

弾性係数(ヤング率・縦弾性係数)は、弾性域における応力とひずみの比例定数で、基本は「弾性係数 = 応力 / ひずみ」です。応力は「力÷面積」、ひずみは「変形量÷元の長さ」で無次元なので、弾性係数の単位は応力と同じ Pa(実務では MPa や GPa が多い)になります。
また、応力とひずみが比例する弾性域ではフックの法則が成り立ち、式は「σ = E × ε」と表せます(Eが弾性係数)。
現場・設計で迷いがちなポイントは「どのデータ点を使うか」です。理想的には、応力ひずみ曲線の初期直線部の勾配(Δσ/Δε)を使います。試験機の出力が点列(CSV)なら、次の手順が安全です。
参考:フックの法則、弾性域、ヤング率の説明(用語と図のイメージが掴める)
キーエンス「応力とひずみの関係(フックの法則・弾性域・ヤング率)」
弾性係数の計算自体は割り算ですが、実務でのミスはほぼ「単位の混在」で起きます。弾性係数は Pa(N/m²)がSI基本ですが、建築・材料試験では N/mm²(= MPa)表記も頻出です。
単位をそろえるコツは、「入力をNとmmに寄せる」か「入力をNとmに寄せる」かを最初に決めることです。たとえば試験片寸法が mm、荷重が N なら、応力は N/mm²(=MPa)で出すとスムーズです。
さらに注意したいのが、材料表(カタログ)では GPa 表記、計算書や構造図では N/mm² 表記が混ざることです。換算自体は単純でも、計算途中で「GPaのまま断面をmm²で割る」などの破綻が起きます。チェック方法として、鋼材のヤング率は桁感が大きく(おおむね200 GPa級)、木材や樹脂はそれより小さい、という“桁の常識”で最後に妥当性確認します。
参考:弾性係数の単位と「応力/ひずみ」の考え方(建設文脈で短く整理)
施工管理求人ナビ「弾性係数とは?(単位と計算式)」
弾性係数は「応力ひずみ曲線の最初の直線部の傾き」です。重要なのは、材料によっては最初からきれいな直線が出ない場合がある点で、試験条件(つかみ部の滑り、初期たわみ、計測ゲージの取り付け)によって、立ち上がりが“寝る”ことがあります。
応力ひずみ曲線は一般に、弾性域→降伏点→塑性域へ進み、降伏点を超えるとフックの法則(比例関係)は成立しません。つまり、降伏点以降のデータを使って E を出すと、弾性係数ではなく「加工硬化域の見かけの勾配」を拾ってしまい、設計用の剛性評価としては危険です。
現場での実務的な工夫としては、初期の数点を捨てて回帰する、弾性域の指定ひずみ範囲(規格がある試験は規格範囲)に合わせて勾配を取る、などが有効です。測る対象が金属なのか、木材なのか、複合材なのかで“直線域の扱い”は変わるので、試験規格・材料規格の指定があれば優先します。
建築の現場では「弾性係数=ヤング係数(ヤング率)」として扱われることが多い一方、厳密には弾性係数には複数の種類があります(縦弾性係数E、せん断弾性係数G、体積弾性率Kなど)。ここを曖昧にすると、たとえば“せん断変形が支配的な部材”でEだけを入れてしまい、変形推定が外れる原因になります。
使い分けの目安は次の通りです。
意外と知られていない実務の落とし穴は、「同じ“ヤング率”でも、測り方(静的・動的)で値が変わり得る」ことです。たとえば動的試験(共振法など)で求めた値は、静的引張試験の初期勾配と一致しない場合があります。設計の根拠資料が“どの試験で得た弾性係数か”を確認すると、比較や採用判断が安定します。
検索上位の解説は「公式」「応力ひずみ曲線」「単位」で終わりがちですが、建築従事者の実務では“理論式が正しいのに値が合わない”場面が頻発します。原因の多くは、材料そのものより「計測系と境界条件」です。
特に効くのが、施工・試験セットアップの誤差と温度影響です。
対策は難しいことではなく、「弾性域の取り方をルール化」し「試験機+治具のコンプライアンス(たわみ)を疑う」だけで改善します。たとえば、弾性係数を報告する社内ルールとして、指定ひずみ範囲の回帰勾配(例:ε=0.0005〜0.002など、材料に応じて設定)で算出し、同時に試験条件(温度、治具、ひずみ計の種類)を併記する運用にすると、後工程の説明責任が一気に軽くなります。
ここまで押さえると、弾性係数求め方は単なる暗記公式ではなく「再現性のある計算手順」になります。計算が合わないときは、まず単位、次に弾性域の選び方、最後に計測系(滑り・治具たわみ・温度)を疑う——この順番が最短です。