

珪砂を普通に使い続けると、じん肺で一生治らない肺の病気になります。
サンドブラストで使用する「砂」は、正式にはメディア(投射材・研磨材)と呼ばれます。圧縮空気に混ぜて製品表面へ高速噴射し、錆の除去・塗装剥離・素地調整・梨地加工などを行います。名前に「サンド(砂)」が入っていますが、現在の現場では普通の砂を使うケースはほとんどありません。つまり最初から「代用」が前提の工法です。
メディアは大きく次の3系統に分類されます。
| 系統 | 代表素材 | 主な用途 |
|------|----------|----------|
| 金属系 | スチールグリット・ステンレス・亜鉛 | 素地調整・除錆・アンカーパターン形成 |
| 非金属系 | アルミナ・ガラスビーズ・ガーネット・炭化ケイ素 | 幅広い表面処理・梨地仕上げ |
| その他素材 | クルミ・ナイロン・メラミン樹脂 | デリケートな製品の仕上げ・バリ取り |
何を選ぶかで仕上がりが変わります。この判断が、作業品質を決める最初の分岐点です。
建設業の現場では下地処理(ケレン処理)での使用頻度が高く、塗膜の密着性に直接影響します。「何でも使える」ではなく「目的に合わせて選ぶ」が原則です。
代用素材ごとの特性を正しく理解することが、コスト削減と品質確保を両立させるポイントです。選択を間違えると、仕上がりが目標に届かなかったり、素材を傷つけたりするリスクがあります。
🔷 アルミナ(酸化アルミニウム)
エアーブラスト(サンドブラスト)で最もよく使われる非金属系メディアです。硬度はあらゆる金属よりも高く、不規則でエッジを持った形状のため、強力な切削力があります。鋼材の黒皮除去・錆落とし・塗装の密着性を高めるアンカーパターン形成に適しています。
種類は主に2種類です。
- 褐色溶融アルミナ:硬く研削力が高い。鉄鋼製品の素地調整に多用される
- 白色溶融アルミナ:純度が高く被加工物を汚染しない。精密部品に向く
🔷 ガラスビーズ
ソーダ石灰ガラスを球状に加工したメディアです。球体形状のため表面をほとんど削らず、打痕を均一に形成します。金属表面に微細な凹凸をつける梨地(なしじ)仕上げに最適で、建築金物や外装部材の質感向上にも使われます。研削はほぼしないため、錆落としや塗膜剥離には不向きです。
🔷 珪砂(けい砂)
石英を砕いて作られた砂で、国内ではホームセンターでも入手できます。一般的なメディアの約5分の1のコストで調達できる点が最大のメリットです。粒度は2号〜8号まであり、号数が上がるほど粒が細かくなります(5号≒0.5mm、7号≒0.2mm)。DIYや小規模作業での使用実績はありますが、後述するシリカ問題から取り扱いには厳密な注意が必要です。これが条件です。
🔷 ガーネット(ざくろ石)
宝石系の天然鉱石を砕いたメディアで、赤色が特徴的です。硬度が高く割れにくいため繰り返し使用でき、鉄鋼ブラストや橋梁の素地調整にも採用されています。シリカを含まないため健康リスクが低く、環境負荷も小さい点が注目されています。
🔷 クルミ・植物系メディア
クルミや桃の種を破砕して作った植物系メディアで、硬度は低めです。デリケートな表面を傷つけずに洗浄や軽い研磨ができます。アルミダイカストのバリ取りや精密機器の表面仕上げ、木材や樹脂製品への加工にも適しています。環境への負荷が少なく廃棄もしやすいのが利点です。
🔷 スチールグリット・スチールショット
鉄を主成分とする金属系メディアです。比重が大きく破砕しにくいため耐久性に優れ、繰り返し使用するコスト面での優位性があります。表面を大きく粗面化したい場合に適しており、橋梁鋼材や建設重機の素地調整でも採用されています。摩擦接合部のすべり係数確保にも使われる場面があります。
各メディアの特性をまとめると、「削る力」「仕上がりの滑らかさ」「コスト」「健康リスク」のバランスで選ぶことになります。これだけ覚えておけばOKです。
「ホームセンターで安く買える珪砂を使えばいい」と考えている建設業従事者は多いはずです。しかし、珪砂は国際標準化機構(ISO)の規格から除外されており、業務利用には深刻なリスクが伴います。
珪砂の主成分はシリカ(二酸化ケイ素)です。ブラスト作業中、珪砂の粒子は衝突のたびに細かく粉砕され、遊離シリカが大量に発生します。この微粒子を継続的に吸い込むことで発症するのが「珪肺(けいはい)」です。珪肺はじん肺の一種であり、一度発症すると完治しない不可逆的な肺疾患です。進行すると呼吸困難・肺結核・原発性肺がんなどの重篤な合併症を引き起こします。
珪肺の発症は作業期間によって3段階に分類されています。
| 分類 | 発症までの目安 | 特徴 |
|------|----------------|------|
| 急性珪肺 | 数週間〜5年以内 | 急速に進行し重篤化しやすい |
| 加速性珪肺 | 5〜10年以内 | 合併症を起こしやすく複雑化する |
| 慢性単純性珪肺 | 10年以上 | 最も多い。初期は症状が軽い |
シリカ結晶は、国際がん研究機関(IARC)によりグループ1(ヒトへの発がん性が認められる物質)に分類されており、日本の労働安全衛生法でも危険性物質1Aに指定されています。アメリカでは業務用ブラストでの珪砂使用は法律違反とされており、違反すれば刑事罰の対象です。厳しいですね。
国内でもJIS規格(JIS Z 0310など)から珪砂は除外されており、業務用のサンドブラスト作業には原則として使用されません。DIYや小規模作業での使用は法的グレーゾーンですが、健康被害のリスクは変わりません。シリカを含まない代替メディアへの切り替えが推奨されます。
