ファラデーの法則電気分解式の計算とモル質量定数の覚え方

ファラデーの法則電気分解式の計算とモル質量定数の覚え方

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ファラデーの法則の電気分解式

ファラデーの法則の要点
基本公式

電気量Q = 電流I × 時間t で電子の流れた量を算出

⚖️
質量変化

析出量は流れた電気量(電子のモル数)に正比例する

🏗️
建築応用

電気防食やメッキ厚の計算など現場管理に直結

ファラデーの法則電気分解式の基本と計算

 

建築や製造の現場で「電気分解」や「メッキ」に関わる際、必ず基礎となるのがファラデーの法則です。この法則は、1833年にマイケル・ファラデーによって発見された、電気化学の根幹をなす法則ですが、現場レベルでは「どれくらいの電流を流せば、どれくらいの金属がつくのか(あるいは溶けるのか)」を計算するための道具として非常に重要です。
まず、ファラデーの法則を理解するために避けて通れないのが、以下の2つの基本法則です。


  • 第1法則:電極で反応する物質の生成量(質量)は、流した電気量に比例する。

  • 第2法則:同じ電気量で反応する物質の量は、その物質の化学当量(原子量÷価数)に比例する。

これを一つの式として実務で使いやすくまとめたものが、一般的に知られる「ファラデーの法則の公式」となります。計算のスタート地点は、必ず「電気量(クーロン)」を求めることから始まります。
基本公式の流れ:


  1. 電気量 $Q$ の計算
    まず、どれだけの電気が流れたかを計算します。電気量 $Q$(単位:クーロン C)は、電流 $I$(アンペア A)と時間 $t$(秒 s)の積で求められます。
    Q[C]=I[A]×t[s]Q [C] = I [A] \times t [s]Q[C]=I[A]×t[s]
    ※ここで注意が必要なのは、時間は「分」や「時間」ではなく、必ず「秒」に換算して計算することです。現場で「1時間流した」という場合は、3600秒として計算式に組み込む必要があります。


  2. 電子の物質量(mol)への変換
    求めた電気量 $Q$ を、電子 $e^-$ の物質量(モル数)に変換します。ここで登場するのがファラデー定数 $F$ です。
    電子の物質量[mol]=Q[C]F[C/mol]電子の物質量 [mol] = \frac{Q [C]}{F [C/mol]}電子の物質量[mol]=F[C/mol]Q[C]
    一般的に $F = 9.65 \times 10^4 , \text{C/mol}$ を使用します。このステップにより、物理的な「電気の量」が、化学的な「粒の数(モル)」に翻訳されます。


この計算プロセスは、バッテリーの充電容量の計算や、電気防食の設計においても全く同じ考え方が適用されます。建築現場で電気設備に関わる方や、防食工事の管理を行う方にとって、この「電流×時間=総電気量」という感覚は、コスト管理や工程管理の基礎体力となります。

【高校化学】「ファラデーの法則とは」 | 映像授業のTry IT
参考リンクの解説:基本的な法則の定義から、高校化学レベルでの平易な解説がされており、基礎を振り返るのに適しています。

ファラデーの法則電気分解式のモルと質量の関係

現場実務において最も重要なのは、「結局、何グラムの金属が析出するのか?」あるいは「陽極が何キログラム消耗したのか?」という質量の計算です。ファラデーの法則を使って電気量から質量を導き出すプロセスは、実は非常に論理的な「比例計算」の積み重ねです。
この計算をスムーズに行うためには、「モル(mol)」という仲介役を理解することが近道です。電気量と質量は直接つなげるよりも、一度モルを経由することで、どんな金属(銅、亜鉛、アルミニウムなど)であっても同じ手順で計算できるようになります。
質量計算の3ステップ:


  1. 電子のモル数を確定する
    前述の通り、電流と時間から電気量を出し、それをファラデー定数で割って「電子が何モル流れたか」を出します。
    例:96500C 流れた場合 $\rightarrow$ 電子 1.0 mol

  2. 反応式の係数比を見る(化学量論)
    ターゲットとなる金属イオンが金属になるために、電子が何個必要かを確認します。これを「価数」と言います。


    • 銀 ($Ag^+$) の場合: $Ag^+ + e^- \rightarrow Ag$ (電子1個で銀1個)$\rightarrow$ 1:1の関係

    • 銅 ($Cu^{2+}$) の場合: $Cu^{2+} + 2e^- \rightarrow Cu$ (電子2個で銅1個)$\rightarrow$ 2:1の関係

    • アルミニウム ($Al^{3+}$) の場合: $Al^{3+} + 3e^- \rightarrow Al$ (電子3個でアルミ1個)$\rightarrow$ 3:1の関係

    つまり、電子が1モル流れたとしても、析出する金属のモル数はその金属の価数によって $\frac{1}{1}$、$\frac{1}{2}$、$\frac{1}{3}$ と変化します。


