
根拠法令とは、建築物の計画や許可申請において、その判断や承認の基礎となる法律や政令、条例などの法令を指します。建築確認申請書では、建築物やその敷地に関して許可・認定等を受けた場合に、その根拠となる法令及びその条項を明記することが建築基準法施行規則により義務付けられています。
参考)建築基準法の読み方をわかりやすく解説|施行令と告示の関係性も…
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的としており、この法律に基づく様々な規制が根拠法令として機能します。根拠法令の記載は、建築物が法的に適合していることを証明する重要な役割を果たします。
参考)https://www.pref.nara.jp/secure/6072/R4_3-4-1.kenntikukakuninn.pdf
建築業従事者にとって、根拠法令の正確な理解と記載は、確認申請業務における基本的なスキルです。法令の体系は建築基準法本法、施行令、施行規則、告示という階層構造になっており、それぞれの関係性を理解することが根拠法令を正しく書くための第一歩となります。
参考)http://www.zai-skj.or.jp/cms_skj/wp-content/uploads/2019/04/19d5acd7d382a09350842a251090e58e.pdf
建築確認申請書における根拠法令の書き方には、明確なルールが存在します。確認申請書の第三面「建築物及びその敷地に関する事項」の【14.許可・認定等】欄に、建築物及びその敷地に関して許可・認定等を受けた場合には、根拠となる法令及びその条項、当該許可・認定等の番号並びに許可・認定等を受けた日付を記載する必要があります。
参考)http://www.zai-skj.or.jp/cms_skj/wp-content/uploads/2019/10/49497a51ede5f14fabf7188e4665cfd7.pdf
記載例として、都市計画法第60条の証明を受けた場合は「都市計画法施行規則第60条証明 平成19年1月17日 第0987号」のように記載します。法令名、条項、認定・許可の年月日、番号を明確に区分して記載することが重要です。また、建築基準法第43条第2項第2号による道路に接しない建築物の許可を受けた場合は、「建築基準法第43条第2項第2号許可」と記載し、許可番号と日付を併記します。
参考)建築基準法法第20条とは?構造計算などの基準の確認方法|建築…
根拠法令の記載では、法律の正式名称を使用し、条・項・号まで正確に記載することが求められます。略称や俗称は避け、「建築基準法施行令第○条第○項第○号」のように完全な形式で記載しましょう。記載内容に誤りがあると、確認済証の発行が遅れる原因となるため、申請前の十分な確認が必要です。
建築確認申請書における根拠法令の具体的な記載例を見ていきましょう。都市計画法に基づく許可を受けた場合、「都市計画法第29条許可 令和○年○月○日 第○○○号」と記載します。市街化調整区域内での建築物の場合、都市計画法第60条適合証明が必要となり、その旨を記載することが一般的です。
がけ地条例に該当する場合は、「建築基準法施行条例第○条適合」と記載し、がけの断面図や土質を示す図書を添付します。防火地域や準防火地域における建築物の場合、建築基準法第61条に基づく耐火建築物や準耐火建築物の規定への適合を示す必要があります。
型式適合認定を受けた建築物の場合、「型式適合認定 認定番号 型○○○○○○○○○○○」と記載し、認定番号を正確に転記します。製造者認証を受けた建築物では、「製造者認証 認証番号 製○○○○○○○○○○○」と記載し、認証範囲内での積雪量や地耐力の条件も明記することが求められます。
建設業法に基づく請負契約では、契約書に工事の根拠となる法令を記載することが義務付けられています。元請負人が下請負人に対して具体的内容を提示する際には、根拠情報の通知が必要であり、その情報源を明示することが建設業法令遵守ガイドラインで求められています。
参考)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001765310.pdf
根拠法令を正確に記載するには、建築法令の体系を理解することが不可欠です。建築基準法の体系は、法律(建築基準法本法)、政令(建築基準法施行令)、省令(建築基準法施行規則)、告示(国土交通省告示)の4つの階層で構成されています。
法律は国会で制定され、建築物にかかる基本的な制限を定めています。政令は内閣が定めるもので、建築基準法で定めた制限を守るための技術的な基準が規定されています。省令は国土交通大臣が定め、確認申請などの手続きの内容が記載されています。告示は施行令で定めた技術的な基準の詳しい内容を規定しています。
この階層構造を理解すると、「建築基準法第20条」は法律レベルの規定、「建築基準法施行令第81条」は政令レベルの規定というように、どのレベルの法令を参照すべきかが明確になります。根拠法令を記載する際は、この階層に応じた正確な法令名と条項を使用する必要があります。
根拠法令の記載で最も多い間違いは、法令名の略称使用や条項の誤記です。「建基法」「令」などの略称は確認申請書では使用できません。必ず「建築基準法」「建築基準法施行令」と正式名称で記載しましょう。
条項の記載では、「第○条第○項第○号」まで正確に記載することが重要です。例えば、建築基準法第20条だけでなく、該当する項や号まで特定する必要がある場合があります。特に構造計算に関する規定では、施行令第81条の各項が異なる計算方法を規定しているため、正確な項番号の記載が必須です。
許可や認定の番号と日付の記載漏れも頻繁に見られる誤りです。許可・認定等を受けた場合は、その番号と日付を必ず記載しなければなりません。また、複数の許可や認定を受けている場合は、それぞれについて根拠法令を記載する必要があります。
確認申請書と添付する許可書・認定書の内容が一致しているかの確認も重要です。内容に少しでも違いがあると、確認済証の発行ができなくなるため、申請前に必ず照合作業を行いましょう。
建築業務において根拠法令は、設計や施工の各段階で参照される重要な情報源です。設計段階では、建築基準法の単体規定(構造、防火、避難、設備)と集団規定(道路、用途、高さ制限、面積制限)の両方を確認し、該当する根拠法令を整理します。
確認申請前には、特定行政庁への許可申請が必要なケースがあり、その際の根拠法令を事前に把握しておくことが重要です。例えば、建築基準法第43条第2項第2号の道路に接しない建築物の許可や、第48条の用途地域における建築物の特例許可などは、建築審査会の同意が必要となるため、十分な準備期間が必要です。
建設業法に基づく請負契約では、契約書に工事の根拠となる法令を記載することで、発注者と受注者の間で工事内容の法的根拠を明確にできます。元請負人が下請負人に対して提示する具体的内容にも、根拠情報の通知が求められており、資材価格の変動に関する根拠資料の提示などが含まれます。
参考)建設業法を遵守しよう!契約書に記載するべき重要事項と注意点 …
工事監理計画届においても、確認を行う部位や材料に対応する設計図書と照合方法を記載する際、関連する建築基準法令の条項を参照することで、より明確な監理計画を作成できます。根拠法令の理解は、建築業務全体の質を高める基盤となります。