可燃性ガス一覧と種類|爆発範囲と建物保管の注意点

可燃性ガス一覧と種類|爆発範囲と建物保管の注意点

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可燃性ガス一覧と種類

この記事で分かること
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可燃性ガスの種類と定義

容器保安規則で定められた30種類以上のガスの分類と特徴

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爆発範囲の基準

各ガスの爆発下限界と爆発上限界、安全濃度管理の重要性

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建物保管時の注意点

不動産施設における貯蔵・取り扱いの法令基準と安全対策

可燃性ガスの定義と法令基準

 

可燃性ガスとは、空気中または酸素中で容易に燃焼する気体を指します。容器保安規則では、水素など30種類以上のガスであり、空気との混合気が次のいずれかに該当するものを可燃性ガスと定めています。爆発下限界がvol10%以下、または爆発上限界と爆発下限界の差がvol20%以上という基準が設けられています。
参考)https://sooki.co.jp/irental/howtorental/column/combustible-gas-concentrationstandard/

GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)では、標準気圧101.3kPaかつ20℃で、空気との混合気に燃焼範囲があるガスを可燃性ガスとしています。この国際基準により、可燃性ガスの危険性が世界共通で評価されるようになりました。また、GHS分類では「可燃性・引火性ガス」という名称で、区分1(極めて可燃性・引火性の高いガス)と区分2に分類されています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/files/ghs/02Guidance_Gov.pdf

不動産従事者にとって重要なのは、これらのガスが建築物内で漏洩した場合、爆発や火災のリスクがあることです。そのため、可燃性ガスを取り扱う建物では、法令に基づいた適切な安全対策が必須となります。
参考)http://www.figaro.co.jp/knowledge/inflammablegas.html

可燃性ガスの種類一覧(主要30種類)

容器保安規則および一般高圧ガス保安規則で定められている主要な可燃性ガスは以下の通りです。
参考)https://laws.e-gov.go.jp/law/341M50000400053

主要な可燃性ガスの一覧:

これらのガスは、それぞれ異なる危険特性を持っています。例えば、水素は比重が空気より軽いため天井付近に滞留しやすく、プロパンやブタンは空気より重いため床面付近に滞留する特性があります。不動産施設では、ガスの性質に応じた換気設備の配置が重要になります。
参考)https://connect.nissha.com/gassensor/blog/flammablegas/

また、液化石油ガス(LPガス)として広く使われるプロパンやブタンは、常温・常圧では気体ですが、加圧されると液体になり体積が数百分の一になるため、ボンベ詰めで販売されています。このような性質を理解することは、建物内での適切な保管計画を立てる上で不可欠です。
参考)https://www.gas-pal.com/owner/

可燃性ガスの爆発範囲と危険濃度

可燃性ガスの爆発範囲とは、着火によって爆発を起こす可燃性ガス濃度の範囲を指します。爆発下限界(LEL:Lower Explosion Limit)は爆発を起こす最低濃度、爆発上限界(UEL:Upper Explosion Limit)は最高濃度と呼ばれます。この範囲内でガスが存在し、着火源があると爆発事故が発生する危険性があります。
参考)https://www.scas.co.jp/services/materialscience/hazard-protection/gas-explosion.html

主要可燃性ガスの爆発範囲一覧:

ガス名 化学式 爆発下限界(LEL) 爆発上限界(UEL)
水素 H2 4.0 vol%​ 75.0 vol%​
メタン CH4 5.0 vol%​ 15.0 vol%​
エタン C2H5 3.0 vol%​ 12.5 vol%​
エチレン C2H4 3.1 vol%​ 32.0 vol%​
アセチレン C2H2 2.5 vol%​ 100.0 vol%​
プロパン C3H8 2.1 vol%​ 9.5 vol%​
ブタン C4H10 1.9 vol%​ 8.5 vol%​
イソブタン C4H10 1.8 vol%​ 8.4 vol%​
一酸化炭素 CO 12.5 vol%​ 74.0 vol%​
アンモニア NH3 15.0 vol%​ -

注目すべき点は、アセチレンの爆発上限界が100.0 vol%と非常に広範囲であることです。これは、アセチレンが酸素がなくても分解爆発を起こす可能性があることを意味し、特に危険性の高いガスとして扱われます。水素も爆発範囲が4.0~75.6 vol%と広く、建物内での取り扱いには細心の注意が必要です。​
可燃性ガス警報器は、ガス濃度が爆発下限界を超える前に警報を発し、ガスの遮断や換気を行えるように設計されています。不動産施設では、この爆発下限界の25%(LELの25%)を警報設定の基準とすることが一般的です。​

