

防カビパテは通常の石膏系や炭酸カルシウム系パテに防カビ剤を配合し、下地からのカビ発生を抑制する目的で開発された内装用補修材である。
真菌に対する抵抗性試験では、住宅環境で検出頻度の高い菌種を含む数十種規模のカビを対象に、温度28〜30度・相対湿度85%以上という厳しい条件で28日間培養する方法が用いられている。
このような試験に合格した防カビパテは、長期にわたるカビ抑制を期待でき、浴室周りや北側壁などカビリスクの高い部位での採用が増えている。
防カビパテを用いる場合でも、コンクリートやモルタルなど湿式下地の含水率が高い状態で施工すると、壁紙の剥がれやカビ再発の原因になるため、十分な乾燥管理が前提条件となる。
一般に、湿式下地やシーラー・パテを施した箇所は水分率11%以下を目安としており、乾燥が不十分なままクロスを施工すると、内部結露やアルカリ残留により防カビ性能が十分に発揮されないリスクがある。
現場では下地の含水率測定や養生期間の確保に加え、換気計画や暖房機器の利用などで乾燥環境を整えることが求められ、単に「防カビパテだから大丈夫」という感覚施工は避けるべきである。
湿式下地の乾燥条件や施工上の注意事項を詳しく解説した資料。
サンゲツ ビニル壁紙「施工上の注意」PDF
既存浴室をユニットバスへリフォームするケースでは、既存の在来浴室壁に対してカビ取り・除菌・防カビ処理を行った上で、断熱ボードを張り、その後の仕上げ層に防カビパテを組み合わせる事例が報告されている。
特に「冬暖かくカビが生えない浴室」を目標とする場合、断熱化による結露低減と、防カビパテや防カビ塗料による表面環境の整備をセットで考えることで、カビの三要素(温度・湿度・栄養)のうち湿度と栄養を抑え込みやすくなる。
ユニットバスの天井・壁の継ぎ目や、壁と浴槽の隙間・コーキング周りはカビが集中しやすく、防カビコーキングや防カビナノコートなどの表面処理と、防カビパテを使った下地補修を組み合わせることで、メンテナンス性の高い浴室空間を実現できる。
浴室のカビ取り・防カビ工事の考え方と薬剤選定の参考になるサイト。
共生エアテクノ「カビの除去・防止工事」
防カビ難燃パテの技術資料では、PBM法と呼ばれるカビ抵抗性試験において、71菌種もの真菌を対象に長期間培養し、カビの発育状況を評価していることが示されている。
この試験には住宅で発生頻度の高い約60菌種も含まれており、試験環境は実際の居住環境よりも高温多湿に設定されているため、ここで良好な結果を示すパテは実環境では十分な防カビ性能を発揮しやすいと考えられる。
一方で、この種の試験は「材料表面にカビが発育しにくい」ことを示すにとどまり、現場での施工不良や雨水浸入、漏水などによる水分供給が続けば、周辺材からカビが広がる可能性は残るため、パテだけに頼った防カビ設計は危険である。
防カビ難燃パテの特長とカビ抵抗性試験内容をまとめた技術資料。
松村石油研究所「防カビ難燃パテ」PDF
防カビパテは本来クロス下地などの平滑化用途だが、建築現場では床下点検口周りや設備開口部の縁、給気口近辺の結露しやすい部分に限定的に使い、将来のカビ調査用の「見本ゾーン」を設けるといった独自活用も考えられる。
例えば、北側外壁の特定スパンだけ防カビパテを採用し、他のスパンは通常パテとすることで、数年後の点検時にカビ発生状況を比較し、次回物件の仕様選定にフィードバックするという「現場実証テスト」として機能させることができる。
また、居室側の壁だけでなく、玄関収納内や洗濯機置き場周りなど、生活上の湿気がこもりやすいが見落とされがちな箇所に重点的に使用することで、ユーザーの体感上の「カビの少ない住まい」という印象を高め、引き渡し後の評価や口コミにも間接的に影響を与え得る。