珪砂を現場で使いたい場合、まず粉じん障害防止規則に基づく適切な設備・保護具の準備と、管轄の労働基準監督署への届出が必要です。このリスクを正しく知ることが、従業員の健康と会社の法的責任を守ることに直結します。
参考:珪砂の危険性と珪肺についての詳細は岡垣興業の解説記事が参考になります。
サンドブラストに珪砂が危険な理由!実は有害! – 岡垣興業株式会社
メディアを選ぶ際にありがちな失敗は、「コストだけ」で判断することです。安価なメディアを選んでも仕上がりが要求水準に届かなければ、やり直しのコストが発生します。結論は「目的・素材・予算の3点を同時に考える」です。
✅ 選定ステップ1:仕上がりのゴールを決める
塗装前の下地処理(アンカーパターン形成)が目的なら、多角形で切削力の高いアルミナやスチールグリットが適しています。梨地仕上げや光沢感が目的なら、球状のガラスビーズが最適です。バリ取りや精密部品の洗浄であれば、クルミやナイロンメディアを選びます。「仕上がりのゴール」が明確でないと、メディア選定はできません。
✅ 選定ステップ2:素材との相性を確認する
被加工物の素材硬度とメディア硬度のバランスが重要です。アルミのような柔らかい金属に硬度の高いスチールグリットを使うと表面を過剰に傷つけます。逆に、薄いメディアで硬い鋼材を処理しようとすると時間がかかり非効率です。
- 鋼材・橋梁鉄部 → スチールグリット、アルミナ
- アルミ・亜鉛合金 → ガラスビーズ(7号程度の細粒珪砂も可)
- 木材・樹脂・精密部品 → クルミ・ナイロンメディア
✅ 選定ステップ3:粒度(号数・メッシュ)を指定する
同じアルミナでも粒度が粗ければ表面粗さが大きくなり、細かければ滑らかに仕上がります。塗装前処理の場合、表面粗さが過剰になると必要以上に厚い塗膜が必要になり、材料費が増します。これは痛いですね。建設業の実務では、使用する塗料の種類・膜厚に合わせて表面粗さの目標値を設定し、それに合う粒度のメディアを選定するのが正しい手順です。
参考:不二製作所のメディア選定解説は、研磨材形状と加工面の違いが写真付きで確認できます。
サンドブラスト(エアーブラスト)は、労働安全衛生法の「特定粉じん作業」に該当します。これは業種を問わず適用されるため、建設業の現場でも正確に把握しておくべき内容です。知らないと法令違反になります。
📋 事業者が行うべき主な法的義務
- 設置届出(設置30日前まで):局所排気装置を新設・移設・変更する際、所轄の労働基準監督署長への届出が必要(労働安全衛生法第88条)
- 作業環境測定(6ヶ月ごとに1回):粉じん濃度を作業環境測定士が測定し、記録を7年間保管(粉じん障害防止規則第25条・26条)
- 定期自主検査(1年に1回):局所排気設備の性能検査を実施し、記録を3年間保管(粉じん障害防止規則第17条・18条)
- 特別教育の実施(就業前):特定粉じん作業に従事させる前に、防じん教育を実施する義務(粉じん障害防止規則第22条)
- じん肺健康診断:就業時・定期(3年ごと)に、医療機関での検診を受けさせる義務(じん肺法第7条・第8条)
特に見落とされやすいのが、毎日の清掃義務です。粉じん障害防止規則第24条では、特定粉じん作業の屋内作業場では毎日1回以上の清掃と、月1回の真空掃除機または水洗いでの清掃が義務付けられています。普通の箒での掃き掃除は、粉じんを再び舞い上がらせるため規則違反になります。
😷 保護具の選択も重要です
防じんマスクは使い捨て式のものでも対応できますが、粉じんの種類や濃度によっては電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)が必要になるケースもあります。シリカ含有のメディアを使用する場合は特にレベルの高い保護具が必須です。これは後から取り返しがつきません。
参考:サンドブラスト装置に関わる法令と届出手続きの詳細は以下が参考になります。
「砂系メディア」そのものを使わずにブラスト効果を得る方法として、ソーダブラストとウェットブラストという工法があります。これは検索上位記事では詳しく取り上げられていない独自視点ですが、建設業の現場判断に役立つ情報です。
🧪 ソーダブラスト(重曹ブラスト)
重曹(炭酸水素ナトリウム)を圧縮空気で噴射する方法です。重曹は非常に柔らかい素材のため、金属を傷つけることなく塗膜や油脂を除去できます。シリカを含まないため健康リスクが著しく低く、廃棄物も環境負荷が少ないのが特徴です。
ただし、研削力はほぼないため、深い錆や厚い旧塗膜の除去には不向きです。木材、アルミサッシ、電気設備の付近での施工など、通常のブラスト作業が難しい場所でも使える点が評価されています。これは使えそうです。
💧 ウェットブラスト(液体ホーニング)
水とメディアを混合して噴射する方法です。粉じんの発生が大幅に抑えられるため、シリカ系メディアを使用する場合でも粉じんリスクが低減できます。仕上がりは通常のドライブラストより滑らかで、金属表面の均一な梨地加工に優れています。
設備コストが高く、廃水処理が必要になる点がデメリットです。精密部品や複雑な形状の素材には非常に有効で、航空・宇宙・自動車分野では広く採用されています。建設業でも特殊仕上げや環境制約のある現場で採用されるケースが増えています。
ソーダブラストやウェットブラストは「メディアの代用」よりさらに進んだ発想で、作業環境全体の問題を解決する手段です。コスト・仕上がり・安全性の3点で既存の砂系メディアと比較検討する価値があります。

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