エスカレーター寸法一覧:建築設計で必要な標準

エスカレーター寸法一覧:建築設計で必要な標準

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エスカレーター寸法一覧

エスカレーター寸法設計の重要ポイント
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標準型式別寸法

S600形・S800形・S1000形の詳細寸法表と据付要件

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建築基準法対応

2024年4月改正の安全基準と定期検査判定基準

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設計時注意点

層間変形角と支持構造の関係性による設計配慮

エスカレーター標準型式別寸法表

エスカレーターの寸法設計において、各メーカーが採用している標準型式の寸法を正確に把握することは建築設計の基本となります。主要メーカーであるフジテック、三菱電機、日立ビルシステムの標準寸法を比較検討することで、建築計画に最適な仕様を選定できます。

 

フジテックGS-NXシリーズの標準寸法
フジテックの標準型エスカレーターは以下の3つの型式で構成されており、それぞれ明確な寸法基準が設定されています。

型式 W1(仕上幅)mm W2(ハンドレール中心間)mm W3(スカートガード間)mm W4(床目地幅)mm W5(床開口寸法)mm
S600形 1150 838 606 1078 1250
S800形 1350 1038 806 1278 1450
S1000形 1550 1238 1006 1478 1650

三菱電機エスカレーターの寸法仕様
三菱電機では、建築基準法に準拠した以下の寸法基準を採用しています。

  • S600形: W1(エスカレーター幅)1150mm、W2(手すり中心間)840mm
  • S1000形: W1(エスカレーター幅)1550mm、W2(手すり中心間)1240mm
  • トラス幅: S600形で1100mm、S1000形で1500mm

日立ビルシステムVXSシリーズ
日立ビルシステムのVXSシリーズでは、S800VXSとS1000VXSの2つの主要型式を展開しており、建築物の層間変形角γと階高Hの関係に応じた詳細な寸法設定が特徴的です。

 

これらの寸法差は、建築物の用途や利用者数、建築基準法の制約を考慮した設計判断に直結するため、設計段階での慎重な検討が必要です。

 

エスカレーター据付図面の基準

エスカレーターの据付設計では、単純な寸法表だけでなく、建築構造との整合性を確保するための詳細な据付基準の理解が不可欠です。特に、支持構造の設計と反力計算は構造安全性に直結する重要な要素となります。

 

支持点数による反力設計
エスカレーターの支持方式は、階高と建築構造に応じて2点支持と3点支持に分類されます。フジテックGS-NXシリーズの反力表では、以下の計算式が適用されます。
2点支持の場合(9.5m以下)

  • S600形: R1(アッパー支点反力)= 9.6H²+77.2H+117.6kN
  • S800形: R1(アッパー支点反力)= 10.9H²+84.1H+126.9kN
  • S1000形: R1(アッパー支点反力)= 12.2H²+91.3H+136.4kN

層間変形角γとの関係
建築物の地震時における層間変形角γは、エスカレーターの支持構造設計において極めて重要な要素です。受梁部寸法表では、γH値に応じて以下の寸法が設定されています。

  • γH≦80mm以下: D=135mm
  • γH 80超え120以下: D=175mm
  • γH 120超え150以下: D=205mm

コンクリート構造と鉄骨構造では、同一のγH値でもE寸法が異なるため、建築構造種別に応じた適切な選択が必要です。

 

ピット深さと隙間の確保
日立ビルシステムのVXSシリーズでは、ピット最小深さ1100mm以上の確保が標準となっており、地震時の衝突防止のためγH+200mm以上の隙間確保が義務付けられています。この基準は、建築設計における重要な制約条件となります。

 

エスカレーター建築基準法規定

建築基準法第129条の12では、エスカレーターの構造について詳細な規定が設けられており、これらの法的要件を満たすことが建築確認申請の前提条件となります。

 

基本構造要件
建築基準法で定められている主要な構造要件は以下の通りです。

  • 勾配制限: 30度以下(一般的には27.3度、30度、35度の3種類)
  • 踏段幅: 1.1m以下
  • 手すり配置: 踏段の端から手すり上端部中心まで25cm以下
  • 定格速度: 50m以下で勾配に応じた制限

安全装置の設置義務
建築基準法では、通常の使用状態において人又は物が挟まれることがないよう、国土交通大臣が定める構造とすることが義務付けられています。この規定は、後述する2024年4月の安全基準改正にも反映されています。

