

環境法の過去問演習で最初にやるべきは、「年度ごとの問題」を眺めることではなく、「頻出の論点がどの法律に集中しているか」を把握することです。JELF(日本環境法律家連盟)が公開している「環境法 過去問一覧表(サンプル版)」は、平成18年~平成27年の論文式過去問を、出題テーマ(廃棄物処理法、環境影響評価法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法など)と、問題類型(政策型・手続型・訴訟型)で整理しています。これにより、環境法が「条文暗記だけでは点にならない」科目で、制度趣旨・改正点・手続の流れを絡めて問う傾向がある、というメッセージまで読み取れます。
建築従事者の視点では、ここでの価値は「環境法が現場の工程にどう刺さるか」を先に想像できる点です。例えば、一覧表には環境影響評価(ゾーニングと並んで最重要と明示)や、廃棄物処理法のマニフェスト制度、土壌汚染・地下水汚染への行政対応が繰り返し登場することが示されます。つまり、設計・施工・開発のどの局面でも起こり得る“手続の瑕疵”や“管理の穴”が、そのまま答案の骨格になるのです。
参考)https://www.jelf-justice.org/jelf/wp-content/uploads/2019/02/709f0a2ef953b394d833f42630aef3b5.pdf
実務寄りに回す方法としては、論点一覧表を「チェックリスト化」して、過去問1年分ごとに次の3点だけを埋める運用が効きます。
参考リンク(過去問を「論点×類型」で一覧化した資料。どの法律が何年に出たかを短時間で俯瞰できる)
https://www.jelf-justice.org/jelf/wp-content/uploads/2019/02/709f0a2ef953b394d833f42630aef3b5.pdf
司法試験の論文式は、法務省から「正式な模範解答」は公表されず、代替として「論文式試験 出題の趣旨」と「採点実感等に関する意見」が公表される運用です。したがって、環境法の過去問を“独学で丸付け”するだけだと、要求水準(論じ方・拾うべき事情・落としてはいけない論点)から外れても気付きにくい構造があります。過去問を解くたびに、出題趣旨・採点実感に沿って「論点の取捨選択」を修正するのが、得点の再現性を上げる最短ルートになります。
ここでのコツは、出題趣旨・採点実感を“読書”として読むのではなく、「チェック観点」に落とし込むことです。たとえば、答案で減点されがちなパターンとして、条文名や制度名を挙げたのに要件と効果が曖昧、手続の時系列が崩れている、行政救済(取消訴訟等)と民事救済(差止め等)の関係を整理できていない、などが典型です。環境法は「政策型・手続型・訴訟型」という出題類型が意識されているため、今解いている問題がどの類型かを見誤ると、必要な厚み(政策評価なのか、適法性審査なのか、請求原因整理なのか)もズレます。
建築・開発案件に置き換えると、出題趣旨・採点実感は「設計図の仕様書」に近い存在です。仕様書を読まずに施工して手戻りが出るのと同じで、採点者が期待する“仕様”(論理展開と素材の選び方)を公式資料で確認しないと、努力量が点数に変換されにくくなります。過去問1問につき、出題趣旨・採点実感から最低3つは「次回も使えるテンプレ」を抜き出し、手持ちの論証やメモに統合する運用が現実的です。
参考)【令和7年(2025年)度版】司法試験・予備試験の全過去問集…
参考リンク(模範解答が公表されない代わりに、出題趣旨・採点実感が公表されることの説明。過去問演習の“採点基準の代替”が何か分かる)
【令和7年(2025年)度版】司法試験・予備試験の全過去問集…
環境影響評価は、環境法の中でも「未然防止」を制度として実装する中核で、過去問でも繰り返し問われてきたテーマです。JELFの一覧表でも、環境影響評価は「ゾーニングと並んで最も重要」と明示され、制度の特徴(スクリーニング・スコーピング、住民参加手続、代替案検討など)や限界(事後評価手続の不義務、計画アセスの課題など)まで論点化されています。ここは暗記で押し切るより、手続の流れ(どの段階で何が決まり、誰が意見を言え、何が争点化し得るか)を“工程表”として理解すると強いです。
建築従事者にとって意外に効くのは、「アセスは環境だけの話ではなく、意思決定プロセスの適正さ(参加・情報・検討の痕跡)の話」と割り切ることです。過去問では、手続上の瑕疵がある場合に許認可の違法をどう構成するか、住民側がどの訴訟類型を選択し得るか、といった争点にもつながります。つまり、環境影響評価を“技術評価”と“法的統制”の二層構造で捉えると、論点のつなぎ(手続→裁量→司法審査)が一気に通りやすくなります。
