

振動が激しい現場でも普通の圧力計を付けたままにすると、数ヶ月で指針がずれて修繕費が数万円かかります。
建築現場や設備工事で圧力計というと、大多数の方がまず「丸い文字盤に指針が動くアナログ計器」を思い浮かべるはずです。しかし一口に圧力計といっても、内部の受圧素子(どのように圧力を感知するか)によって大きく4種類に分かれます。それぞれ得意な条件や適した用途が異なるため、現場の状況に合わせて選ぶことが重要です。
まず最も広く使われているのがブルドン管式圧力計です。内部に断面が楕円形の金属パイプ(ブルドン管)を備え、圧力がかかるとそのパイプが変形し、その変形量を指針に伝えて圧力を表示します。構造がシンプルで製造コストが低く、水・空気・油などの一般的な流体の計測に広く活用されています。給水設備、空調設備の冷温水配管、消火設備など、建築設備工事の現場で最もよく見かけるタイプです。
次にダイヤフラム式(隔膜式)圧力計があります。薄い金属板(ダイヤフラム)が圧力を受けてたわむことを利用した計器で、プロセス流体がブルドン管に直接触れない構造が特徴です。腐食性の高い薬品や粘性の高い流体が含まれる配管に使用されます。スラリー(固形物混じりの液体)が流れる配管でも使えるため、排水処理や特殊な配管系統に向いています。ただし高圧になるとダイヤフラムが破損するリスクがあるため、高圧系への適用は慎重に判断する必要があります。
ベローズ式圧力計は、蛇腹(ベローズ)状の金属円筒に圧力をかけ、縮み量を指針に伝える方式です。圧力への感度が高く、ブルドン管では動きが小さすぎる低圧・微差圧の測定に使われます。ダクト内の空気圧測定や負圧管理が必要なアスベスト除去作業などで活躍します。一方で構造が複雑なため、同じサイズのブルドン管式と比べると製造コストが高い点がデメリットです。
最後に液柱式圧力計(マノメータ)は、U字管に液体を充填し、片側から圧力をかけたときの液面差を読み取る最も古典的な方式です。原理がシンプルで精度が高いという特長がありますが、装置が大きくなりがち・壊れやすいという弱点があり、現在は主にダクト内の差圧測定など限られた用途で使われています。
つまり用途と流体の性質が選定の出発点です。
| 種類 | 主な特徴 | 建築設備での主な用途 |
|---|---|---|
| ブルドン管式 | シンプル・安価・耐久性良好 | 給水・空調・消火配管 |
| ダイヤフラム式(隔膜式) | 腐食性・高粘度流体に対応 | 薬液配管・排水処理 |
| ベローズ式 | 低圧・微差圧に高感度 | ダクト圧測定・負圧管理 |
| 液柱式(マノメータ) | 原理明快・高精度だが大型 | 差圧計測・換気確認 |
圧力計の種類・特徴に関する技術的な詳細は、長野計器株式会社や第一計器製作所の技術資料が参考になります。
建築設備の現場では「ブルドン管式」を選べばひとまず問題ない、と思っている方も多いかもしれません。しかし、ブルドン管自体にもいくつかの形状があり、測定する圧力のレンジに応じて最適な形が変わります。この違いを知らずに選ぶと、指針の動きが小さすぎて読み取りにくくなったり、精度が落ちたりすることがあります。
C形(C型ブルドン管)は文字通りアルファベットの「C」の字に曲げた形状で、最も広く使用されている標準的な形状です。計測可能な圧力レンジが幅広く、正確性と耐久性のバランスに優れています。C形ブルドン管の管先(先端)の動きは、最大目盛り時で2〜5mm程度と非常に小さく、この変位量をリンク・歯車機構で拡大して指針に伝えます。建築設備の一般的な用途では、ほとんどの場合このC形で十分対応できます。
一方、スパイラル管(渦巻き型)とヘリカル管(つる巻き型)は、管の長さ自体を長くすることで、同じ圧力に対する変位量を大きくした形状です。スパイラルやヘリカルは、C形に比べて管先の動きが数倍大きくなるため、低圧で指針をより大きく動かしたい場面に向いています。具体的には、微圧・低圧の計測が必要な換気設備やクリーンルームの差圧管理など、わずかな圧力変化を正確に読み取りたいケースで使われます。
これが基本です。
ただし、スパイラルやヘリカルはC形に比べて構造が複雑になる分、製造コストが高くなります。また、管の内容積が大きいため圧力応答がやや遅くなるという特性もあります。現場での選定基準は「測定したい圧力レンジが低いか高いか」と「どれだけ細かく圧力変化を読む必要があるか」の2点を確認することです。
