

市役所でもらった公図を現場に持っていくと、実際の境界と最大10m以上ズレている可能性があります。
公図とは、法務局(登記所)が管理・公開している、土地の位置・形状・地番・道路・水路などを図示した公的な地図です。建築業務において現場調査や設計、境界確認を行う際に欠かせない資料のひとつです。
公図には大きく分けて2種類あります。ひとつは「地図(法第14条第1項)」、もうひとつは「地図に準ずる図面(旧公図)」です。
| 種類 | 別名 | 精度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 地図(法第14条第1項) | 14条地図 | ⭕ 高精度 | 地籍調査を経た正確な図面。現地復元能力あり |
| 地図に準ずる図面 | 旧公図 | △ 低精度 | 明治時代の平板測量が基。誤差が大きいものが多い |
令和5年度末時点で、全国の14条地図の整備進捗率はおよそ53%にとどまっています。つまり、残りの47%の土地は今もなお精度の低い旧公図が使われているということです。明治時代に間縄(巻き尺)と竹竿を使った素人測量が基になっているため、現況とかなりのズレが生じていることがあります。
建築業者にとって、この「地図か旧公図か」の区別は非常に重要です。取得した公図の左上や下部に記載された「分類」欄を確認すると「地図(法第14条第1項)」または「地図に準ずる図面」のどちらかが書かれています。まず分類欄を確認するのが基本です。
公図は法務局が管理していますが、市町村役場(税務課など)でも閲覧・写しの取得ができます。ただし役場の公図は毎年1月1日時点のものであり、その後に分筆登記などが行われていると最新の情報ではありません。建築業務では常に最新の公図を使う必要があるため、法務局または後述するオンラインサービスでの取得が原則です。
公図は1通あたり数百円から取得できます。安価ですが、その情報を正しく読み解けるかどうかが、現場での判断を大きく左右します。
参考:公図(旧公図・14条地図)の種類や精度について詳しく解説している法務省の解説ページ
法務省|オンラインによる登記事項証明書等の交付請求(不動産)
公図を請求する前に、必ず「地番(ちばん)」を確認しておく必要があります。
地番とは、法務局が土地1筆ごとに割り当てた番号のことです。一方、私たちが日常的に使う住所(〇〇市△△町1丁目2番3号など)は「住居表示」と呼ばれる別の番号体系です。この2つは一致していないことがほとんどで、窓口で住居表示の住所を書いてしまうと受理されません。これは意外ですね。
地番は以下の書類から確認できます。
- 固定資産税の納税通知書に同封されている「課税明細書」
- 権利証(登記済証)や登記識別情報通知書
- 建築確認通知書の不動産の表示欄
- 法務局備え付けの「ブルーマップ」(住居表示から地番を調べられる地図)
もし手元に書類がない場合は、法務局の窓口でブルーマップを閲覧させてもらうか、職員に地番の確認を依頼することができます。窓口での確認は無料です。
地番を把握できたら、「所在(〇〇市△△町)」と「地番」をセットでメモしておきましょう。公図の申請書にはこの2項目を記入する欄があります。所在の「字(あざ)」まで書くとよりスムーズです。つまり地番の把握が最初の条件です。
なお、一部の地域では住居表示が実施されておらず、地番がそのまま住所として使われている場合もあります。例えば、東京都調布市や日野市などでは地番と住所が一致しています。自分が担当している現場がどちらの地域かも確認しておくと無駄がありません。
公図の取得方法は大きく4種類あります。それぞれに手数料と特徴があるため、目的に応じて選ぶことが大切です。
① 法務局(登記所)の窓口で取得する
最もオーソドックスな方法です。窓口に行き、「地図証明書申請書」に地番・所在・通数を記入して提出します。わからない場合は職員が書き方を教えてくれます。
重要な点として、最新の公図は全国どこの法務局窓口でも取得できます。現場が遠方であっても、自分の事務所に近い法務局で請求可能です。ただし、和紙やマイラーの古い公図については、その土地を管轄する法務局のみでの対応となります。窓口の受付時間は月〜金曜 8:15〜17:15(土日祝・年末年始は休業)です。
手数料は1通あたり600円(収入印紙)です。その場でプリントされた証明付きの公図を受け取れます。
② かんたん証明請求(法務省)でオンライン請求する
法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」を使った方法です。インターネット上で申請し、公図を郵送または最寄りの法務局窓口で受け取ります。証明書付きの公図が取得できるため、金融機関や行政への提出にも対応しています。
手数料は、郵送受取で520円、窓口受取で490円と、書面請求より少し安くなります。切手や返信用封筒の用意が不要な点も便利です。
③ 登記情報提供サービス(民事法務協会)でPDFを取得する
最も手軽でコストが低い方法です。民事法務協会が運営するウェブサービスで、公図のPDFデータをその場でダウンロードできます。手数料は1通あたり361円と最安値です。
