

防火塗料を塗った木材でも、単体で不燃認定を取得した塗料は現在の法律では存在せず、現場で塗装するだけでは建築基準法違反になる場合があります。
木材は、コンクリートや鉄骨といった無機質素材と比較すると、燃焼リスクを持つ可燃材料です。そのため、建築基準法では建築物の用途や規模に応じて、内装・外装の仕上げ材に「防火材料」を用いることが義務付けられています。これを「内装制限」および「外装制限」と呼びます。
内装制限の対象となる建物は多岐にわたります。具体的には、ホテル・旅館・病院・百貨店・映画館・倉庫・自動車修理工場などの特殊建築物、3階以上の建築物、延べ面積が1,000㎡を超える建築物などが該当します。つまり、住宅以外の多くの商業・公共施設がこの対象に入るということです。
防火材料とは何かというと、国土交通大臣が定めた基準を満たし、一定時間の火熱に対して「燃焼しない」「有害な変形・損傷が生じない」「有害な煙またはガスを発生しない」という3要件を満たす建築材料のことです。これが条件です。
防火材料には3つのグレードがあります。
| グレード | 加熱時間の基準(750℃環境下) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 🥇 不燃材料 | 加熱開始後 20分 間、3要件を満たす | 劇場・病院など最高グレードが必要な部位 |
| 🥈 準不燃材料 | 加熱開始後 10分 間、3要件を満たす | 商業施設・学校の天井・壁など |
| 🥉 難燃材料 | 加熱開始後 5分 間、3要件を満たす | 比較的規模の小さい建物の内装仕上げ |
加熱時間のイメージとして、20分という時間は「消防車が現場到着して初期消火行動をとれる目安」程度の時間です。つまり、不燃材料は避難と消火活動の確保を前提にした基準と考えると理解しやすくなります。
ポイントは、「防火材料かどうかは素材を問わない」という点です。法令は素材ではなく性能で判断するため、基準を満たせば木材も防火材料として認められます。つまり不燃木材は使えます。ただし、そのままの木材では当然この基準を満たせないため、薬剤注入などの「不燃化処理」が欠かせません。
建築基準法の内装制限は建築基準法第35条の2に規定されており、違反した場合は是正指導・工事停止命令の対象となります。工事停止命令に従わずに工事を続けた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることもあります。厳しいですね。
建築基準法における内装制限の詳細・対象建物の一覧については、以下の国土交通省が提供する電子法令集で確認できます。
防火塗料という言葉は広義の総称であり、実際には「不燃塗料」「準不燃塗料」「難燃塗料」「防炎塗料」など複数の種類があります。それぞれの意味を正確に理解していないと、現場で誤った製品を選定するリスクがあります。これは使えそうな知識です。
🔸 防火塗料(総称)
不燃塗料・準不燃塗料・難燃塗料の総称です。木材などの有機系材料に塗布することで、その防火性能を維持・補助する役割を持ちます。「防火塗料を塗れば木材が不燃になる」と思い込むのは危険です。
🔸 不燃塗料
750℃の温度環境下で加熱開始後20分間、燃焼しないなどの3要件を満たすと認定された塗料です。不燃基準が条件です。ただし後述するように、「単体で不燃認定を取得した塗料」は現状の法律上では存在しません。
🔸 準不燃塗料
同じく750℃下で加熱開始後10分間、3要件を満たす塗料です。商業施設の天井・壁などで多く採用されます。
🔸 難燃塗料
750℃下で加熱開始後5分間、3要件を満たす塗料です。防火性能とコストのバランスを重視する場面で使われます。
🔸 防炎塗料
「防火塗料」とは別物で、消防法上の「防炎物品」に関する基準に対応した塗料です。燃え広がりを遅らせる効果はありますが、防火材料(不燃・準不燃・難燃)としての認定には対応しません。防火塗料と防炎塗料は混同しやすいため注意が必要です。