長野計器のコーポレートサイトでは、C形ブルドン管の構造と特徴が詳細に解説されています。
圧力計のカタログを見ると、「A型(縁なし形)」「B型(丸縁形)」「D型(埋込形)」といった記号が必ず登場します。これがケース形状と呼ばれる分類で、圧力計を「どこにどのように取り付けるか」によって選ぶ形状が変わります。意外にも、形状を誤ると取り付け自体ができなかったり、配管への接続方向が合わなかったりするトラブルが起きます。
A型(縁なし形)は、ケースの前面に縁(フランジ)がない最もシンプルな形状です。配管に直接ねじ込んで固定する一般的な取り付けに使われ、価格も最も安価です。現場での「配管に直付け」はほとんどがこのA型です。接続部(ねじ)は下部または後部に位置しており、配管の取り出し方向に合わせてどちらを選ぶか確認が必要です。
B型(丸縁形)は、ケース後部に丸い縁(フランジ)を持つ形状です。パイプや壁面への固定に縁を使えるため、安定したブラケット取り付けができます。屋外設備など風雨・振動が加わる場所でも動きにくく、視認性の確保が求められる場所に向いています。また「B2型(前縁形)」は縁がケース前面に付いており、パネルの前面から見た際に見栄えよくまとまります。
D型(埋込形)は、計器板やパネルに圧力計を「はめ込む」形で設置するタイプです。接続部(ねじ)が計器の背面(裏側)中央に位置しているため、パネルの表から見ると計器の文字盤しか見えず、すっきりとした外観になります。電気盤内・コントロールパネル・集中監視盤への組み込みに多く使われます。
形状が決まったら接続部の位置も要チェックです。
また、ケース形状と並んで重要なのが株(スパナ掛け)の形状です。圧力計を配管に取り付ける際、接続部のスパナ掛け部分が「T株(四角)」「U株(二面)」「S株(六角)」の3種類あります。六角(S株)が最もスパナをかけやすく、どの角度からでも締め付けられるため作業性が良好です。狭いスペースへの取り付けや、工具が入りにくい場所では株の形状も選定の大切なポイントになります。
圧力計の選定フロー(形状編)について詳しく解説されているページを紹介します。
圧力計を選ぶとき、「常用圧力が0.3MPaくらいだから、0.3MPaの圧力計を付ければいい」と考えるのは実は間違いです。これが意外と現場でよくある誤解で、適切でないレンジの圧力計を使い続けると、指針まわりの機構が早期に疲労・損傷し、故障の原因になります。つまり寿命が短くなるリスクがあります。
圧力計の正しいレンジ選定の基本ルールは次の通りです。常用圧力が一定圧(変動が少ない)の場合は、圧力計フルスケールの75%以下を常用圧力の上限に。常用圧力に変動(脈動・ポンプの吐出圧の上下)がある場合は、フルスケールの60%以下を上限にします。たとえば常用圧力が0.50MPaで変動がある場合、0.50 ÷ 0.60 ≒ 0.83MPaとなり、レンジは0〜1.00MPaのものを選ぶのが正解です。
この目安が条件です。
指針がスケール中央付近に来るようなレンジを選ぶことで、視認性も上がります。逆にレンジの上限・下限付近ばかりで指針が動いている状態が続くと、変動圧がレンジ範囲外に飛び出したり、ON/OFFを繰り返したりして、指針まわりの部品に大きなダメージが生じます。
次に取り付けねじのサイズと種類も見落とせないポイントです。圧力計の接続部には「Rねじ(管用テーパねじ)」と「Gねじ(管用平行ねじ)」の2種類があります。Rねじはねじ自体が先細りのテーパ形状になっており、シールテープを巻いてねじ間でシールする方式です。Gねじはねじが平行で、相手側の座面にパッキンを入れてシールします。建築配管で最もよく使われるのはR(旧PT)ねじですが、混在していることもあるため、既存配管のねじ形状を事前に確認することが大切です。
またφ(外径)のサイズもポイントです。圧力計の外径はφ40〜φ200mmまであり、それぞれ製作できるねじサイズが異なります。例えばφ100mmの圧力計に対応するねじサイズは3/8〜1/2インチで、φ40mmの小型圧力計はR1/8しか製作できません。取り付け口の径と圧力計サイズが合っているかどうかも必ず確認しましょう。