現場の実感に寄せた学習素材としては、「道路・発電所・開発事業」など典型事案での答案例を読み、アセス手続がどのように違法主張へ組み込まれるかを確認するのが有効です。実際に、令和3年の環境法答案例では、第一種事業該当性、計画段階環境配慮事項の検討、意見提出など、手続の条項を踏まえた構成が展開されています。こうした素材を参照すると、過去問でありがちな「制度説明で終わる答案」から、「当てはめまで走り切る答案」に変えやすくなります。
参考)【環境法】令和3年司法試験環境法第1問解答例|安田貴行|想像…
参考リンク(環境影響評価法の論点が、過去問でどう問われるかの整理。制度の特徴・限界・手続の切り分けに役立つ)
https://www.jelf-justice.org/jelf/wp-content/uploads/2019/02/709f0a2ef953b394d833f42630aef3b5.pdf
環境法の過去問では、廃棄物処理法(廃掃法)が頻出で、特に「不法投棄が起きた後」に行政が誰にどんな措置を取り得るか、という実務的な論点が繰り返し出ています。JELFの一覧表では、平成27年の問題として、排出事業者がマニフェストに関する義務に違反した場合に知事が取り得る措置(支障除去等の措置命令など)を、制度理解を前提に問う構成が示されています。ここは条文操作だけでなく、「なぜ排出事業者側にも責任を負わせるのか」という政策背景(不法投棄の温床になる取引構造)を踏まえると説得力が出ます。
建築・解体の世界に引き寄せると、マニフェストは単なる事務ではなく「適正処理の証跡管理」であり、トラブル時に“誰の管理が破綻したか”を切り分けるための装置です。試験答案では、マニフェスト制度の趣旨(トレーサビリティ確保)と、義務違反があるときに行政が“命令できる射程”を、要件→効果で淡々と書けるかが勝負になります。さらに、同じ廃掃法でも、著しく安価な委託料金が不法投棄を誘発するという問題意識から条文が整備されてきた流れ(改正の背景)に触れると、政策型の問いでも点が伸びやすいです。
あまり知られていないが効く観点として、「現場の適正対価」と「法的責任」が結び付いている点を押さえておくと、答案の厚みが増します。JELFの一覧表でも、廃掃法19条の6に関して、自由契約の下で著しく安価な委託料金が不法投棄の温床になったこと、そして汚染者負担原則/原因者負担原則の徹底という制度趣旨が言語化されています。ここまで書けると、単なる条文暗記ではなく、行政法的責任を課す立法政策の理解として評価されやすくなります。
参考リンク(廃棄物処理法の過去問で、マニフェスト・不法投棄・措置命令・改正背景まで一体で整理されている)
https://www.jelf-justice.org/jelf/wp-content/uploads/2019/02/709f0a2ef953b394d833f42630aef3b5.pdf
検索上位の一般的な「勉強法」より一段深く、建築従事者に刺さる独自視点としては、環境法の過去問を“設計変更(チェンジオーダー)”の思考で読む方法が有効です。環境法の答案で要求されるのは、法的評価の前提となる事実関係を、論点に合わせて必要十分に組み替えることです。これは、現場で仕様変更が出たときに、工程・コスト・法令・近隣対応を同時に再設計する作業と似ています。
具体的には、過去問の事案を読んだら、最初に「変更点」を3つだけ抽出してメモします。
この「変更点」メモを作ると、答案の骨組みが自然に決まります。たとえば、土壌・地下水汚染の過去問では、知事が誰にどんな措置を取り得るか(区域指定、汚染除去等の指示、地下水浄化措置命令など)に加えて、被害者が誰に何を請求できるか(民法709条、妨害排除、国賠、義務付け訴訟など)まで一気通貫で問われています。建築実務の言葉に翻訳すると、「発覚後の是正命令(行政)」と「被害の補償・停止(民事)」と「監督不作為の責任(国賠)」が同じ現場で同時進行し得る、ということです。
最後に、受験実務としての“意外な増点ポイント”は、過去問の類型(政策型・手続型・訴訟型)を答案の冒頭1~2行で自分に宣言することです。たとえば「本件は手続型なので、まず手続の適法性(要件・時系列)を整理し、その瑕疵が許認可判断に与える影響を検討する」と書き出すだけで、脱線を防げます。JELFの一覧表は各問題に類型ラベルが付いているため、この訓練に最適です。