🔸 耐火塗料
木材ではなく鉄骨に塗布するものです。火災時に250℃前後で発泡し、20〜30倍に膨張した炭化層が断熱層として鉄骨の温度上昇を抑えます。木材には使用しないため、混同しないようにしましょう。
ここで重要なのは、「防火塗料は不燃木材の防火性能を低下させないための塗料であり、普通の木材を不燃化する塗料ではない」という点です。結論はここに集約されます。普通の木材に防火塗料を塗っても、建築基準法上の内装制限をクリアすることにはなりません。
なお、大手ゼネコンの大成建設技術ソリューション社が、「塗るだけで難燃木材」として国土交通大臣認定(難燃材料、認定番号RM-0062)を取得した「難燃WOOD塗るだけ」という製品も2022年に登場しています。この製品は塗布のみで難燃材料として認定された例外的なプロダクトです。ただし、これは「難燃」レベルの認定であり、不燃・準不燃レベルの認定を塗布のみで取得したものではない点には注意が必要です。
大成建設|木材の難燃化を実現する塗料「難燃WOOD塗るだけ」を開発(参考:難燃レベルの大臣認定取得事例)
建築業に携わる多くの方が誤解しているのが、「不燃認定を取得した木材に、不燃認定を取得した塗料を塗れば問題ない」という考え方です。これは間違いです。
現状の制度では、塗料は何らかの被塗材とのセットでしか不燃認定を取得できません。つまり「単体で不燃認定を取得した塗料」というものは存在しないのです。
これがどういう意味かというと、以下の2つのケースに分かれます。
- ケースA:木材単体で不燃認定を取得している場合
この木材に現場で塗装を行うと、認定を申請した仕様(塗装なしの状態)と異なる仕様になってしまいます。その結果、認定が失効し、法的な防火材料としての扱いを受けられなくなります。
- ケースB:木材+塗装のセットで不燃認定を取得している場合
この場合、認定された特定の塗料を認定された方法で施工する必要があります。塗布量・含水率・360度全面塗装などの管理条件が細かく指定されており、これを現場で完全に再現することは非常に難しいとされています。
重要なのは、ケースBであっても「認定通りの施工管理ができない現場塗装は、実質的に認定外となるリスクがある」という点です。塗布量が不足すると防火性能だけでなく白華現象(後述)のリスクも高まります。
国土交通省も「不燃材料に不燃塗料を塗装した場合であっても、塗装品として新たな不燃材料認定を受ける必要がある」という見解を示しています。これが原則です。
なお、実際に2011年には国土交通省が不燃木材の大臣認定に関する仕様不適合の事案を公表しており、認定外の製品が市場に出回っていたことが問題視されました。現場担当者が認定番号を確認せずに施工を進めてしまうと、こうしたリスクに巻き込まれる可能性があります。
国土交通省|不燃木材に関する不燃材料の大臣認定仕様との不適合について(2011年公表)
現場で防火塗料の施工が発生した場合は、必ず不燃木材の製造元・認定機関・設計担当・建築主事に確認を取り、認定番号と施工仕様の整合性を確認することが求められます。認定番号の確認が条件です。
不燃木材に防火塗料を施工した現場で多く発生するトラブルが「白華現象(はっかげんしょう)」です。白華現象とは、木材内部に含浸させたホウ酸・リン酸系の難燃薬剤が、空気中の水分と反応して表面に浮き出し、白い粉末状に結晶化する現象です。
施工直後はきれいに仕上がっていても、時間の経過とともに白い粉が表面に現れてくることが多く、仕上げ後のクレームにつながりやすいトラブルです。痛いですね。
白華現象が起きやすい主な要因は以下の通りです。
- 施工環境の湿度が高い(相対湿度90%以上の環境では特に発生しやすい)
- 不燃木材の含水率が高い状態のまま塗装している
- 塗布量が不足していて、一部の面から湿気が木材内部に侵入している
- 塗装後の乾燥が不十分で、塗膜が完全に硬化していない