利用時間は平日8:30〜21:00と長く、法務局が閉まっている夜間でも取得できます。ただし証明なしのデータのため、金融機関や役所への提出には使えません。現場確認や社内調査など、日常業務での確認用に向いています。注意が必要な点はここです。
④ 郵送で申請する
申請書と収入印紙を郵送して証明書を返送してもらう方法です。法務局から離れた場所にいる場合や、まとめて複数の公図を請求する場合に活用できます。手数料は窓口と同じく1通600円で、数日程度の日数がかかります。
| 取得方法 | 手数料 | 証明書 | 受取時間 |
|---|---|---|---|
| 窓口 | 600円 | ✅ あり | 平日8:15〜17:15 |
| かんたん証明請求(郵送) | 520円 | ✅ あり | 平日8:15〜17:15に申請 |
| かんたん証明請求(窓口) | 490円 | ✅ あり | 平日8:15〜17:15に申請 |
| 登記情報提供サービス | 361円 | ❌ なし | 平日8:30〜21:00 |
| 郵送申請 | 600円 | ✅ あり | 数日かかる |
参考:登記情報提供サービスの利用料金・手順について詳しくはこちら
登記情報提供サービス|サービス概要・利用料金一覧
公図を手に入れたら、現場でどこを見ればいいのかを押さえておきましょう。
地番と形状を確認する
公図には、対象の土地とその周辺の地番が記されています。まず対象地の地番が正しいかを確認します。そして土地の形状(直線か折れ点があるか)や、隣接地・道路・水路との位置関係を読み取ります。縮尺は地域によって異なりますが、市街地では250分の1または500分の1が一般的です。
「道」と「水」の表示を見落とさない
公図上に「道」と表記された箇所は里道(赤道・法定外公共物)、「水」と表記された箇所は水路(青道)を意味します。これらは地番のない無地番地であり、国有地です。
建築業者にとって特に重要なのは、この無地番地が敷地内に入り込んでいないかの確認です。無地番地の上には建物を建てられません。また里道は建築基準法上の道路に該当しないため、里道のみに接道している敷地は「再建築不可」となる危険性があります。これは現場調査で必ず確認が必要な点です。
国土交通省が公開した調査によると、旧公図の現況とのズレは、1m以上10m未満の地域が49.8%にのぼります。現場でフェンスや外壁の位置と公図の境界線が合っていないように見えても、それは珍しいことではありません。厳しいところですね。
筆界未定・公図混乱にも注意
複数の地番が「19-1+19-2+19-4」のようにプラス記号でつながれている場合、「筆界未定」の状態です。これは境界が確定していないことを意味し、そのまま建築や分筆を進めることができません。また、住宅地図と公図の形状が大きく異なる「公図混乱」も珍しくなく、同じ地番が2か所に存在するといった記載ミスも確認されています。おかしいと思ったら必ず窓口で確認しましょう。
参考:公図と現況のズレに関する国土交通省の解説(地籍問題研究会)
国土交通省|公図と現況のずれQ&A
建築業で土地の調査をする際、公図と一緒に確認したいのが「地積測量図(ちせきそくりょうず)」です。この2つは似ているようで、目的も内容も大きく異なります。
公図と地積測量図の主な違い
| 項目 | 公図 | 地積測量図 |
|---|---|---|
| 目的 | 土地の位置関係・形状の把握 | 特定の土地の面積・境界の確認 |
| 精度 | 低〜中(旧公図は特に低い) | 高精度(土地家屋調査士が測量) |
| 面積・距離の記載 | なし | あり |
| 存在する土地 | ほぼ全筆 | 分筆登記・地積更正登記がある土地のみ |
| 手数料 | 361〜600円 | 361〜600円(同じ) |
公図は広域の土地配置を把握するための「概略図」として使い、地積測量図は特定の土地の正確な面積・境界距離を把握するための「詳細図」として使う、というのが基本の使い分けです。
ただし地積測量図は、分筆登記や地積更正登記が行われた土地にしか存在しません。登記記録があっても地積測量図がない土地はたくさんあります。地積測量図がない場合は、公図と現況測量を組み合わせて判断することになります。
また、地積測量図が古い(1960年代以前に作成されたもの)場合は精度が低く、現代の測量技術と比べると誤差が大きい可能性があります。地積測量図も年代を確認するのが条件です。
境界確認や建築確認申請では、公図だけに頼るのではなく、地積測量図・現況測量図・現地確認を組み合わせることが重要です。正確な敷地面積の把握は、建蔽率・容積率の計算にも直結するため、建築業者にとって精度の高い情報収集が求められます。
敷地面積の精査が必要な場面では、土地家屋調査士に現況測量や境界確定を依頼することで、正確な数値を得ることができます。建築確認申請の前に土地家屋調査士へ相談するという選択肢を、ぜひ選択肢として持っておきましょう。
参考:地積測量図と公図の違いを詳しく解説したSUUMOの記事