
バーリング加工において最も重要な要素の一つが下穴径の設定です。下穴径は材料の板厚とタップサイズによって決定され、適切な寸法選択が加工品質を大きく左右します。
標準的なタップ用バーリング下穴径一覧:
タップサイズ | ピン径 | 下穴寸法 |
---|---|---|
M2.5 | φ2.1 | φ1.2 |
M3 | φ2.6 | φ1.5 |
M4 | φ3.4 | φ2.0 |
M5 | φ4.3 | φ2.4 |
M6 | φ5.1 | φ2.8 |
この基本寸法表は、一般的な加工条件での参考値となります。実際の加工では、材質や板厚に応じて微調整が必要になることがあります。
バーリング加工では、下穴を押し広げて材料の伸びを利用してフランジを成形するため、下穴径の設定が仕上がり寸法に直接影響します。バーリングの縁は伸ばされて板厚が減少し、一般的には元の板厚の70%程度まで薄くなります。
下穴径計算の基本式:
バーリング中心直径(dm)の面積から下穴径(d)を求める計算式を使用し、材料の伸び率を考慮した設定を行います。
材質によってバーリング寸法は大きく異なり、それぞれの特性を理解することが重要です。特に軟鋼、アルミ、SUS(ステンレス)では加工特性が大きく異なります。
軟鋼(SPCC等)のバーリング寸法特性:
アルミのバーリング寸法特性:
SUS(ステンレス)のバーリング寸法特性:
これらの材質差は、分子構造や硬度の違いによるもので、現場での加工経験と合わせて最適な寸法を選択することが重要です。
タップサイズごとのバーリング寸法は、JIS規格や各メーカー推奨値に基づいて標準化されています。建築現場でよく使用されるM3からM8までの詳細寸法を紹介します。
M3タップ用バーリング寸法:
M4タップ用バーリング寸法:
M5タップ用バーリング寸法:
M6・M8タップ用バーリング寸法:
板厚とバーリング径の関係は比例関係にあり、板厚が厚くなればバーリング径も大きくする必要があります。例えば、板厚1.0mmに対してM2のバーリング径では金型の構造上加工が困難となり、最小でもM3以上の径が必要となります。
バーリング加工には上向きと下向きの2つの加工方向があり、それぞれ異なる寸法設定と特性を持ちます。加工方向の選択は、製品の用途や後工程を考慮して決定します。
上向きバーリングの寸法特性:
下向きバーリングの寸法特性:
加工方向による寸法差:
上向きと下向きでは、同じタップサイズでも若干の寸法差が生じることがあります。これは金型構造の違いと材料の流動特性によるものです。
実際の製品設計では、この微細な寸法差も考慮して図面寸法を決定することが重要です。
建築金具などでは、取り付け方向や美観を考慮して加工方向を選択し、それに応じた適切な寸法設定を行います。
バーリング加工において高精度な寸法を実現するためには、設計段階から製造工程まで一貫した寸法管理が必要です35。建築業界では特に、構造的強度と施工性の両立が求められるため、細やかな寸法管理が重要となります。
設計段階での寸法管理:
板厚1.0mmに対してM2バーリングは加工困難のため、最小M3以上を選択
SUSの場合は収縮を見込んで大きめのバーリングチップを使用
金型選定時の寸法考慮点:
下穴同時型は精度向上に有利だが、金型コストが高い
加工工程での寸法管理:
バーリング高さHと内径寸法の同時測定
材料ロット変更時の寸法変動確認
品質保証のための寸法管理:
特にバーリング高さ測定用の専用ゲージの精度管理
材質・板厚・タップサイズごとの寸法傾向分析
現場での実践的寸法管理技術:
建築現場特有の要求として、施工時の取り付け精度も考慮した寸法管理が必要です。
運搬・保管時の変形を防ぐ梱包方法の確立
温度変化によるアルミ材の寸法変動対策
現場での簡易測定治具の活用
これらの寸法管理ポイントを体系的に実施することで、バーリング加工品の品質安定化と施工精度の向上を実現できます。特に建築業界では、安全性に直結する構造部材への適用も多いため、より厳格な寸法管理が求められています。