- 材料の発注から施工までの期間が長く、保管中に白華が進行している
北海道立総合研究機構の研究によれば、無塗装の難燃処理木材は、相対湿度90%の高湿度環境では薬剤の種類を変えるだけでは白華を完全に防止することが難しいとされています。つまり、適切な塗装による封止処理が白華防止の根本対策です。
白華現象を防ぐための実践的な対策としては、以下のアプローチが有効です。
| 対策の種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 🌡️ 含水率の管理 | 塗装前に不燃木材の含水率を確認し、高湿度状態での塗装を避ける |
| 🎨 塗布量の厳守 | 認定仕様で定められた塗布量を守る(不足すると白華リスクが上昇) |
| 🔄 全面塗装の徹底 | 木材の四方全面(360度)を塗装し、未塗装面からの湿気侵入を防ぐ |
| 📦 適切な保管 | 直射日光・雨水を避け、風通しのよい場所で保管する |
| 🏭 工場塗装の採用 | 温湿度管理が徹底された工場で塗装を行い、現場での施工ムラを排除する |
白華が発生してしまった場合は、固く絞った布で木目方向に水拭きし、乾拭きをすることで落とすことができます。ただし、再発防止には根本的な原因への対処が不可欠です。
白華トラブルを防ぐための塗料として、キャピタルペイント社の「モーエン3」のような白華抑制成分を配合した不燃木材専用塗料も市場に存在します。使用する不燃木材の製造元と施工仕様を確認した上で、適合する専用塗料を選定することが確実な対策です。
BBWoodJapan|不燃木材の白華現象とは?原因と対策・除去方法を徹底解説(白華の原因と予防に関する詳細情報)
防火塗装を木材に施す場合、「現場塗装」と「工場塗装」のどちらを選択するかは、品質・法的リスク・コストに直結する重要な判断です。結論から言えば、不燃認定の維持と品質安定の観点から、工場塗装が強く推奨されています。
現場塗装の主なリスクと限界
現場塗装には以下のような問題があります。木材の含水率が現場の湿度環境に左右されやすく、塗装時の状態を一定に保つことが難しいのが現実です。また、塗布量を認定仕様通りに管理するためには専用の自動塗装ガンなどの機材が必要ですが、現場ではそれを用意できないケースがほとんどです。乾燥スペースの確保もハードルが高く、不燃塗料は一般的な塗料よりも乾燥時間がかかる製品が多いという特徴もあります。
さらに、有毒性の高い防腐塗料や不燃塗料の一部は、安全管理上の理由から現場での取り扱いが制限される場合もあります。法的なリスクを含む問題です。
工場塗装のメリット
これに対して工場塗装では、温湿度が管理された環境での施工が可能です。塗布量・乾燥時間・全面塗装の徹底など、認定仕様に定められた条件を安定して再現できます。施工のムラが起きにくく、白華現象の発生リスクも大幅に抑えられます。いいことですね。
工場塗装の場合、発注から納品までのリードタイムの管理も重要なポイントです。工場塗装後の材料は、認定済みの状態で保管・納品されるため、現場での施工管理の手間も軽減されます。施工現場での置き場確保の問題も、一時保管に対応している工場を選ぶことで解消できます。
コスト面の考え方
工場塗装はコストが高いと感じる場合があります。しかし、万が一の現場塗装ミスで不燃認定が失効した場合、その是正対応・材料の取り直し・場合によっては法的対応といったコストを考えると、トータルでは工場塗装の方が合理的です。コストだけで判断するのは原則ではありません。
実際に、不燃木材メーカー各社の多くが「工場塗装を推奨・前提としている」と明示しており、設計・施工の段階から工場塗装で納品される不燃塗装木材を採用するのが現場でのスタンダードになりつつあります。
柏田木材|木材の現場塗装・工場塗装はどちらがいい?それぞれのメリット・デメリット(工場塗装と現場塗装の詳細比較)

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