  3. モルを質量(グラム)に換算する
    最後に、その金属の原子量(1モルあたりの重さ)を掛け算します。
    析出質量[g]=析出モル数[mol]×原子量[g/mol]析出質量 [g] = 析出モル数 [mol] \times 原子量 [g/mol]析出質量[g]=析出モル数[mol]×原子量[g/mol]


実務での直感的な理解:
例えば、同じ電流を同じ時間流したとしても、1価の銀(原子量108)は大量に析出しますが、3価のアルミニウム(原子量27)はわずかしか析出しません。


  • 銀:電子1molで108g析出


  • アルミ:電子1molで9g(27÷3)しか析出しない


この「価数による効率の違い」は、メッキ工場のコスト計算や、電気防食で用いる犠牲陽極(アノード)の選定において決定的な意味を持ちます。「同じ電気代(電気量)で、どれだけ効率よく目的の質量を得られるか」という視点は、まさにファラデーの法則の質量関係そのものです。
【ファラデーの法則】電気量計算の公式・解き方(演習問題付き)

参考リンクの解説:電子のモル数から質量を求める具体的な手順が、演習問題形式で詳しく解説されています。

ファラデーの法則電気分解定数の覚え方と単位

計算において頻繁に使用する「ファラデー定数」ですが、この数値 $9.65 \times 10^4$ を正確に暗記し、その単位の意味を理解しておくことは、現場での計算ミスを防ぐために有効です。
ファラデー定数の正体:
F=9.65×104C/molF = 9.65 \times 10^4 \, \text{C/mol}F=9.65×104C/mol
この数値は、電子1個が持つ電気量(約 $1.602 \times 10^{-19}$ C)に、アボガドロ定数(1molあたりの個数、約 $6.02 \times 10^{23}$ 個)を掛け合わせたものです。つまり、「電子1モルパックの電気量の合計値」です。
覚え方のコツ(語呂合わせ):
正確な値は $96485 , \text{C/mol}$ ですが、一般計算では $96500$ を使います。



  • 「クロコ(965)まるまる(00)」
    少し強引ですが、965と00の組み合わせとしてリズムで覚えるのが一般的です。


  • 「苦労ご(965)苦労」
    電気分解の計算は苦労する、という意味合いで記憶に残す方法もあります。


単位「C/mol」が持つ意味:
この単位は、「電子1モルあたり、何クーロンの電気量を持っているか」を示しています。計算式の中で単位を確認する(次元解析を行う)ことは、ケアレスミス防止に役立ちます。
電気量 [C]ファラデー定数 [C/mol]=電子の物質量 [mol]\frac{\text{電気量 } [C]}{\text{ファラデー定数 } [C/mol]} = \text{電子の物質量 } [mol]ファラデー定数 [C/mol]電気量 [C]=電子の物質量 [mol]
このように、$[C]$ を $[C/mol]$ で割ることで、分母の分母である $[mol]$ が分子に来て、答えが物質量 $[mol]$ になることが確認できます。現場で急いで計算する際、掛け算だっけ?割り算だっけ?と迷ったときは、この単位の操作を思い出すと間違いがありません。
また、実務では $26.8 , \text{Ah/mol}$ という単位を使うこともあります。
これは、$1 , \text{Ah} = 3600 , \text{C}$ であることから換算された値です($96500 \div 3600 \approx 26.8$)。
バッテリー容量や防食電流など、時間は「秒」よりも「時間(Hour)」で管理することが多い現場では、この $26.8 , \text{Ah/mol}$ の方が直感的に計算しやすい場面も多々あります。
電気分解とファラデーの法則 | 電験三種Web

参考リンクの解説:ファラデー定数の定義や、Ah単位を用いた実務的な換算についても触れられており、資格試験対策にも通じる内容です。

ファラデーの法則電気分解式の例題と解き方

ここでは、実際の計算手順をマスターするために、典型的な例題を用いて解説します。建築資材の加工や品質管理のイメージを持ちながら解いてみましょう。
例題:
硫酸銅($II$)水溶液($CuSO_4$)に対し、2.0Aの電流を1時間(3600秒)流して電気分解を行いました。このとき、陰極に析出する銅($Cu$)の質量は何グラムでしょうか?
(ただし、原子量は $Cu=64$、ファラデー定数は $F=96500 , \text{C/mol}$ とします。)
解き方のフローチャート:


  1. 流れた電気量 $Q$ を求める
    電流と時間を掛け算します。
    Q=2.0[A]×3600[s]=7200[C]Q = 2.0 \, [A] \times 3600 \, [s] = 7200 \, [C]Q=2.0[A]×3600[s]=7200[C]


  2. 電子の物質量(mol)を求める
    電気量をファラデー定数で割ります。
    eのmol=7200965000.0746[mol]e^- \text{のmol} = \frac{7200}{96500} \approx 0.0746 \, [mol]e−のmol=965007200≈0.0746[mol]
    ※計算途中では分数のまま $\frac{7200}{96500}$ で置いておく方が、誤差が少なくなります。


