地盤材料と建築材料の違い│構造・特性・試験方法を解説

地盤材料と建築材料の違い│構造・特性・試験方法を解説

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地盤材料と建築材料の違い

地盤材料と建築材料の主な違い
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構成要素の違い

地盤材料は土粒子・水・空気の三相構造、建築材料は単一材料で構成

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強度特性の違い

地盤材料は状況により強度が変動、建築材料は一定の強度を保持

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試験方法の違い

地盤材料は複数の試験方法が必要、建築材料は標準化された試験で評価可能

地盤材料の三相構造とその特性

地盤材料の最も特徴的な点は、土粒子(固体)・水(液体)・空気(気体)の三相から構成されていることです。この三相構造により、地盤材料は極めて複雑な挙動を示し、「強度」そのものも置かれた状況により大きく変動します。例えば、同じ土でも含水率が変化すれば、せん断強度は著しく低下します。
参考)ダイヤ設計 №5 技術屋の辛口コラム『ここが間違う。建築構造…

一方、建築材料である鉄やコンクリートは単一の材料で構成され、一定の強度が変動しないという特徴があります。鉄筋コンクリート造RC造)や鉄骨造(S造)に使用される材料は、工場生産され品質が管理されているため、設計段階で想定した性能を確実に発揮します。
参考)地盤とは? href="https://shinsa-hosho.jp/basic-knowledge-of-jiban/about-jiban" target="_blank">https://shinsa-hosho.jp/basic-knowledge-of-jiban/about-jibanamp;#8211; 地盤審査補償事業

建設現場において、地盤材料は自然に形成され現場に最初から存在するものですが、建物を一番下から支えている重要な「建材」として認識する必要があります。地盤が建材であるならば、その機能を十分備えているか確認しなければなりません。​

地盤材料の強度変動メカニズム

地盤材料の強度が変動する理由は、三相構造の混合割合が無限に存在するためです。土粒子、水、空気の間隙の割合により、地盤の力学的性質は大きく変化します。特に重要なのが、地盤材料は主に「せん断強度」を対象としている点です。
参考)https://geolabo-chubu.com/wp-content/uploads/2019/08/1362116059.pdf

圧密による強度増加も地盤材料特有の現象です。圧力がかかると隙間に含まれる空気や水分が逃げ出し変形するため、圧密沈下が発生するリスクがあります。正規圧密領域で試験を実施すると、圧密終了時の非排水せん断強さと鉛直有効応力の比で表される強度増加率が求められます。
参考)現場と土質試験のあれこれ

さらに、地盤材料は水の影響を受けやすいという特性があります。鉄やコンクリートは水に浸かってもその物性強度の影響を受けませんが、地盤を構成する土はせん断強度が著しく低下します。この水分特性は、不飽和地盤の力学特性に大きく影響を与えます。
参考)不飽和状態における盛土材料の動的力学特性

💡 意外な事実として、地盤の同一材料は厳密には存在しません。地理的な位置が特定されているため、水平方向と垂直方向ともに組成が同一という地盤は存在せず、建築材料のようなシンプルな組成体ではありません。​

建築材料の分類と構造特性

建築材料は大きく分けて「下地材」と「仕上げ材」の2種類に分類されます。下地材は建物の構造を支える目に見えない部分であり、仕上げ材は直接目に触れる部分に使用する素材です。下地材は耐火性・耐水性・防音性を高めるために仕上げ材の下に設置されます。
参考)建築材料(建材)とは?特徴や部位ごとの種類や選び方、具体的な…

主要な建築構造材には以下の種類があります。
📋 木材

📋 鋼材(鋼材)

  • 引張りと圧縮の両方に非常に強い​
  • 約400~500MPaの究極の強度​
  • 延性材料で破損前に降伏​

📋 コンクリート

  • 圧縮に非常に強く17~28MPa以上​
  • 熱質量を利用した温度調整が可能​
  • JIS(日本工業規格)で規格化​

建築基準法では、主要構造部その他安全上、防火上または衛生上重要な部分に使用する木材、鋼材、コンクリート材その他の建築材料として国土交通大臣が指定したものを使用することが定められています。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/print/?n=4111

地盤材料の試験方法と課題

地盤材料の強度測定は建築材料と比較して極めて複雑です。建築材料である鉄筋の場合は破断するまで機械で引っ張れば良く、コンクリート強度の場合はテストピースを油圧機械で押しつぶすことで、わずかなコストで極めて短時間で確認できます。重要なことは、この試験は機械が100%行うため、測定値のバラツキや試験をする人間の技量も影響しません。​
一方、地盤の強度測定では以下の点を決定する必要があります。
🔍 地盤調査の主な方法

地盤材料には決定的な万能な試験方法が無く、解析理論自体に一貫性もありません。そのため試験結果の数値にバラツキが多くなります。土質試験の種類によっては時間のかかる試験もあり、費用もかなり高額です。​
地盤材料試験では、土粒子の密度試験、土の粒度試験、土の液性限界・塑性限界試験を実施して工学的分類を行う必要があります。力学試験としては、地盤の強さを知るために土の強度・内部摩擦角・粘着力など、土の力学的性質を調べます。
参考)土質試験(14種類) - 地盤調査・地盤改良のサムシング

「地盤材料試験の方法と解説」(地盤工学会)- 地盤材料の変形・強度試験の詳細な試験方法と基準が記載

建設現場における地盤と建築材料の実務的相違

設計面から見た場合、建築基準法では建物の形態や建築資材について事細かく規定されていますが、構造部分の設計については個別具体的な部分は設計者の判断に委ねられている場合が多いのが実情です。例えば、地盤調査データからの許容地耐力の算定、各種土質試験方法の選択と決定、構造計算における計算ルートの決定などが該当します。​
建物は基礎という部材を介して地盤と接するように建築され、基礎の接地面では建物と地盤が力くらべをしています。上から建物荷重がのしかかり、下では地盤がそれを支えようとしているのです。地盤に十分な強度があれば、建物は何十年にもわたって建築直後のレベルを維持したまま動かずにとどまり続けますが、地盤が軟弱で建物荷重に負けると建物は沈下してしまいます。​
⚠️ 修復コストの違い
採用数値の判断ミスによる構造物の修復工事は構造物全体に影響するため、部分的な修復が困難な場合が多く全体に影響します。経験式であれ理論式であれ真実の数値(最確値)からは隔たりがあることを肝に銘じる必要があります。​
地盤材料と建築材料のもう一つの重要な違いは、品質管理制度の有無です。土は人工部材である建築部材と異なり、品質管理の制度が存在していませんし、JASS-5のような標準仕様もありません。地盤強度は、建築部材の引張り強度・圧縮強度・曲げ強度等についてはそれほど問題とせずに、主にせん断強度を対象としています。​
近年の建設現場では、BIM/CIMに基づいた効率的な施工管理が実施されており、埋設物の損傷リスクや改良地盤の不均質性リスクの低減が図られています。地盤改良工事では、土地の土壌条件を改善し、建物が安全に建設できるようにするための作業が重要です。
参考)初心者でもわかる!地盤改良工事の種類と特徴

地盤審査補償事業「地盤とは?」- 地盤と建材の関係性について詳細な解説
これらの地盤(土)の特殊性が「地盤」というものを理解しにくくする原因であり、「理論値」のみでの測定値を機械的に適用して構造設計をすることは危険です。「経験則」による適切な「判断と評価」が不可欠になります。建築業従事者として、地盤材料と建築材料の本質的な違いを理解し、それぞれの特性に応じた適切な管理と評価を行うことが、安全な建築物を実現する上で極めて重要です。​