バキュームブラストと循環式ブラストの違いと選び方

バキュームブラストと循環式ブラストの違いと選び方

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バキュームブラストと循環式ブラストの違い・選び方

循環式ブラストはどの現場でも使えると思っているなら、それが工期遅延と追加コストを招きます。


バキュームブラストと循環式ブラストの違い|3つのポイント
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仕組みの違い

バキュームブラストはノズルと吸引が一体化した「密閉型」。循環式ブラストは研削材を回収・再投射する「循環型」。どちらも粉じん対策に優れるが、構造がまったく異なります。

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施工速度の違い

循環式ブラストは広面積(目安:1,000㎡以上)で真価を発揮。バキュームブラストは養生が困難な狭小部・端部向きで、広面積になるほど効率が下がります。

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廃棄物・コストの違い

循環式ブラストは産業廃棄物を従来工法比で最大1/40に削減。鉛・PCB含有現場では処分費が約4.6億円削減できた実績もあり、コスト差が非常に大きくなります。


バキュームブラストの仕組みと循環式ブラストとの構造的な違い


バキュームブラストと循環式ブラストは、名称が似ているために混同されやすい工法ですが、その構造はまったく別物です。まず、それぞれの基本的な仕組みから理解しておきましょう。


バキュームブラストは、ブラストノズルと吸引回収ホースが一体化した「バキュームヘッド」を処理面に押し当て、その密閉された空間の中でブラスト処理を行う工法です。噴射と同時に研削材・粉じん・塗膜片を吸引回収するため、粉じんや研削材が外部に飛散しません。いわば「完全密閉型の局所処理」というイメージです。


つまり飛散防止が最大の特徴です。


一方、循環式ブラストは、研削材(主に金属系スチールグリット)を鋼材表面に投射した後、剥離した塗膜くずと使用済み研削材を同時に吸引回収し、分別タンクで研削材と廃棄物を分離して研削材を再投射する「研削材の循環再利用」が核心にある工法です。大きく分けると、循環式エコクリーンブラスト・循環式ハイブリッドブラストシステム(JHBS)・循環式ツーノズルバキュームブラストなど複数の工法が存在します。


「循環式」という名前に「バキューム」という言葉がついた工法(循環式ツーノズルバキュームブラスト)もあり、バキュームブラスト単体との混同に注意が必要です。循環式ツーノズルバキュームブラストは、バキューム(密閉回収)の仕組みと研削材循環の仕組みを組み合わせた工法で、1台で2人同時施工が可能な機械として国土交通省NETISにも登録されています。


構造の違いが、適用できる現場の違いに直結します。この違いを知らずに工法を選ぶと、後で大きな手戻りが生じるリスクがあります。


循環式ハイブリッドブラストシステム工法協会|工法の種類(バキュームブラスト・循環式ハイブリッドブラストの特徴と違いを図解で確認できます)


バキュームブラストが循環式ブラストより適している現場条件とは

現場条件によって、バキュームブラストの方が明確に優位となるケースがあります。これが条件です。


バキュームブラストが特に力を発揮するのは、「飛散防護の養生が困難な場所」です。橋梁の支承まわり・端部・ウェブのリブ裏など、足場を組んでも大型装置を設置しにくい狭小な部位では、バキュームヘッドを押し当てるだけで施工できるバキュームブラストが重宝されます。循環式ブラストの機械(例:循環式ツーノズルバキュームブラスト機の標準重量は1,750kg)は4トン車搭載が必要で、常時設置が難しい現場も少なくありません。


また、住宅街や生活道路沿いなど周辺環境への騒音・粉じん配慮が特に求められる現場でも、バキュームブラストは「低騒音・低粉じん・乾式」という特性を活かせます。


意外ですね。


逆に、バキュームブラストの大きな弱点は「施工速度の遅さ」です。土木学会のレポートによると「時間あたりの施工速度は遅く、広範囲の施工には不向き」と明示されています。一般的なブラスト施工の目安として1日あたり20〜70㎡/口とされていますが、バキュームブラストはこの中でも遅い部類に入ります。施工面積が大きくなるほど工期が延び、それに伴う足場費用・仮設費用も増加することを見落としてはなりません。


さらに、施工部位に制限があることも注意点です。バキュームヘッドを面に密着させる構造上、複雑な形状や凹凸のある部分には対応しにくいという特性があります。つまりバキュームブラストは「特定部位の精度ある施工」に向き、「全体的な大面積の素地調整1種ケレン」には循環式ブラストが適している、という棲み分けが成立します。


日本トリート株式会社|バキュームブラスト工法(用途・メリット・活用フィールドを詳しく解説)


循環式ブラストが産業廃棄物を1/40に削減できる理由と鉛・PCB現場での金額効果

循環式ブラストの最大の武器は「研削材の循環再利用による廃棄物削減効果」です。数字で見ると、その差は驚くほど大きくなります。


従来のオープンブラスト(エアブラスト)工法では、安価な非金属系研削材(高炉スラグなど)が使われてきました。この研削材は塗膜に衝突した瞬間に破砕してしまうため、1回使い切りになります。1㎡あたり約30〜40kgの研削材が必要で、塗膜くずと混ざった状態で産業廃棄物になります。東京ドームの床面積が約46,755㎡であることを考えると、1,000㎡の鋼橋を処理するだけで30〜40トンもの廃棄物が生じる計算です。


これが基本です。


循環式ブラストでは、耐摩耗性の高い金属系研削材(スチールグリット等)を繰り返し使用するため、研削材由来の廃棄物がほぼゼロになります。一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト工法協会(JSCB)が取得した建設技術審査証明では、高炭素鋳鋼グリット等級A使用時の研削材削減率が99.89%と第三者機関により確認されています。