 

踏段の公称幅と利用計画
国内のエスカレーターでは、通常0.6m、0.8m、1.0mの3つの公称幅が使用されています。建築計画においては、想定される利用者数と建物用途に応じた適切な幅の選定が重要です。特に、商業施設や駅舎などの大量輸送が必要な施設では、1.0m幅の採用が一般的となっています。

 

また、安全のために設計された無人地帯の幅は2.50メートル以上とすることが推奨されており、人の流れが密集する場合はさらに幅を広げる必要があります。

 

エスカレーター安全基準変更点

2024年4月1日より施行された新たな安全基準は、近年のエスカレーター事故への対応として大幅な見直しが行われました。この改正は、建築設計者にとって重要な設計変更要因となります。

 

挟まれ事故防止のための基準強化
新基準では、エスカレーター周辺部の安全対策が大幅に強化されました。

  • 誘導柵: ハンドレール外縁から500mm範囲で、すき間を160mm以上確保
  • 転落防止柵: 同範囲で、すき間を160~200mmに設定
  • 進入防止用仕切板: 外側板とのすき間110mm以下、ハンドレール下面から25mm以上

従来の判定基準(すき間140~200mm)から変更されたため、既存建物の改修計画においても考慮が必要です。

 

ハンドレール停止検出装置の義務化
転倒事故防止対策として、左右のハンドレールのどちらかが停止または速度異常を検出した場合に、エスカレーターを自動停止させる装置の設置が義務付けられました。この装置は、新設エスカレーターにおいて標準装備となります。

 

障害物設置の制限強化
踏段上直部において、踏段から鉛直方向2100mm以内への障害物設置が禁止されました。対象となる障害物は以下の通りです。

  • 天井、はり、広告体
  • 照明灯、配管
  • 仕切りの柱
  • 上階のエスカレーター

この規定により、建築設計における空間計画に新たな制約が加わることとなります。

 

定期検査基準の変更
改正に伴い、定期検査における判定基準も見直されており、既存不適格の判定を受ける可能性が高まっています。建築物の維持管理計画においても、これらの新基準への対応検討が必要です。

 

エスカレーター設計時の注意点

エスカレーター設計において、寸法表や法規制の遵守だけでなく、建築全体との整合性や将来的な維持管理を見据えた総合的な検討が重要です。特に、建築構造種別や地震時挙動を考慮した設計配慮は、長期的な安全性確保の観点から不可欠です。

 

構造種別による設計配慮の違い
鉄筋コンクリート造と鉄骨造では、同一の層間変形角γでも必要な支持構造寸法が異なります。コンクリート構造では鉄骨構造より大きなE寸法が必要となるため、建築計画段階での構造種別選定がエスカレーター配置に大きく影響します。

 

例えば、γH値が200超え250以下の場合。

  • コンクリート構造: E=760mm
  • 鉄骨構造: E=660mm

この100mmの差は、建築平面計画における重要な制約要因となる可能性があります。

 

メーカー間寸法差の影響
主要3メーカー間でも微細な寸法差が存在し、特に手すり中心間寸法(W2)において以下の違いが見られます。

  • フジテック S600形: 838mm
  • 三菱電機 S600形: 840mm

この2mmの差は僅少に見えますが、建築躯体の型枠精度や仕上げ工事の納まりに影響する場合があるため、設計段階でのメーカー選定時には注意が必要です。

 

将来的な法規制変更への対応
2024年4月の安全基準改正のように、エスカレーターに関する法規制は技術進歩と事故事例を踏まえて継続的に見直される傾向があります。設計時点では適法であっても、将来的な基準変更により既存不適格となるリスクを最小化するため、可能な限り余裕を持った設計とすることが推奨されます。

 

保守・点検空間の確保
エスカレーターの適切な維持管理には、機械室や点検空間の確保が不可欠です。特に、ハンドレール停止検出装置の義務化により、従来以上に精密な保守作業が必要となるため、保守員の作業空間を十分に確保した設計配慮が重要です。

 

定期検査時のアクセス性も考慮し、検査機器の搬入経路や作業エリアを建築計画に組み込むことで、長期的な運用コストの削減にも寄与します。

 

人の動線計画においても、エスカレーター前後の滞留スペースや非常時の避難経路確保など、建築基準法の要求を上回る安全配慮を盛り込むことが、建築物の価値向上につながります。