
鋼製管推進工法は、推進工法の中でも特に小口径管路の敷設に特化した技術です。この工法は、従来「鋼製さや管推進工法」として呼び径800未満の小口径管推進工法に分類されていましたが、近年では比較的大きな径の鋼製管推進や取付管推進の実績増加により、呼び径1800の大中口径を包括する「鋼製管推進工法」として位置づけられています。
工法の基本的な分類として以下の方式があります。
特に注目すべきは、この工法が「鋼製さや管方式」と呼ばれる特徴的な構造を持つことです。鋼管をさや管(外管)として推進し、貫通後に管内へ硬質塩化ビニル管などの本管を挿入する二段階施工により、最終的な管路を完成させます。
鋼製さや管推進工法の施工は、大きく分けて4つの工程で進行します。
第1工程:さや管推進
発進立坑に推進機を設置し、鋼製のさや管にオーガビットを取り付けて推進を開始します。オーガによる掘削と同時に、ジャッキの推進力で鋼管を地中に進めていきます。掘削土砂はオーガによって連続的に排出され、効率的な施工が可能です。
第2工程:オーガ回収
さや管が到達立坑まで貫通した後、オーガを発進側へ引き戻します。この段階で鋼製さや管のみが地中に残り、管内は空洞状態となります。
第3工程:本管挿入
空洞となったさや管内に、調整スペーサーを取り付けた硬質塩化ビニル管(本管)を挿入します。スペーサーにより本管の位置を適切に調整し、最終的な管路の精度を確保します。
第4工程:空隙充填
さや管と本管の間の空隙に、モルタルやセメントミルクを注入して充填します。これにより、本管の安定性と耐久性を確保し、地下水の浸入を防止します。
この施工手順により、従来の開削工法と比較して道路掘削面積を大幅に削減でき、交通への影響や工事公害を最小限に抑制できます。
鋼製管推進工法が小口径管敷設で重要な役割を果たす理由は、その技術的優位性にあります。
高い土質適応性 🌍
鋼管の高い強度により、砂質土から粘性土、さらには礫層や玉石層まで幅広い土質条件に対応できます。特にクラウン工法などでは、超硬切削ビットの採用により、コンクリート壁や矢板、杭などの地中障害物も切断可能です。
精密な線形管理 📐
小口径管では人が管内に入って作業することができないため、遠隔操作による精密な施工管理が必須です。鋼製管推進工法では、推進機に各種センサーを搭載し、リアルタイムでの方向修正や推進力制御が可能です。
長距離推進能力 📏
従来の小口径推進工法では推進距離に制限がありましたが、鋼製管推進工法では鋼管の高い耐荷力により、最大25m程度までの長距離推進が可能です。これにより立坑数を削減でき、工事コストの低減につながります。
多様な管種への対応 🔧
さや管方式の採用により、最終的に敷設する本管の材質や口径を現場条件に応じて柔軟に選択できます。上下水道用の硬質塩化ビニル管から、ガス管用のポリエチレン管まで、用途に応じた最適な管材の選択が可能です。
鋼製管推進工法の中でも、ボーリング方式は特に重要な位置を占めています。この方式は、ボーリング技術を応用した掘削方法で、一重ボーリング式と二重ボーリング式に分類されます。
一重ボーリング式の特徴
SH工法やSHミニ工法に代表される一重ボーリング式は、単一のボーリングロッドにより掘削と推進を同時に行う工法です。推進機は小型・軽量でありながら高トルクを発生でき、φ2000~φ2500mmの小型立坑からの発進が可能です。
施工上の技術的ポイント
二重ボーリング式の応用
より複雑な地質条件や長距離推進では、二重ボーリング式が採用されます。外管による孔壁保護と内管による掘削を分離することで、より安定した施工が可能になります。
地質対応技術の進歩
最新のボーリング方式では、土丹(N値50以上)や岩盤などの硬質地盤に対しても対応可能な技術が開発されています。回転式拡孔ビットや特殊合金製ビットの採用により、従来困難とされた地質条件での施工実績が蓄積されています。
工法技術の詳細情報については、日本推進技術協会の技術資料が参考になります。
公益社団法人日本推進技術協会 - 推進工法の技術基準と施工指針
外壁塗装や改修工事の現場では、建物周辺で行われる鋼製管推進工法による管路工事に遭遇することが少なくありません。これらの工事が外壁作業に与える影響と、適切な対応方法について理解しておくことが重要です。
振動・騒音の影響評価 🔊
鋼製管推進工法は非開削工法のため、従来の開削工事と比較して振動や騒音は大幅に軽減されますが、推進機の稼働や鋼管の推進時には一定の振動が発生します。特に外壁塗装の下地処理や仕上げ作業中は、以下の点に注意が必要です。
工事スケジュールの調整 📅
鋼製管推進工法は24時間連続施工が可能な工法ですが、住宅密集地では騒音規制により夜間作業が制限されることがあります。外壁工事との工程調整では。
安全管理上の連携 ⚠️
同一現場で複数の工事が並行する場合、安全管理体制の統一が不可欠です。
建物への影響監視 🏠
地中での推進作業が建物基礎に与える影響は限定的ですが、念のため以下の監視を実施することが推奨されます。
これらの配慮事項を理解することで、外壁工事の品質確保と工程遵守が可能になります。また、管路工事業者との適切な連携により、相互の工事効率向上も図れます。
管路工事の技術基準については、国土交通省の下水道施工指針が詳細な情報を提供しています。
国土交通省水管理・国土保全局下水道部 - 下水道技術基準
現場での実務において、これらの技術的知識は工事の安全性向上と品質確保に直結します。特に都市部での工事では、複数の工法が同時進行することが多いため、各工法の特徴と影響範囲を正確に把握することが、プロフェッショナルな現場管理につながります。