最も効果が顕著になるのが、旧塗膜に鉛やPCBが含まれる橋梁の塗替え工事です。国土交通省の実工事報告によれば、静岡県の野田高架橋(塗装面積6,000㎡)において、従来工法では産業廃棄物が約246トン発生し、PCB廃棄物の処理費用だけで約4億9千万円が必要と試算されました。循環式エコクリーンブラスト工法を採用した結果、廃棄物を従来の1/25に削減でき、コストは約0.8億円で収まり、約4.6億円の節減を実現した実績があります。


痛いですね、コスト差が。


鉛・PCB含有塗膜が含まれる現場でのPCB廃棄物処理費は現状で1kgあたり約2,000〜3万円と幅広く、廃棄物量が少なければ少ないほど直接的な節約になります。古い橋梁(昭和40年代〜50年代架設)を扱う機会が多い建築・土木従事者ほど、この差を強く意識する必要があります。


国土交通省 中部地方整備局|循環式エコクリーンブラスト工法による鉛・PCB有害物質を含む産業廃棄物の削減効果(実工事のコスト比較データを収録)


施工速度・コスト分岐点から見たバキュームブラストと循環式ブラストの使い分け判断基準

「どちらの工法を選ぶか」は、施工面積とコスト分岐点を知ることで判断しやすくなります。


滋賀県の技術資料によると、従来のサンドブラスト工法と循環式エコクリーンブラスト工法のコスト縮減の分岐点の目安は、「塗装面積が約1,000㎡を超えればコスト縮減が期待できる」とされています。つまり、広い面積になるほど循環式ブラストの経済的優位性が高まります。


施工単価の目安として、循環式エコクリーンブラストで1㎡あたり13,362円(ヤマダインフラテクノス社データ)という数字があります。一方バキュームブラストはコンパクト設備が特徴ですが施工速度が遅い分、時間当たりコストは高くなる傾向があります。これは使えそうです。


一方、循環式ブラストには機械設備の重量・サイズというハードルがあります。標準的な循環式ツーノズルバキュームブラスト機の重量は1,750kg、外形寸法は2,100mm×1,500mm×2,100mm(L×W×H)と、4トン車で搬入が必要な規模です。歩道橋・支承部・狭隘なリブ裏などへの常時設置は難しく、こうした部位ではバキュームブラスト(または循環式の一部バリエーション工法)を組み合わせる判断が必要になります。


実際に、循環式ハイブリッドブラストシステム工法協会(JHBS)では「飛散防護が困難な場所ではバキュームブラストの施工も可能」とポイントを挙げており、両工法の組み合わせ使用も選択肢として認識されています。


比較項目 バキュームブラスト 循環式ブラスト
施工速度 遅い(狭小部向き) 速い(広面積向き)
廃棄物削減 △(一定の回収効果あり) ◎(最大1/40削減)
機材サイズ コンパクト・軽量 大型(4t車搭載)
適した部位 狭小部・端部・支承まわり 広面積の桁面・フランジ
鉛・PCB含有対応 △(密閉回収で一定対応) ◎(廃棄物大幅削減で処分費も節約)
養生の要否 ほぼ不要(密閉構造) 専用養生シート必要


面積・部位・廃棄物の有害性の3点が条件です。


建築業従事者が見落としやすい「循環式ブラストの選別装置一体化」と品質リスクの落とし穴

現場で循環式ブラストを使っているのに「思ったほど廃棄物が減らない」「施工品質が落ちた」という声を聞くことがあります。その原因の多くは、機械構成の「落とし穴」にあります。


循環式ブラスト工法®を定める一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト工法協会(JSCB)では、よくある施工上のリスクとして次の点を挙げています。


まず、「選別装置とブラストタンクが一体化していない機械」の問題です。選別装置とブラストタンクが分離した状態では、有害粉じんが施工現場周囲に飛散してしまう恐れがあります。類似工法には、この一体化が不十分なものが存在しており、JCSBでは類似工法への注意喚起を公式サイトに掲載しています。


次に、「硬度の高い(脆い)研削材」を使用するリスクです。硬い研削材は摩耗が早く鋼材への刺さりが起きやすいため、産業廃棄物量の増加や塗装品質の低下に直結します。循環式ブラスト工法®では、高炭素鋳鋼グリットやSUS430カットワイヤのような靭性の高い金属系研削材が推奨されています。研削材の選定ひとつで99.89%の削減率が実現するかどうか変わるわけです。


さらに注目してほしいのが「PCB含有機材と非含有機材の混在管理リスク」です。PCB専用機材とPCB以外の鉛用機材を区別せずに使い回すと、PCB未含有現場も汚染するリスクがあります。廃棄物の追跡義務があるPCB廃棄物の管理ルール(廃棄物処理法・PCB特別措置法)に違反すれば、特別管理産業廃棄物管理責任者への法的責任が生じます。これは健康リスクと法的リスクの両方に関わる問題です。


これが原則です。


品質・環境・法的対応の全てに関わる「機械選びと管理体制」こそが、バキュームブラスト・循環式ブラストどちらを選ぶにしても、現場担当者が見落としてはならない核心です。施工前に、使用する機械の選別装置一体化の有無、研削材の種類と推奨グレード、PCB対応管理体制の3点を確認する習慣を持つと、トラブルの大半を未然に防げます。


一般社団法人 日本鋼構造物循環式ブラスト工法協会(JSCB)|循環式ブラスト工法®の受賞歴・安全管理・よくある質問・類似工法との比較(施工時のチェックポイントが詳しくまとめられています)




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