
函渠推進工法は、矩形断面のボックスカルバート(函渠)を油圧ジャッキによって地中に推進埋設する技術です。この工法は円形管推進工法の応用として開発され、昭和40年代初期から本格的な施工が開始されました。
基本的な推進原理は円形管推進工法と同様ですが、矩形断面特有の利点があります。
函渠推進工法は特に下水道・排水路・共同溝・人道あるいは車道としての地下道等に最適で、都市部の限られた空間での地下構造物構築において重要な役割を果たしています。
機械式ボックスカルバート推進工では、推進方式の選定が施工成功の鍵となります。特に□2×2m以上の比較的大型の函渠の場合、泥土圧工法が主流として採用されています。
泥土圧工法の特徴。
一方、パイプルーフなどに使用される比較的小型の函渠の場合は、泥濃工法やオーガ工法も適用されます。土質条件や函渠の形状に応じて、補助カッタ方式・遥動カッタ方式・自転公転方式などの掘削方法が選定されています。
函体材料については、コンクリート製(RC・PCタイプ)と鋼製の2種類が主に使用されます。コンクリート製函渠は推進した函渠がそのまま構造物として使用できる利点があり、鋼製函渠は軽量で推進抵抗が小さく長距離施工に適しています。
従来の開削工法では困難だった低土被り条件での施工が、函渠推進工法では可能になります。この技術は特に都市部での工事において大きなメリットを提供します。
低土被り施工の利点。
小土被り条件における施工事例では、最小土被り0.466mという極めて浅い条件での成功事例も報告されています。このような条件では、地盤切削機構(地盤切削ワイヤー)を有する刃口や先行ルーフなどの特殊技術が採用され、切羽上部からの土砂崩壊を防止しています。
R&C工法のような先進技術では、箱形ルーフとボックスカルバートの置換により、さらに安全で効率的な低土被り施工が実現されています。FCプレートの効果により周辺地盤や近接構造物への影響を抑制し、箱形ルーフの再利用も可能です。
ボックス推進においても機械式密閉型の推進工法を採用することで、従来の刃口式推進では50~100mが限界だった施工距離を大幅に延長することが可能になりました。
長距離施工の技術的要素。
実際の施工では、推進力の算定を綿密に検討し、函渠耐荷力・必要推進力・支圧壁反力のバランスを最適化します。例えば、W7,000×H5,500の大断面函渠では、函渠耐荷力71,500kNに対して必要推進力34,500kNという設計が行われています。
鋼製函渠を使用した場合、コンクリート製と比較して軽量であるため自重に起因する推進抵抗が小さく、特に長距離施工に適しています。また、隣接する函渠との連結のためのジャンクションを取付けることで、パイプルーフや先行支保工としての用途にも対応可能です。
外壁塗装業者にとって函渠推進工法は直接的な関連性は低いものの、建設業界全体の動向を理解する上で重要な知識となります。特に大規模建設プロジェクトや都市再開発事業においては、地下構造物工事と外装工事が並行して進行するケースが多く、工程調整や安全管理の面で連携が必要になります。
関連する業務場面。
また、函渠推進工法で構築される地下構造物の維持管理においても、外壁塗装業者の技術が活用される可能性があります。特に地下道や共同溝の内装仕上げや防水・防食処理において、塗装技術の専門知識が求められる場合があります。
デスリップカーテン工法のような上載土移動防止技術は、地上の既存建物への影響を最小化する技術として、外壁塗装業者が関わる建物保護の観点からも重要な技術と言えるでしょう。
建設業界のデジタル化や環境配慮が進む中で、函渠推進工法のような非開削技術の重要性はますます高まっており、外壁塗装業者も業界全体の技術動向を理解しておくことで、より付加価値の高いサービス提供につながると考えられます。