

自動車ボディでは、従来主流だったスポット溶接やリベットに加えて、構造用接着剤を併用する「ハイブリッド接合」が一般的になっています。 スポット溶接が点で荷重を伝えるのに対し、構造用接着剤は接合部全体で荷重を受けるため、応力集中を抑えながらパネル剛性を高められるのが大きな特徴です。
構造用接着剤を使うと、同じ強度を維持したまま鋼板の板厚を下げたり補強部材を簡略化できるため、ボディの軽量化と衝突安全性の両立に貢献しています。 実際、スポット溶接やボルト・リベットと比べて接合強度が2倍以上とされる事例もあり、車体のねじり剛性向上やNVH(騒音・振動・ハーシュネス)の低減にも寄与します。
構造用接着剤は、荷重を伝達する「耐荷重部材」の接合に使われる点が、シーリングや見切り用途の非構造用接着剤との決定的な違いです。 そのため、設計時にはボディ全体の荷重経路の中で、どのパネル間に面接合を配置すべきかを、衝突時の変形モードも含めて検討する必要があります。
自動車の構造用接着剤では、エポキシ系がホワイトボディ(塗装前ボディ)接合で最も広く使われており、高いせん断強度と耐疲労性を持ちながら、塗装焼付け炉の高温に耐えられるよう設計されています。 せん断強度30MPaクラスの製品も珍しくなく、耐食性や耐環境性も重視されるため、車両寿命全体にわたって性能を維持できることが求められます。
ポリウレタン系の構造接着剤は、柔軟性と耐衝撃性に優れ、変形追従性が必要な部位や、異種材料の接合で応力緩和を狙いたい箇所によく用いられます。 アクリル系は速硬化性と様々な基材への接着性が評価され、タクトタイム短縮や複雑な組立ラインでの使い勝手の良さから、補強部材やサブアッセンブリの接合にも活用されています。
また、電動車(xEV)向けには、バッテリーボックスやエンドプレートなどの部品接合に特化した構造用接着剤が用いられ、耐熱性・難燃性・絶縁性など、電池パック特有の要求性能が付加されています。 これらはセル間のクリアランス保持や振動吸収にも関係しており、単に接合だけでなく「位置決め」と「長期安定性」を両立する材料として位置付けられています。
近年の自動車では、軽量化のために高張力鋼板、アルミニウム、マグネシウム、FRPやCFRPなど、いわゆるマルチマテリアル構造が急速に進んでおり、従来型の溶接だけでは対応しきれない組み合わせが増えています。 そこで、溶接+リベット+構造用接着剤を組み合わせた「ハイブリッド接合」が採用され、特に異種金属間ではガルバニック腐食を抑えつつ接合できる点が評価されています。
構造用接着剤は、鋼とアルミ、アルミと樹脂など熱膨張係数や剛性の異なる材料同士の間に挟み込むことで、界面での応力集中を緩和し、疲労亀裂の発生を遅らせる役割も果たします。 建築の目線で見れば、異種材料を取り合うカーテンウォールや屋根・外装パネルの接合にも類似した課題があり、自動車のハイブリッド接合で蓄積された応力制御の発想は、ディテール設計のヒントになります。
また、量産車で構造接着を本格的に導入するには、ラインでの寸法ばらつき、表面処理、塗装工程との整合など、多くの生産技術的な課題があると指摘されています。 接着ラインの品質保証では、ボンドラインの厚み管理や、圧締条件・硬化条件のばらつきが長期信頼性に直結するため、設計段階から「作りやすさ」と「検査しやすさ」を考慮した形状と治具計画が求められます。
電動車の普及に伴い、バッテリーケースやフロア一体型バッテリーハウジングに構造用接着剤を用いる事例が増えており、「cell-to-pack」などの新しい設計コンセプトとも深く関係しています。 ここでは、セルやモジュールを支持するプレート類、周辺補強部材、カバーの接合などで接着剤が使われ、衝突時のエネルギー吸収とケース剛性の両立が図られています。
バッテリー構造では、熱マネジメントや耐火性も重要であり、構造用接着剤には高温時でも急激に強度が失われないこと、電解液や冷却剤、路面水への耐性があることが求められます。 また、パックの薄型化やフロア一体化が進むと、バッテリーケース自体がボディ構造の一部としてねじり剛性を支える「ストラクチャルメンバー」となり、車両の走行性能にも直接影響するようになります。
建築の視点から見ると、これは大梁と床スラブが一体で剛性を担う合成構造に近く、設備スペース(バッテリー)を構造部材としても活用する発想と言えます。 自動車の電動化が進むほど、こうした「機能+構造」を兼ねたユニットを接着でまとめる設計が増えるため、荷重パスと熱・防水・メンテナンス性を同時に満たすディテールが今後の検討テーマになります。
自動車産業の構造用接着剤利用で意外に見落とされがちなのが、「組立順序と接着剤硬化プロセスを前提としたディテール設計」という視点です。 自動車ボディでは、ホワイトボディ組立から塗装焼付けまでの工程が接着剤の硬化条件そのものであり、部材形状やフランジ幅、圧締ポイントの配置も「ラインで確実に接着できるか」を基点に決められています。
これは建築現場における「後から塗装が入る」「防水層が重なる」といった多工程の取り合い設計と非常に近く、構造用接着剤を使う場合でも、施工手順と硬化条件、検査方法までを含めてディテールを決めるべきだという示唆を与えます。 たとえば、工場製作のカーテンウォールや木質パネルの合成床などでは、出荷前の養生時間や温度条件をどう確保するか、現場との責任分界をどう設計図書に落とし込むかが、品質とコストを左右します。
さらに、自動車の構造用接着剤は、NVHの低減や防音・防振性能の向上にも寄与しており、単なる強度確保だけでなく「居住性(快適性)」まで一体で設計されている点も興味深いポイントです。 建築で言えば、スラブ振動や床衝撃音、外装パネルの鳴きなどの問題に対して、単なる剛性アップか制振材の追加だけでなく、「接合部の構造用接着+制振」の組み合わせを検討する余地があると解釈できます。
自動車ボディの構造接着技術とそのメリット・デメリットの概要解説として参考になる資料。
構造用接着剤って何? 最近のクルマに使われる技術を解説!
自動車用構造用接着剤の基礎、マルチマテリアル化への対応、量産上の課題を整理した技術資料。
構造用接着剤とエンジニアリング接着剤(三菱電機系技術資料)
自動車ボディの軽量化と高機能化に向けた構造接着技術を、材料・工法・設計思想の観点から整理した解説記事。

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