可燃性ガスの建物保管における法令要件

建築物における可燃性ガスの貯蔵・取り扱いには、高圧ガス保安法消防法労働安全衛生法などの複数の法令が関係します。高圧ガス保安法では、容積300立方メートル以上の可燃性ガスを貯蔵する場合、貯蔵所の許可が必要です。また、可燃性ガスと毒性ガス容器は、それぞれ区分して保管しなければなりません。
参考)https://www.pref.nagano.lg.jp/mono/sangyo/shokogyo/sangyohoan/sangyohoan/documents/kouatsu_youki_manyuaru.pdf

充填容器は常に40℃以下の場所で保管する必要があります。これは、温度上昇により容器内圧が高まり、破裂や漏洩のリスクが増大するためです。溶解アセチレン容器や液化ガス容器は立てて保管することが規定されており、充填容器と残ガス容器は区分して保管する必要があります。
参考)https://tochireiko.or.jp/wp-content/uploads/2020/10/kouatugashoan20200905.pdf

不動産施設で特に重要なのは、保管場所の設備距離です。貯蔵設備は第一種保安物件(学校、病院など)に対して第一種設備距離以上、第二種保安物件(住宅など)に対して第二種設備距離以上の距離を確保する必要があります。これにより、万が一の事故時にも周辺への被害を最小限に抑えることができます。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/20140812-1.pdf

可燃性ガス保管建物の換気・安全対策

可燃性ガスを取り扱う建築物では、換気設備の設置が法令で義務付けられています。危険物の規制に関する政令第9条第10号では、「危険物を取り扱う建築物には、危険物を取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設けること」と定められています。引火点が70度未満の危険物の貯蔵倉庫では、内部に滞留した可燃性の蒸気を屋根上に排出する設備を設けることが義務付けられています。
参考)https://www.senryakusouko.com/column/grade/hazardous-materials-warehouse-ventilation-standards

強制換気設備や自動強制換気設備の性能基準は、風速1.6m/秒以上、1時間あたりおおむね5回以上の換気能力が目安となっています。可燃性天然ガス発生設備が設置された部屋には、1時間に10回以上の換気能力を有する換気設備が必要です。これらの基準は、ガスが爆発範囲に達する前に屋外へ排出することを目的としています。
参考)https://www.env.go.jp/nature/onsen/council/gas/06/mat05-2.pdf

換気設備のダクトに接続されていない給気口や排気口には、防火ダンパーと40メッシュ以上の銅網等による引火防止装置を設けることが求められます。また、可燃性ガスが存在して爆発または火災が生ずるおそれのある場所については、通風、換気等の措置を講じなければなりません。
参考)https://www.mlit.go.jp/kowan/content/001447259.pdf

不動産従事者が押さえるべき独自の安全管理視点

不動産従事者が可燃性ガスを扱う施設を管理する際、法令遵守だけでなく、実務的なリスク管理の視点が重要です。まず、建物設計段階から安全性を確保する基準を明確に規定し、施工業者と連携を取ることで、「設計段階での基準不適合」や「工事段階での施工不良」を防ぐことが可能です。​
混合ガスの爆発範囲を計算する場合、ルシャトリエの法則を用いることができます。計算式はL=100/(C1/L1+C2/L2…)で、Lが混合ガスの爆発下限界、L1・L2が各成分の爆発限界、C1・C2が各成分の濃度を表します。例えば、爆発下限界5.0vol%のメタン50vol%と爆発下限界3.0vol%のエタン30vol%の混合ガスの場合、混合ガスの爆発下限界は約5vol%と推定されます。​
高圧ガス保安協会(KHK)
可燃性ガスの保安に関する技術基準や最新情報が掲載されており、実務に役立つガイドラインを入手できます。

 

また、ガスの比重特性を理解することで、より効果的な安全対策が可能になります。水素やメタンは空気より軽いため天井付近に、プロパンやブタンは空気より重いため床面付近にガス検知器を設置することで、早期発見が実現できます。さらに、可燃性ガスを車両で移動する際には、警戒標の掲示、温度管理(40度以下)、転落・転倒防止措置、消火設備の携行などが義務付けられており、これらの知識は施設への搬入・搬出管理にも応用できます。​
総務省消防庁
危険物倉庫の換気設備基準や可燃性蒸気の滞留防止に関する技術資料が豊富に提供されています。

 

不動産管理における長期的な視点として、建物や周辺環境の景観を損なわないよう美観に配慮した設計も重要です。安全設備が完璧に機能しつつ、建物の資産価値を維持する設計は、建物が存在する限り重要な要素となります。​