎ、建物の安全性を確保することができます。
深層混合処理工法は様々な地盤条件に適用可能ですが、特に不同沈下の可能性がある砂質土や粘性土で構成された軟弱地盤に適しています。
適用可能な地盤条件。
一方で、以下のような地盤条件では適用が難しい場合があります。
改良深度は一般的には10m程度までですが、工法によっては最大50m程度まで対応可能なものもあります。改良強度は用途や要求性能によって異なりますが、一般的には設計強度を確保するために、事前に配合試験を行い、最適な固化材の種類や添加量を決定します。
改良形式には以下のようなものがあります。
適用目的としては、構造物基礎、すべり対策、沈下対策、液状化対策などがあり、改良効果として砂質土では液状化防止や沈下低減、粘性土では強度増加や沈下低減、せん断変形の抑制などが期待できます。
深層混合処理工法は、住宅建設だけでなく、道路や鉄道の建設、海や川の堤防工事など、多岐にわたる用途で活用されています。それぞれのプロジェクトに応じて、最適な改良形式と強度を選定することが重要です。
深層混合処理工法には多くのメリットがあります。主なメリット
これらのメリットにより、特に住宅密集地での施工や中規模建造物の基礎工事において優れた選択肢となっています。
深層混合処理工法の施工管理においては、以下のポイントが重要です。
テノコラム工法など一部の工法では、施工管理システムを導入することで、リアルタイムで施工状況をモニタリングし、品質管理を効率的に行うことができます。これにより、設計から要求される品質・出来形を確保することが可能になります。
深層混合処理工法による改良体は地盤中にあるため、通常目視確認することができません。そのため、設計から要求される品質・出来形を確保するには施工管理を適切に行うことが極めて重要です。施工管理の質が、最終的な改良効果に大きく影響するので、専門性の高い業者選定も重要なポイントとなります。
深層混合処理工法にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。主なデメリット
特に注意すべき問題として「六価クロム問題」があります。六価クロムは発がん性物質で、土壌汚染対策法で定められた特定有害物質です。
六価クロムが発生するメカニズムは以下の通りです。
このリスクを低減するためには。
施工前の十分な地盤調査と適切な固化材の選定が、六価クロム問題を回避するための重要なポイントとなります。また、土地売却時には、深層改良を行った事実を不動産業者に伝えておくことが、後のトラブル防止のために必要です。
地盤改良工法を選定する際には、技術的な適合性だけでなく、費用対効果も重要な判断基準となります。ここでは、深層混合処理工法と他の主な地盤改良工法を比較します。
表:地盤改良工法の比較
工法 | 適用深度 | コスト | 環境影響 | 適用土質 | 主な用途 |
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深層混合処理工法 | 10〜50m | 中 | 低騒音・低振動 | 砂質土・粘性土・有機質土 | 不同沈下対策・液状化対策 |
表層改良工法 | 2m程度 | 低 | 低騒音・低振動 | 表層の土質に依存 | 浅層部の強度増加 |
鋼管杭工法 | 深い支持層まで | 高 | 騒音・振動あり | ほぼ全ての土質 | 支持力確保・液状化対策 |
置換工法 | 表層〜中層 | 土量による | 残土処分が必要 | ほぼ全ての土質 | 軟弱層の除去 |
深層混合処理工法の費用は、地盤条件や改良深度、改良面積などによって大きく変動しますが、一般的には1坪あたり6万〜8万円程度が相場です。例えば、30坪の住宅であれば約180万〜240万円の費用が目安となります。
工法選定の際のポイント。
深層混合処理工法は、中規模の建造物の地盤改良に特に適しており、短期間で比較的安価に行える利点があります。一方で、非常に大きな建物や特殊な地盤条件の場合は、他の工法との組み合わせや代替工法の検討も必要です。
一般的には置換工法が最も安くて確実ですが、残土処分費用によっては費用が高くなる場合もあります。このような場合、深層混合処理などのセメント固化系の処理が最適な選択肢となることがあります。
コスト削減だけを優先せず、長期的な安全性や耐久性、将来的なメンテナンスコストなども含めた総合的な判断が重要です。また、施工後の土地売却を考慮する場合は、原状復帰が難しい点も考慮に入れる必要があります。
以上、深層混合処理工法の特徴と欠点について詳しく解説しました。適切な工法選定により、安全で経済的な基礎構造を実現しましょう。