

建物を完工してから1ヶ月以内に表題登記を申請しないと、10万円以下の過料が課されます。
「登記所」という言葉は、特定の建物や組織を指すのではなく、登記事務を取り扱う機関の総称です。具体的には、法務省が管轄する法務局・地方法務局・その支局および出張所が、これに当たります。建築業の現場で「登記所に書類を持っていく」と言う場合、この体系の中のどこかへ行くことになります。
全国には8か所の法務局(本局)、42か所の地方法務局が存在し、それぞれの下に支局・出張所が設置されています。法務局・地方法務局・支局では、登記・戸籍・国籍・供託・訟務・人権擁護の事務を幅広く行います。出張所は主に登記事務に特化しています。
全国の登記所の構成を地方ブロック別にまとめると以下のとおりです。
| 地方ブロック | 主な法務局・地方法務局 |
|---|---|
| 北海道 | 札幌法務局、函館・旭川・釧路地方法務局 |
| 東北 | 仙台法務局、福島・山形・盛岡・秋田・青森地方法務局 |
| 関東甲信越 | 東京法務局、横浜・さいたま・千葉・水戸・宇都宮・前橋・静岡・甲府・長野・新潟地方法務局 |
| 中部 | 名古屋法務局、津・岐阜・福井・金沢・富山地方法務局 |
| 近畿 | 大阪法務局、京都・神戸・奈良・大津・和歌山地方法務局 |
| 中国 | 広島法務局、山口・岡山・鳥取・松江地方法務局 |
| 四国 | 高松法務局、徳島・高知・松山地方法務局 |
| 九州・沖縄 | 福岡法務局、佐賀・長崎・大分・熊本・鹿児島・宮崎・那覇地方法務局 |
建築業に関係する登記には大きく2種類があります。一つは「不動産登記」(土地・建物の表示・権利関係)、もう一つは「商業・法人登記」(会社の設立・変更など)です。重要なのが、この2種類は管轄登記所が必ずしも一致しないという点です。たとえば、建設会社の本店を登記している登記所と、その会社が施工した建物の不動産登記を申請する登記所が、別の出張所になるケースは珍しくありません。
管轄の仕組みが複雑なため、現場の実務では「法務局ならどこでもいい」と思ってしまう方もいますが、登記の申請はそれぞれの不動産が所在する地を管轄する登記所にしか行えません。これが原則です。
参考:法務省が公開している登記管轄一覧表は、建築現場の管轄確認に直接使えます。
建築現場で最も重要な確認作業の一つが、その物件を管轄する登記所の特定です。管轄を間違えると、書類を揃えて申請に行っても受理されず、そのまま申請期限が迫るという最悪の展開になりかねません。これは避けたいですね。
管轄を特定する手順は、主に次の3ステップで進めます。
「住所と地番は別物」という点は、建築業の現場でも意外に見落とされがちです。たとえば「東京都〇〇区〇〇町1-2-3」という住居表示があったとしても、登記上の地番は「〇〇町1番2」のように異なる表記になります。管轄の登記所に電話して住居表示を伝えれば地番を教えてもらえますし、法務省の登記情報提供サービス(登記情報提供サービス)を使えばオンラインでも地番検索が可能です。
なお、1棟の建物が複数の登記所の管轄区域にまたがって建っているケースも存在します。埋立地や区画整理地などで起こりやすく、そのような場合は「その建物がより多くかかる区域を管轄する登記所」への申請が求められます。管轄が不明な場合は早めに電話照会しておくのが得策です。
参考:登記情報提供サービス(法務省指定機関)で地番検索・登記情報閲覧が可能です。
建築業の実務において、「施主が登記の手続きはやるだろう」と思いがちな箇所があります。それが建物表題登記です。しかし、不動産登記法第47条第1項は明確に定めています。「新築した建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に、表題登記を申請しなければならない」と。
つまり、工事完了・引き渡し後1か月以内が申請期限です。この義務を怠ると、不動産登記法第164条により10万円以下の過料に処される可能性があります。
実務上、過料が実際に課されるケースはまだ多くはありませんが、相続登記の義務化(2024年4月施行)を契機に法的コンプライアンスへの意識が高まっており、今後は見逃されなくなる可能性があります。10万円の過料は決して安くありません。