圧力計のレンジ選定についての技術的な参考情報は長野計器の製品資料で確認できます。
建築設備の現場では、ポンプや圧縮機の近く、あるいは外部からの振動が伝わりやすい配管に圧力計を取り付けるケースが多くあります。このような振動・脈動が激しい環境で通常のブルドン管式圧力計をそのまま使い続けると、指針が振れて読み取れないだけでなく、数ヶ月以内に内部機構が摩耗・疲労して故障します。これは知らないと大きな損失につながります。
振動・脈動がある環境での対策として最も効果的なのがグリセリン入り圧力計の使用です。圧力計内部のケースにグリセリン(グリセロール)液を充填しており、このグリセリンが内部のブルドン管や歯車機構の動きを減衰させます。その結果、振動による指針の細かい揺れが大幅に抑えられ、安定した読み取りができます。また振動に起因する内部部品の早期摩耗も防げるため、通常の圧力計より大幅に寿命が延びます。
これは使えそうです。
目安として、現場で配管や機器に手を当てたときに「振動が感じられる」場合は、グリセリン入り圧力計の選定を検討してください。グリセリン入りの製品は、通常の圧力計より価格が少し高くなりますが(同じ外径・レンジで数百〜数千円程度の差)、早期故障による交換コストや現場の確認・作業コストと比べれば、はるかに割安です。
また、密閉形圧力計はケース全体が密閉構造になっており、屋外・雨水・粉塵・塩分を含む空気が漂う環境に適しています。建築現場の屋外設備や、水処理施設の屋外計器には、密閉形がほぼ必須です。一般の開放型では内部に湿気や粉塵が入り込み、錆びや目詰まりによる誤動作が起きやすくなります。
さらに高温流体(蒸気配管など)では、計器本体に高温流体が直接触れないようサイフォン管(豚のしっぽ状の導圧管)を使って間接的に圧力を伝える方法が一般的です。サイフォン管内で流体が冷却されてから圧力計に導入されるため、計器の熱損傷を防ぎます。ただし保温施工の際、サイフォン管まで保温してしまうと冷却機能が失われるため、絶対に保温してはいけません。
グリセリン入り圧力計の選定基準・取扱方法の詳細については、第一計器製作所の取扱説明書が参考になります。
圧力計の形状やレンジが正しく選定できていても、流体の種類や精度等級の確認を怠ると、重大な事故や計測不良につながるケースがあります。建築設備の現場では「水か空気かオイルくらいしか使わない」と思いがちですが、実は流体の種類によって圧力計の材質・仕様が大きく制限されることがあります。これが意外な落とし穴です。
例えば酸素配管に使用する圧力計は、内部に油分が残っていると酸素と反応して発火・爆発する危険があります。必ず禁油・禁油禁水仕様の圧力計を選定しなければなりません。消火設備や医療ガス設備では特に注意が必要な項目です。またアンモニアに接触する部分には鉄鋼またはステンレス鋼を使用し、銅合金は絶対に使用してはいけません。冷凍・冷蔵設備の配管では見落とされやすいポイントです。
流体への注意は必須です。
精度等級についても確認しておきましょう。JIS B 7505-1で規定されるブルドン管圧力計の精度等級は、0.6級・1.0級・1.6級・2.5級・4.0級の5段階があります。数字が小さいほど精度が高く(誤差が少なく)、価格も上がります。建築設備の一般的な圧力監視では1.6級が広く採用されており、耐圧試験に使用する圧力計には1.6級以上が求められることが多いです(石油学会などの規格でも2年以内に校正済みの1.6級以上が規定されています)。精密な計測が必要な場面で4.0級の安価な圧力計を使ってしまうと、読み取り誤差が最大で全目盛りの±4%にもなり、正確な計測ができなくなります。たとえば1.0MPaフルスケールの4.0級圧力計であれば、指針が示す値に対して最大±0.04MPaの誤差が生じ得ます。
また、圧力計の外径(φサイズ)の選定も重要です。φ40〜φ75mm程度の小型品は狭いスペース向けですが、文字盤が小さく読み取りにくいというデメリットがあります。現場での視認性を確保するには、φ100mm以上の製品が推奨されます。特に高所・遠距離から目視確認が必要な計器には、φ150mmやφ200mmを選ぶと作業効率が上がります。
圧力計の規格・精度等級については、右下精器株式会社の解説ページが参考になります。