  3. 反応式からモル比を確認する
    銅イオンの反応式を書きます。
    Cu2++2eCuCu^{2+} + 2e^- \rightarrow CuCu2++2e−→Cu
    電子 $2mol$ で銅 $1mol$ が析出するので、比率は $2:1$ です。
    つまり、析出する銅のモル数は電子のモル数の半分になります。
    Cuのmol=0.0746÷2=0.0373[mol]Cu \text{のmol} = 0.0746 \div 2 = 0.0373 \, [mol]Cuのmol=0.0746÷2=0.0373[mol]


  4. 質量に換算する
    最後に原子量を掛けます。
    質量=0.0373[mol]×64[g/mol]2.39[g]質量 = 0.0373 \, [mol] \times 64 \, [g/mol] \approx 2.39 \, [g]質量=0.0373[mol]×64[g/mol]≈2.39[g]


答え:約 2.39 g
現場での応用ポイント:
もしこれが「メッキ厚の管理」であれば、析出した2.39gの銅が、対象物の表面積に対してどの程度の厚みになるかを計算します。
厚み[cm]=質量[g]密度[g/cm3]×表面積[cm2]\text{厚み} [cm] = \frac{\text{質量} [g]}{\text{密度} [g/cm^3] \times \text{表面積} [cm^2]}厚み[cm]=密度[g/cm3]×表面積[cm2]質量[g]
このように、ファラデーの法則で求めた質量は、最終的に「膜厚」という品質管理指標に変換されます。計算結果が設計図書の許容範囲に入っているかを確認するのが、管理者の仕事となります。

ファラデーの法則電気分解式の建築防食メッキ応用

建築従事者の皆様にとって、ファラデーの法則が最も実践的に役立つのは、実は**「電気防食(カソード防食)」「犠牲陽極の寿命予測」**の場面です。港湾施設、橋梁、地中埋設管、鉄筋コンクリート構造物など、鉄の腐食を防ぐために電気化学的な手法が使われていますが、ここの設計と維持管理計算の根拠こそがファラデーの法則です。
1. 犠牲陽極(流電陽極)の寿命計算
海中の鋼管杭などに、亜鉛やアルミニウム合金のブロック(陽極)を取り付け、鉄の身代わりに溶かすことで防食する方法です。この「陽極ブロックが何年でなくなるか(寿命)」は、ファラデーの法則で正確に計算できます。
陽極の消耗量計算式:
W=k×I×tW = k \times I \times tW=k×I×t



  • $W$:陽極の消耗量(kg)


  • $k$:陽極の消費率(kg/A・年) ※ファラデーの法則から理論的に導出される値に効率を掛けたもの


  • $I$:発生電流(A)


  • $t$:期間(年)


例えば、ある構造物に対して平均1Aの防食電流が流れる場合、アルミニウム合金陽極(理論消費率 約3kg/A・年程度)が年間何キロ減るかを予測できます。これにより、「10年ごとの交換計画」や「必要な陽極の初期重量」を設計します。ファラデーの法則を知っていれば、カタログ値を鵜呑みにするだけでなく、実測電流値から「予定より消耗が早いから交換時期を早めよう」といった判断が可能になります。
2. 鉄筋コンクリートの電気防食
塩害を受けたコンクリート構造物において、外部から微弱な電流を流して中の鉄筋の錆を止める「外部電源方式」でも、ファラデーの法則は重要です。
過剰な電流を流しすぎると、陰極(鉄筋側)で水の電気分解が起き、水素ガスが発生する恐れがあります。これが鉄筋の水素脆化やコンクリート付着力の低下を招くリスクがあるため、**「適切な電流密度(ファラデーの法則に基づく反応量)」**の管理が施工品質を左右します。

3. メッキボルト・金物の品質
建築で使用される「ユニクロメッキ」や「溶融亜鉛メッキ(ドブ漬け)」も、原理は電気化学反応です(溶融は物理的ですが、電気メッキはファラデー則直結)。
「電気亜鉛メッキ 8μm以上」という仕様があった場合、メッキ工場ではタンクに漬ける時間をファラデーの法則に基づいて制御しています。現場で搬入されたボルトが錆びやすい場合、製造工程での電流管理(つまりファラデー則の計算)に不備があった可能性を見抜く視点も、プロフェッショナルとして重要です。
このように、ファラデーの法則は単なる試験勉強の公式ではなく、**「構造物の寿命」「メンテナンスコスト」**を数値化してコントロールするための、現場監督にとっての強力な武器となり得るのです。
流電陽極寿命推定に使用する陽極出力電流逆解析手法の紹介 | 国土交通省
参考リンクの解説:国土交通省の資料で、実際の港湾施設における犠牲陽極の寿命推定にファラデーの法則(消耗量計算)がどのように使われているか、実例と共に解説されています。専門性が高く実務に直結します。
電気化学的防食技術と健康寿命 | コンクリートメンテナンス協会
参考リンクの解説:コンクリート構造物の鉄筋防食における電気化学的メカニズムと、ファラデーの法則を用いた腐食量の計算について詳述されています。

 

 


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