建築業の立場でこのリスクを回避するには、引き渡し時に施主へ期限を明示しておくことが重要です。工事完了引き渡し証明書を施主に渡す際に「この日から1か月以内に表題登記の申請が必要です」と一言添えるだけで、施主とのトラブルを防ぐ効果があります。
なお、建物表題登記の申請は、土地家屋調査士に依頼することが一般的です。申請に必要な書類には、建築確認済証・確認申請書・工事完了引き渡し証明書・建物図面・各階平面図などがあり、これらは施工会社から提供するものも含まれます。施主が申請先の管轄登記所を把握していないケースも多いため、建築業者として一覧から管轄をあらかじめ確認しておくことが、スムーズな引き渡し後手続きにつながります。
参考:建物表題登記の義務と過料の根拠法令について詳しく解説されています。
建築業の実務では、施工前に対象地の登記事項証明書(旧:登記簿謄本)を取得して、土地の権利関係や抵当権の有無を確認することがあります。証明書の取得方法は3通りあり、それぞれコストと速度が異なります。
| 取得方法 | 手数料(1通) | 受取方法・目安日数 |
|---|---|---|
| 🏛️ 窓口申請 | 600円 | 即日(混雑状況による) |
| 📬 郵送申請 | 600円 | 数日〜1週間程度 |
| 💻 オンライン請求(窓口受取) | 490円 | 即日(指定窓口で受取) |
| 💻 オンライン請求(郵送受取) | 520円 | 数日 |
| 🌐 登記情報提供サービス(閲覧のみ) | 331円 | 即時(証明書効力なし) |
オンライン申請が一番お得です。登記情報提供サービスは正式な「証明書」ではなく閲覧用ですが、内容確認だけなら331円と最も安価です。現場の確認作業であれば活用できます。
重要な点は、登記事項証明書はどの登記所(法務局・支局・出張所)でも全国の不動産の証明書を取得できるという点です。コンピュータ化が完了しており、現場の地番が離れていても最寄りの法務局で申請できます。一方で、建物表題登記など登記の「申請」は管轄外登記所では受け付けてもらえません。「取得」と「申請」は別ルールと覚えておけばOKです。
複数の物件を抱える建築会社の場合、オンライン申請システム(法務省の登記・供託オンライン申請システム)を活用すれば、移動コストゼロで全国の証明書を一括取得できます。年間で複数の現場を抱える会社ほど、この差額が積み重なります。
参考:法務省が公開するオンライン申請の手数料と手順の公式情報です。
登記申請・証明書の請求はオンラインでの手続が早くて便利です – 名古屋法務局
建築業を営む会社が事務所や本店を移転する際、登記手続きの内容は「管轄内移転か、管轄外移転か」によって大きく異なります。これを知らずに手続きを進めると、書類が足りずに申請を差し戻されることになります。厳しいところですね。
管轄内移転とは、現在の本店所在地と移転先が同一の法務局(または支局・出張所)の管轄内に収まる場合です。この場合は1か所への申請で完結します。登録免許税(収入印紙)も3万円が基本です。
一方、管轄外移転では、旧本店の管轄登記所と新本店の管轄登記所の2か所に申請が必要です。旧管轄の登記所を「経由」して新管轄の登記所へ申請書が転送される仕組みになっています。この場合の登録免許税は6万円(旧本店管轄:3万円+新本店管轄:3万円)となり、費用と手間が倍近くになります。
建築業の会社が営業拠点を拡大する際、都道府県をまたぐ移転は必ず管轄外移転になります。隣接する市区町村への移転でも、法務局の出張所の管轄が異なれば管轄外扱いになることもあります。あらかじめ法務省の登記管轄一覧表で旧住所と新住所それぞれの管轄を確認しておくことが、コストとタイムロスの両面で有効です。
また、建設業許可を持つ会社が本店移転した場合は、都道府県知事許可または国土交通大臣許可の変更届も30日以内に提出する義務があります。登記手続きと建設業許可の変更届、双方のデッドラインを一度に把握しておくことが重要です。登記所への登記申請と並行して、許可行政庁への届出も漏らさず行うのが原則です。
参考:本店移転登記の管轄内・管轄外の手続きの違いについて詳しく解説されています。